この空で会えるよう     

結局、待ち合わせ場所にきてしまった。
「何遣ってんだ、僕」
本当に、どうしてしまったというんだろう?
実際此処に来るまでだって心の中で何回も
否定した。だってこんなに自分の思い通りに
この『恋愛』は進まない、と思っていたから。
少なくとも賢が伊織に与えた第一印象は最悪
だった筈だ。其れが改善の方向に向かったのは
賢の努力もあったが、其れを上回る伊織の素直
さ、真っ直ぐさに助けられてこそ。
「現金、だよね、やっぱ」
で、幾らお近づきになれたからと言って惚れ
てしまったと言うのは洒落になりにくい。あの
クリスマスカードを手渡す段階で自覚して
しまっただけに。
「……待ちました?」
「ちっとも」
煙草、喫ってなくて良かった。余りの戸惑い
に2時間前から此処で待ってるんだ。足元に
吸殻の山……考えただけでやだな。
「じゃ、行きましょうか?」
考え込んでいる内に、手を曳かれて引っ張ら
れる。…あれ、伊織君の手、こんなに逞し
かったっけ……?

映画観て、食事に行って……今夜はお爺様も
お母さんも居ない。アルマジモンも久し振りに
デジタルワールドでのんびりしてる。
頭の中で計算してる自分に、一寸呆れたりして。
其の計算が大丈夫になるのは、一条寺さんが
受け入れてくれた時だって言うのに。
確信犯的な自分を自嘲しつつ、そっと横に座る
思い人の横顔を盗み見る。
思えば不遜な片思いですよね。小学生が中学生に
対して「可愛い」なんて思ったのがきっかけなん
ですから。
でも、歳の差って言うのは結構大きい訳で。
知らないでしょ?あなたが大輔さんとタケルさん
との間に挟まれてた時、僕がどれだけ歯痒かったか。
大輔さんが本当に好きだったのはタケルさん。
そして、逆もまた真也だったけど、本人達だけが
気付かなくて。
あなたが二人の思いを映す鏡になって、漸く通じた
思い。でも、其れは結局友情の延長に過ぎなくて。
大輔さんに抱かれて、タケルさんを抱いて……
そうやって自分を苦しめながら、それでも透明で
いようとするあなたを見て何も出来ない自分が
悔しくて。
守って、あげたかった。
あなたを、守ってあげたかった。
年齢を重ねてゆく事で、あの時影に囚われざるを
得なかったあなたの気持ちを判ってしまったから。
純粋な気持ちで好きで居たかった。でも、気付くと、
あなたを抱きしめたくなっている自分が居た。
でも気持ちを伝えて…どうしたいんだろう。
僕の思う未来に向かって、一緒に歩いて欲しいんだろうか?
                     
「いい、映画だったね」
「良かった。そう言って貰えて」
「……こんな時間か。お腹、減っただろ?食べて
行こうか?」
「っあ、あのっ」
「何?」
「…今日、家に誰も居ないんです。泊まり序でに、
僕の家で…」
                       
風が、一吹き。

「じゃ、買い物して帰ろうか。百貨店で良いよね?」
僕の手を曳いてくれるあなたの手は熱かった。
其れって……。

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!