「深春、起きろよ」
誰だよぉ、ぼくを起こそうとするのはぁ。ぼくは蒼だってのにさ!
…何処かで聞き覚えのある声だな?
うっすらと目を開けて隣を見ると、京介がいる。これは正解。で、
ぼくを揺り起こしたのは誰かと思って改めて見ると、
「何でぼくがぼくを起こすんだよー?」
思わず叫んで口を抑える。…一寸待ってね。今喉から出た声って、
深春の声?体を見てみると其れは見覚えのある熊の体。…と、言う事
は、
「蒼なんだね?」
「京介?」
『ぼく』がこっくりと首を縦に振る。
「俄かには信じ難いが、そう言う事らしい」
「…って事は…」
一番不似合い(であろう)現在の体の持ち主の頬を両側に引っ張っ
て起こして差し上げる。
「おーきーろーよー!みーはーるー!」
「…蒼。誰の体か判ってやってるんだろうな?」
声色はぼくだけど其の立ち上るオーラは間違いなく京介。と言う事
は後が物凄く怖いって事。即座に判断してパッと手を放す。
参ったね。正月早々からこんな騒動が起きるなんて。其れもよりに
よってこの3人に。
「面喰うと言うか嬉しいと言うか…今からでも営業している散髪屋、
探してみるかな♪」
「止めてくれ…頼むから。僕の体だと言う事を忘れないでくれ」
「まあまあ、京介、コーヒー飲む?」
「蒼、最近胃腸の調子崩してただろ?不本意ながらホットミルクに
しよう」
会話だけなら非常にノーマルだと思う。でもね、其れが映像を伴う
としたら、あんまり愉快じゃ無い。
ぼくの体に入っているのは、京介。
京介の体に入っているのは、深春。
そして、深春の体に入っているのはぼく、蒼。
ぼくと京介が漫才しているのを深春がとりなす…想像できる?
何の因果で正月早々から…はぁ…。
そんな時でもやっぱ性欲ってものはめげないもので。
『この体で何時も通りに遣ってみようか』
ッて事になった。我ながらタフな下半身だね。確り期待してんの。
「へえ、俺のって案外綺麗なんだなぁ」
妙な感心をしているのは京介…じゃ無い、深春。まあ自分で自分
の蕾を見る機会なんて滅多に無いから好いけどね…恥ずかしいけど。
「深春、こっちもほぐしてくれないか?流石に君のを挿れるのは
骨が折れそうだ」
「京介、手加減してね。ぼくの体なんだからね?」
「でも感度はいいね。濡れ方が凄い」
「…莫迦…」
見た目は京介・深春・ぼくの3連結。でも実際は深春・ぼく・京
介の3連結。
「みは…るの…体…ッ…はぁ…気持ち…いいよぉ…ッ」
「そんなに締めるなっ、蒼!…そんなにイイか?」
「イイ…イイよぉーッ!」
「…元に戻ったら挿れてくれな?京介」
「じゃ、この…体の組み合わせでね。蒼、いい締め具合だろ?」
「凄い…これ、ぼくの?」
「そう、蒼の。深春に味合わせるのは…勿体無い…なッ…」
そして。
3人一緒に弾けて、暗転。
「ああっ!」
3人一緒に叫んで目が醒めた。お互いに見返す。あ…元の体。
…と言う事は、夢?しかも、初夢?
「どんな夢だった?」
とのぼくの問いに、二人とも、
「ん…いや…」
と、言葉を濁す。多分シンクロしている様な気がする。深春が
あれから挿れて欲しがるんだもの。…凄い初夢だね。