しろさるさま
ワカヤドの中の気は滑ったマラダレの匂いでむせ
返る程だった。マラダレがこぼれている訳ではない。
おいらを含むナリアゲ衆の体にマラダレの匂いが染
み付いてるからだ。
最初は臭いと思った匂いもツナゲを重ねる度に気
にならなくなっている。いや、むしろマラダレの匂
いが無いと安心出来なくなっていた。
大体ワカヤドの中では皆下帯さえ着けないでいる
ものだからマラは隠れずあっちブラブラこっちブラ
ブラ。それに誘われマラ弄りや桃くじりでもやろう
ものならマラダレをこぼしては勿体無いとナリアゲ
衆の上下かまわず寄り来てはツナゲが始まる。二人
ツナゲは当たり前の話。時には流れで三人ツナゲ四
人ツナゲも平気でやっていたりする。突かれながら
マラをしゃぶられるのは実際良いもんだ。口にマラ
を差し入れられてマラダレを一杯出されるのもいい。
ワカヤドには床の間があって、そこにはナリアゲ
衆の守り神だというしろさるさまの像が据えられて
いる。ナリアゲ衆の腕半分程の背丈の像だからそん
なに大きいと言う訳でもない。
しろさるさまへの捧げ物はナリアゲ衆の絞りたて
のマラダレだ。ナリアゲ衆より小さいオチゴはマラ
ダレを出せぬし、ナリアゲ衆から後、年嵩のオンコ
衆のマラダレは子種に使わねばならぬから滅多には
使えぬ。
ナリアゲ衆のマラダレならコシヨワな者でも日に
三度は絞れるから捧げるには事欠かぬ。ツナゲにあ
ぶれた者が捧げるマラダレだけでも一日に徳利一本
程は充分溜まるのだから。
オチゴをナリアゲ衆に育て、長じてはオンコ衆に
するのがワカヤドと言う場所だ。入ってきたオチゴ
は年嵩のナリアゲ衆からマラダレを体に注がれ、そ
れを自分のマラダレの素に換えて溜めて行く。そう
している間には同じ程に育ったナリアゲ衆ともマラ
弄りをし合ったり桃くじりをし合ったりツナゲの真
似事をしたりして体を慣らしてゆく。おいらもそう
言う風にこのワカヤドで育ってきた。
「ワィド、オメ随分腰が強くなってきたな」
「ラグさ、ほんとけ?」
「ああ、ほんとだ。オレがツナゲ兄になった時に
は随分弱っちい腰だった。マラウケ兄をやった時も
まだちっと弱っちいと思ってたども、今は力があり
そうだな」
ツナゲ兄…おいらの桃割をやって最初にマラダレ
を注いでくれたラグが尻っぺたをはたいてくる。ラ
グにはマラウケ兄もやって貰った。ウイマラウケの
相手にオチゴから上がりたての者を選ぶ場合もある
そうだが、おいらの場合はラグが最初から自分がそ
うすると決めていたらしい。
「確かめてみるけ?」
「よいな。こんころちとマラダレが溜まってきた
と思ってたんだ」
ラグのマラは腹を逆打ちせんばかりに壮んになっ
ている。マラ同士を擦り合わせるついでに桃くじり
をするとくじるまでも無くズブリとほぐれている。
「んだば、おいらからツナゲても良いけ?」
「オメよ、もちっと肉弄りしてからでもよかべ?」
「おいらはそれでも良いが、ラグさは我慢きかね
べ?」
「肉弄りした方がマラダレも濃くなるやな」
「ふん」
「マラダレの濃い気の方がしろさるさまも喜ぶべ
?」
「んだな。ほたばゆるりとやるべか」
ラグを床に寝かせると喉仏から胸乳に向かって舌
をじりじり這わせる。ラグのツナゲ兄が教えた感じ
筋だという。いつも落ち着いているラグがこれをさ
れるとか細い声を上げて乱れをみせる。少し前まで
は声を抑えていた事もあったが、この頃は自分の上
げる声で余計に感じるらしい。おいらも実は同じ所
が感じ筋だ。だからおいらの乳首はラグに弄られ倒
してぷっくりふくれている。無論ラグの乳首もだ。
胸板同士、と言うよりは乳首同士を擦り合せる。
ラグは元々胸板の厚い方だし、おいらの胸板も少し
厚くなってきたからこう言う擦り合せも心地良くな
ってきた。ナリアゲ衆の胸板と一口に言っても結構
違いはある。擦り合せるならなるべく熱い胸板の方
が気持ち良い。
「ラグさ」
「なした?」
「湯ば浴びねでええか?」
「気回しせねでええや。汗くせもマラダレくせも
オメだべ?」
「なども、桃くせ身だばちっと嫌だべ?」
「いっこかまわね」
「そだべか」
「ワカヤドん中だ。オレが気ナが気混じるは仕方
ねべ」
まるで、自分に言い聞かせている様な言葉だ。
「どうあっても気になるならばよ」
「うん?」
「オメの内も外もオレのマラダレまぶせばよかべ
さ」
「それでええんけ?」
「湯ば浴びるにも手間かかるべさ。なら、オレが
気でオメをぬりこめるがはやかべ」
「んだば、ラグさからツナゲてや。ラグさのマラ
ダレで溺れてしよ」
「……ワィド、オメ言葉の手管も上手くなったな
?」
「色々肉弄りせば色々耳に入るでね」
ニイッと笑いあってから深く深く口を吸いあう。
ワカヤドに上がりたての頃はこれだけでも腰が砕け
てしまったが、最近は割に余裕が出るようになった。
「こんシタヌキで何人泣がせだ?」
「ラグさ程ではねべ。新入りを馴らす為にちっと
くれだ」
「オメも最初はシタヌキでよくタマヌケしたもの
だが。慣れできたか?」
「おうさ。シタヌキからツナゲを始める奴のこん
ころもちが判るよになだ」
言葉を交わしながらラグが桃くじりを仕掛けてく
る。おいらの桃クボはこの頃乾く暇が無かったので
一寸恥ずかしくなる。
「桃クボのとろけ加減もずいぶだな」
「いわねでくろ、ラグさ」
「恥ずかしがらずともええさ。それだけ励んでる
つ事でしろさるさまも悦ぶべ?」
「そんでもよぉ」
「オメが上がるちと前まではオレも桃クボをよう
濡らしてたで」
「ラグさの桃締めばすげでね」
「オメ程でなねべさ。オメは桃なめからずいぶ声
上げてたでね」
「やぁ、そなこといわね、で」
ラグの指使いが少し激しくなる。桃クボの中に残
っていたレドのマラダレで滑りもかなり良くなって
いるのだろう。端から二本入れられてくじられてる
のだから息も上がる筈だ。
「前も後もよおこなれでるねぇ」
ラグのからかいの言葉に抗いの声を上げたくても、
快感のあえぎに喉を支配されているので出来ない。
桃くじりとマラこすりを一時にやられてはたまった
ものでもないし。
「せば、マラダレの味ばちとみとくかね」
いつの間にかラグの声が腰の辺りから聞こえる様
になっていた。程なくして湿った音がマラねぶりの
始まりを告げる。ピチャリズルリとおいらの耳元に
まで届く様に音高くねぶられる。この音も気を高め
るための手管だ。
「マラアカば溜めずにおるは感心だわ」
息継ぎついでに言う途切れなく舐めてゆく。マラ
矛の下、首の所は念入りに。自分で洗っているつも
りではあるが、ねぶられるとマラアカがまだ残って
いたらしいとマラ矛で感じ、耳の先が熱くなる。
と、思っていたらマラの根元に締め付ける痛みが
来た。
「まんだ出すなよ」
ラグが髪を結わえていたツルでおいらのマラの根
元を縛ったのだ。張り詰めきった所にこの締め付け
は充分痛い。
「マラが痛えが」
「その内気になんねよになる」
湿り布団の上に横たわられさせ、脚を頭の後ろま
でぐっと持ち上げられ桃クボをあらわにさせられる。
「あらだめで見っとよ」
「あん?」
「オメ、囲み毛が生えで来たな」
「ほんとけ?」
腹が押されて一寸苦しいが、思わず聞き返す。
「んん。これはウイ毛ではね。ちゃんとした囲み
毛だ」
「おいらもオンコ衆に近づけたんだべが?」
「ちっとだげな。にしてもすげ桃くせわ。ポカリ
と開いどるし」
「あ、開いでなんか」
「いる訳ねべ。マラダレがしみでとるだげだわ」
そこをふっと舐められるんだから堪ったものでは
ない。それも舌を入れられてぐるりと開かれながら
だ。そうされたら言葉を返す所ではなく、頭の中で
マラウケの手順を繰り返し、しろさるさまに今の内
に祈りを捧げておく。ツナゲが始まってしまえば祈
りどころではなくなるから。
おいらの桃クボからレドのマラダレが吸い出され、
音高く飲み込まれる音が聞こえる。からかいの言葉
はもう聞こえてこない。ただ荒い息遣いと桃クボを
えぐる舌の湿った音、そして、おいらの肌に滴り落
ちるラグの汗。それらを感じながら、おいらは自分
の唇の端からもよだれが垂れているのを他人事の様
に感じていた。
そして、桃クボに吸い付くラグの唇。ほんの少し
吹き込まれる熱い息。不意にラグの爪先で擦られる
乳首。イきたいのに、ツルで縛られてるからまだイ
けない。
そして、持ち上げられた太股の裏をもう一押し。
脚の間に入り込むラグの体。桃クボの前後に擦り付
けられるラグのマラ矛。早く突いてくれと哀願した
くもあるが、ここで拍子を外すといたずらに気を散
じてしまう羽目になる。
ゆっくりとラグに呼吸を合わせる。深く、浅く。
頭をのけぞらせた視線の先にしろさるさまが見える。
しろさるさまにラグとのツナゲをしっかり見られて
いるかと思うと、息が上がりそうになる。
そう言えば年嵩のナリアゲ衆に聞いた事がある。
ツナゲの興がのってくると、しろさるさまも降りて
きてツナゲに加わるとか。それが誠なら降りてきて
戴きたいものだ。ラグの体で物足りないと言う訳で
は無いけれど。
などと考えている間に息の調子がピタリと合いだ
す。最早どちらの息遣いか区別はつかぬ。ただツナ
ゲの拍子を数えているだけだ。そして、
「……ッか、はぁ……」
一息の間に貫かれる。肉の痛みは無い。ただ熱さ
を感じるだけだ。そしてのっけから激しく貫かれる
容赦なくぶつかる体、抜き差しされるマラの矛加減。
鼻で息が出来るまで暫く掛かる。喉だけであえぐ様
に息をし、両手両足でラグの体を絡めとる。もっと
深くもっとしっかりツナゲが出来るように、と。
熱い息が顔に近づいてきたところまでは辛うじて
覚えている。多分、シタヌキをして返したのだろう。
その瞬間、ラグに誰かがのしかかり、彼を貫いたよ
うな気がした。そこから先は、一寸覚えていない。
ただ大きな声でなにやら叫んでいたような、喉のヒ
リツキだけは判った。
「ぃど…ワィドよ…」
「う…ええ…ん…」
「ワィド…起きれや…ワィド」
「ら…ぐさ?」
「ああ、オレだ」
体を揺らされ、耳元で強く囁かれて気がつく。目
をあけて、周りを見渡そうとして起き上がろうとし
たが全く体に力が入らない。節々の痛みと言うより
は肉の筋の痛みだ。
もっとも、おいらを起こしたラグも同じ様な感じ
だったらしい。なんとなればおいらの体のすぐ横に
ラグは横たわっていたから。
「ワィドよぉ」
「なだ?」
「オメ、ツナゲの時にしろさるさまに願掛けした
が?」
「しろさるさまにが?」
「んだ」
「してね」
首を横にふりかけけふと思い出す。あの瞬間に願
ったのは、とりあえず願掛けの範疇になるんだろう
か。とりあえず、ラグに話す。
「そりゃオメ、願だわな」
納得した様にラグが苦笑いを浮かべる。
「どうやらオレどもはしろさるさまと一緒にツナ
ゲをやったらしぞ」
「ほんとけ?」
「らしな。おかげで気が随分抜がれたわ」
気の抜けた笑いを浮かべたラグに口を吸われる。
「オメのマラも随分楽だべ?」
「そいわれれば」
探ってみれば根元にはまだツルがかかったまま。
でも、五回は気を抜いたようにすっきりしている。
「しろさるさまに抜かれたんだべか」
「そんだろな。これでオメもオンコ衆に近づいた
訳だ」
「うれしもんだな」
「オレ相手に励んどげばしろさるさまのご利益も
上がるかもしんね」
「それもよかべな。…ラグさよ」
「あん?」
「カラダナエ納まれば、又ツナゲるべさ」
「おうさ。手管考えとれ」
視界の隅に映ったしろさるさまが、その瞬間ニイ
と笑った様に見えた。どうやらおいらのマラダレは
良い供物になったらしい。
(了)
2007.2.22脱稿 2007.5.26up
雑誌投稿を想定して書いた話。
実在の記録に妄想を少し加え、
やや荒めに練り直した感じ。
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