番茶も出花と言うけれど 弐

全く以って迷惑な話だ。華兄貴がふしだら嫌ェ
なのは勝手だが、月まで巻き込む事ァ無ェ。
大体、其処まで四角四面が好きなんだったら
手前こそ学問所へ通って、末に出家でも
すりゃあいい。其れを自分はさっさと所帯持に
納まって、吉原通いを馬鹿にしやがる。
傍目で観るほど楽でもねェぜ?太夫辺りになる
とよ。月に五回ほど、俺が仕事道具持って吉原へ
通うのも憂さ晴らしじゃねェ。太夫連中に鍼を
打つ為だ。
俺に草子を見せてくれたのが酉兄さんで良かった
よ。あの人は本当に捌けてるからな。捌けてて、
それでも弁える所はきちんと弁えてるんだ。
華兄貴は知る気も無いだろうが、うちの店の色子が
「大奥に上らせたいほど行儀が良い」と評判を
取ってるのって、偏に酉…じゃなかった、
鶯姐さんのお陰だぜ。
『うちは色だけを売るんじゃないんだよ。その
場の夢をお売りするのさ。醒めちまった夢なんざ
興冷めだろ?』
良い言葉だねェ、ッたく。商売人総てに通じる
心意気だね。
…と、ここまで繕っては見たものの。
月と肌を重ねたいって気は、確かに俺ン中にある。
只、世間とは逆だけどよ。
若衆に抱かれたいと思う念者…優曇華の花よりも
珍しいんだろうなぁ。

「おう、邪魔するぜ」
「伯斎先生…畑違いとは言え良いんですかい?
養生所の先生が町の鍼医者の門を潜っちゃあ、体面
てェもんが…」
「しゃらくさい事ぬかすな!今日の俺は患者じゃ
ねェ、客だ」
と、言いつつ徳利を渡される。…おいおい、随分
良い酒じゃ有りませんかえ?
「ここ暫く働き詰だったんでな。お上からの
ささやかなご褒美って処だ。で、お前の顔がちらと
浮んでな」
言いつつ、じわりと指を握られる。…思えば、
このお人の弟分になってこの表道も若衆の抱き方も
覚えたんだよな。ちっとばかし、慰めて貰っても、
いいよな。
「先生…月の事でご相談が…」
「そいつァ夜聞こうか。二つ枕でな」
其のおつもりでしたか。面目ない。

乱れに乱れた布団。髷も形を保てばこそ、改めて
結った方が良いと言うほどに風三郎は抱かれ狂った。
其の原因が判るだけに、伯斎もまた強く杭を
打ち込んでやる。
「ちったぁ治まったかい」
「我慢が利く位には…先生も衰えませんねェ」
「お前の身体の覚えがいいんだ。…と言っても
念者になって…壱ぃ弐ぅ参ぃ…」
「つい昨日まで抱かれてて、日が明ければ抱く
側ですからね。まあ、店じゃ役に立ちますがね」
下帯も付けずごろんと仰向けになる。無心に
なろうとするんだが月の顔が頭に浮ぶと…エイ畜生!
「教えるんなら、いいんじゃねェか?」
「先生?」
「一人で教えるのが怖いってンなら、俺が立ち
会ったって良い。誤魔化してねェで、向き合って
みな」
「抱いちまったらどうします?」
「其れは、月坊が決める事だろうが?腹括りやがれ」
括る、べきなんですかねェ。
                     (続)

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル