バランスボウル今思い返すとつくづく不思議な話だけど、初体験の時 にどちらが受身になるかなんて全然気にしていなかった。 だって二人とも男と言うよりはオスだったから実質的な 女役である受身を自分が率先してやると言う考えを持っ ていなかったのだ。年齢と言う格差さえもオスであると 言う意識の前には多分脆いものだったと思う。少なくと も僕にとっては。 それが合図無しに流れる様に役割交代しながら夜毎交 わっているのだから、未来なんて良く判らない。 「少し大きくなった?」 「かな?」 「前より少し奥の方に来てる気がする」 「そんだけ?」 「うん、そんだけ。あとの感触は一緒」 「ちぇ」 「年少さんが舌打ちしなさんな」 「年少ゆーな」 とりあえずパンツ一枚で寝転ぶ姿に愛しさを覚える。 これは僕等のルール。事が終わったらとりあえず何か着 る。裸で余韻を楽しむのも良いんだろうけど、なし崩し にだらけるのはなんか嫌だ。もっともろくな後始末をせ ずに着ているんだから元も子もないんだろうけど。 「終わったあとのパンツさぁ」 「んー?」 「一寸変えてみる気、ない?」 「…もしかして用意してる?」 「察しがいいね」 「付き合い長いし」 そりゃそうだ。生まれた時から殆ど傍にいる訳だし。 「で、これなの?」 「楽でしょ?」 「一寸はね。でも恥い」 褌、と言うよりはT字帯。でも絹だから肌触りはいい 筈。色を赤にしたのは確かに僕の趣味だけど。 「穿いたままやろうなんて思ってる?」 「不思議とそれがないんだな。良心ってかけじめって 感じ?」 「せっかくエロい風景なのにね」 「エロくても生理的に駄目ならアウトでしょ」 でも、匂いは嗅いでみる。子供の匂いから男の匂いに なっているのがよくわかる。それを素直に喜べればいい のだけど出来ない。そう言う瞬間に自分の嗜好と愛情に ついてふと疑いを抱いてしまう。 「こらこら、帰って来い」 「どこにも行ってないって」 「じゃ無くて。…何考えてたの?」 「自分の好みと愛情の矛盾について」 「ああ、なるほどね」 「怒らないの?」 「怒っても仕方ないっしょ。最初に手を出されてから 二人の関係について考える時間は俺にもあったんだし」 手を頭の後ろに組んでゴロンと横になるその腋にはま だ男臭さはない。 「俺が好きなのかそれとも餓鬼全般が好きなのか…正 直不安になった時はあるけどさ」 「何時だったか訊いて良い?」 「その内話すよ。もう今は不安じゃないし」 不意のくちづけ。ついばむ様な、と見せかけて一寸深 目に口を吸う。これは僕が教えた手管。 「快感だけで良い、なんて割り切る事は無理だけどさ」 腹筋の辺りから伝わる振動と体温。 「自分の好きって気持ちをあっさり裏切る様な事は、 もう出来ないから」 「男だね」 「どうなんだろ。自覚無いな」 一歳の年の差なんて、と笑い飛ばせる年頃じゃないか らこうまで考え込むのかもしれない。これがいっそ歳の 差+学校の差までいってしまっていたなら思い知れたの かもね。 和ちゃん…和佐が生まれた丁度一年後に僕が生まれて それ以来の付き合い。体格差はとりあえず僕の方が有利 なままここまで来てる。和ちゃんがその点を気にかけて いるかといえば…実は全然気にかけていないらしい。 『遺伝の問題だもの。仕方ないんじゃね?』 確かに血縁の体格は父方にしても母方にしてもこちら 勢の方が立派な人が多い。そう言う中で生まれた僕の体 格も世間の平均から比べれば、と言う感じだ。だから和 ちゃんと僕が並んでいると第一印象では僕の方が年上に 見られる。第一印象だけは。 そう言う点を気にするという事自体、餓鬼っぽい事の 証明なのかな。和ちゃんに「大人」になって欲しくない と一番強く願っているのは、実は僕かも知れない。大人 の和ちゃんが嫌なんじゃなくて、置いていかれるのが嫌 なんだと駄々をこねているだけなんだろうけど、多分。 「何考えてんだ、サト坊」 「サト坊ゆーな」 和ちゃんに舌を出して見せて軽くブリッジ。お誘いの 意味を込めて。 「布越しで誘いたいなら、もう少し学習するこったね。 ちっともそそられないよ」 枕の下を探って、何かを投げてよこす。 「演出くらい学習したら?」 「オヤジ臭さを学習してもなー」 ディルドーって奴?半透明な色合いが結構やらしく感 じる。黒とか肌色の方が違和感なく思えるのは何でだろ う。 「和ちゃんって、こう言う所はしっかり年上だよね」 「オヤジって言いたい?」 「いや、文字通り大人に近いって事で」 寸法がさ、うん。僕がネット経由で知ってるサイズっ て男の願望丸出しってサイズだから。こう言う現実的な サイズを目の前にすると恐怖心よりもキチンと好奇心が 目覚めてくれる。そう言う気配りは多分僕には出来ない や。 「結構滑らかなんだ」 「じゃ無きゃ、傷ついちゃうだろ?」 「うん。そうだね」 答えながら学習のために、とくわえて舐めてみる。一 寸樹脂くさいかも。それに一寸冷たいかな? 「堅さは?」 「ほっひょやああふぁい」 「おしゃぶりじゃないんだから」 苦笑する和ちゃんを横目で見ながらもう少し深目にく わえてみる。このサイズならくわえるにも楽って感じ。 和ちゃんのよりは一寸小さいけど。 「サト坊、随分やらしいんだけど」 「ふぁうひゃんおへーは」 「そう言う時までくわえないで欲しい」 「……んっく。塩気と生臭さが一寸足りないのがなん だかなぁ」 「どう言う味なんだよ、俺のって」 「確かめたい?」 「ま、ね」 「じゃ、まあ」 T字帯の隙間から和ちゃんジュニアを引っ張り出す。 元気になっているもんだから一寸取り出しにくいかも。 布の隙間にこもっていた臭いが鼻に入ってきて、条件反 射で唾が沢山出てしまう。 じゃ、イタダキマス。 心の中でキチンと手をあわせて先ず先走りをすすりと る。和ちゃんのって量が多い方なんだろうな。って比較 するのは僕とだけどさ。ここまで…下着の前全体がぐっ しょり濡れてしまう前の先走りって、この年でもすごく ない? 「サト坊」 「ふぇ?」 「何か忘れてない?」 静かに言われてディルドーの存在に思い至る。冷たそ うで一寸嫌かな…でも、僕の中で温めたらいい感じにな るのかな。 一寸迷って心を決めて、くわえたままお尻をもぞもぞ させてみる。以心伝心、和ちゃんが上半身を倒してくれ たのでみたことのあるシックスナインとかいう体勢をと る。 つぷ。 妙に高い音を立てて和ちゃんの指が僕の中に入ってく る。最初から二本も。緩んでるからいいけどさ、気恥ず かしいよ。そこからかき回されてきて、段々と耳から熱 くなってくる。普通に突かれるより余程エロい。 「すげーね」 「え?」 「俺の胸まで前のよだれが垂れてきてる」 「……バ、馬鹿ァ…ぁんッ…」 声を出してた所を思い切りかき回されたもんだから指 が深く入ったみたい。くわえる余裕なんてあるもんか。 ただ和ちゃんの太腿つかんですがるのが精一杯。 「こんだけトロトロなら良いかなぁ」 「は、やくぅ」 「俺のじゃなくて良いんだ?」 「……ぃじわる」 「ほめてくれて有難う」 笑い声と共にゆっくりと肉以外のものが入ってくる。 なんか変な感じ。肉じゃないけどいい感じに軟らかくも あるんだ…なんて急に冷静になってる自分って少し嫌だ な。感じてると言うのも自覚できてるから余計に嫌だ。 「食いしん坊だよね、サト坊のお尻」 「んな事無いよぉ」 「いつもの勢いはどうしたんだろうね。ほら、また何 か忘れてる」 「ん、うん…」 そうだった。和ちゃんの完全な味を口移しするのが最 初の目的だったんだ。うー…お尻の中がずっとムズムズ した感じになってくわえるのに集中できない。これがバ イブだったりエネマグラとか言う道具だったら集中でき ないどころかもう何も出来なかったかも。まだ和ちゃん が中に入ってる方が良いよぅ…。 「上の口も下の口も美味しそうにほおばるなぁ」 和ちゃんの意地悪が聞こえても答える余裕が無い。口 はまだ良い。和ちゃんの先走りがあるから。問題は只存 在感だけがある後ろだ。ただの物体のはずなのに妙に僕 の中に馴染んで出て行ってくれないのだ。この馴染み方 は尋常ではない。 そうこうしているうちに和ちゃんが絶頂を迎えようと している様子がわかった。僕の頭を抱え込んでいるのは より深く注ぎ込みたいからか?そうしたら口移しは難し くなるのでのどの奥を使ってじっくり刺激を与えてやる。 ! 和ちゃんの絶頂。量は結構多いけど、のどちんこを隠 す様に愛撫をしたからむせ込まなくてすむ。これを口移 ししなくちゃいけないのか。最近こののどごしが癖にな ってるからなんかもったいないな。でも仕方ないか。 見上げると和ちゃんが期待に瞳を輝かせて心持薄く口 を開けている。上から注ぐかきっちり送り込むか一寸迷 って、送り込む方を選んで先ずは軽くキス。そしてゆっ くり深く重ねていく。和ちゃんの鼻息がだんだん熱くな るのがわかる。その鼻息で興奮してるなんて、変かもね。 鼻息一息ごとに股間が揺れてるんだもの。 「んー…」 「どんな味?」 「確かにサト坊のんより生臭味は少ないかも知れない。 後、なんか苦いかも」 「苦いのはさ、大人に近いって証拠じゃね?」 「んなもんかなぁ…大人って言うんならサト坊の方が よっぽどジャンg」 容赦なく腹筋チョップ。ばかやろー。一応お年頃なん だぞ。和ちゃんにそう言われるのが一番恥ずいんだよ! 和ちゃんが悶えてるのを見たら一寸スッキリ。さ、シ ャワー浴びてこよ。 で、シャワー浴びて戻ってきたら和ちゃんが道具使っ て布団の上でブリッジしてる訳で…うん。我ながら年の 割にかなり乱れた関係だなと思う。 「それ、エネマグラ?」 「そ。ディルドー注文した時のおまけ」 「注文って?」 息が乱れた様子がないというのが悔しいな。和ちゃん ってば時々下半身と頭が別行動してるから。 「普通あのサイズのディルドーって無いんだよな」 「かもね」 「だからオーダーメイドした」 「ちょっとちょっとちょっと!」 そこまでやるかよいくらなんでも…和ちゃんって、そ こまでやる人だったね、うん。そう言う知識って、僕知 らないもん(とこういう時だけ子供ぶってみる)。 「サト坊には一寸エネマは早いかもな。結構くるわ、 これ」 「すごいの?」 「とんじゃいそ」 うすく笑って手招き。寄って行ったら噛み付くように キスされた。 「悟って呼べるようになったら二人で使ってとんじゃ おうな」 「今はまだだめ?」 「図体だけじゃね。俺を布団の上で鳴かせたら合格の サイン出しちゃる」 ちぇ。ま、この先もゆっくり時間があると約束してく れてるからそれで良いか。 和ちゃんが目でせかす。そして僕は和ちゃんジュニア を僕の中に沈めていく。味わうように、ゆっくりと。 (了) 2006.12.17脱稿/2007.3.11up 雑誌投稿を意識して構成した作品。 |