「俺…良かったと思ってます。…一条さんに会えたから」
バァカ。それじゃ丸っきり告白だよ。
傍で寝息を立てる横顔にそっと触れてみる。生理的な
涙の跡。無理もないか。俺だって最初こいつを受け入れた
時は筋肉の悲鳴に耐える事1日、肉体の疲労感煮を持ち
堪える事2日だった。
でもこれはお互いに必要な「儀式」。お互いに、次の
一歩を踏み出す為の。
0号との戦いの後、其の侭下山するには五代の体力が
持たないので、空いていた山小屋に緊急避難した。幸い、
薪の予備はあったし、緊急用の装備も無い訳じゃ無い。
とりあえず小屋の中を暖めて…そして五代の体も温めて
やる。無論、肌と肌を重ねて。求められたら、与える
つもりだった。それが明日への糧になって、こいつの
新しい一歩になるのならば。
「一条…さ…ん…」
「気が、付いたか?」
「俺…あいつと…。あいつは?」
「五代の勝ちだ。安心して良い」
「そう、ですか」
欲しかったのは此方の方らしい。やがて赤みの差す五代の
唇が動くのを見て…俺の中の獣が目を醒ます。
「一…薫、さん」
「そう言う時は、どうだった?」
「薫」
「正解。俺も雄介が欲しい」
いつもの様に受け入れようとして、イヤイヤをされる。
「口で?」
尚もイヤイヤをされる。そして、恥じらいと共に紡がれる
言葉。
「俺を、薫で満たして下さい」
慣れるまでこいつがしてくれた前戯を頭の中で反芻
しながら、なるべく体力に負担を掛けないように
開いてゆく。
フッ、とこいつから聞いた覚えのある逸話を思い出す。
何処の種族だったか、成人式の時、少年は集落の年長の
男達から精液を身体に注がれるという。少年は精液を
造る素を持っていない。だから、他の男達が其れを
分け与える事によって少年は一人の「男」に
なるのだと。
この戦いは、雄介から様々なものを奪い取った。
雄介は其れを俺で補いたいのだと言う。俺を受け
入れる事が、最終的な補完なのだろう。
「力…抜けない…か?」
進む事も退く事も出来ないで、開放を促す締め付けだけが
強くなる。そして腕も足も、俺の身体を逃がすまいと
絡まっている。
「出来る…なら…」
振り絞られる言葉。
「このまま…一つに…」
俺も望んだ言葉。でも、本当に愛しているならば、
選ぶべきは安易な合一ではない。
「待っててやるから」
泣き出しそうな瞳が還ってくる。
「冒険…して来い!次に抱かれる為に、待っててやるから」
俺を引き寄せる様に力が入る腕が答え。そして、弾けた。
俺こそ、お前に会えて良かったと思っているよ、雄介。