事の発端は先生のお土産。
ほろ酔い気分で帰宅した先生が持っていた菓子折には
柏餅が入っていた。
「コレ ナニ?」
「柏餅だよ。中にあんこが入っているお餅。」
「ハッパガツイテル・・・」
「これが柏の葉。子供の日に食べるお菓子なんだ。」
「コドモノヒ?」
「5月5日は『子供の日』という祝日でね、その日
は子供の健やかな成長を願う日のことなんだよ。」
「フーン」
一応納得したのか、蒼はそろそろと柏餅に手を延ばし
て葉を指先でつついた。
「1つだけだよ。後でもう1度歯を磨こうね。」
頭を撫でると黙ってうなづく。
その夜、僕は深春と酒を飲みながら話した。
「親は子供の健やかな成長を願うものだよな。」
つい出た僕の愚痴に深春はこう答えた。
「そうだな。でも俺は思うんだが親は子供を選べなく
ても、子供は親を選ぶ権利があるんだぜ。」
「子供が親を選ぶ権利?」
「そうさ。子供の面倒を見ない親、子供を虐待する親
なんて子供の側から捨てればいいさ。子供は無条件に
愛される資格があると思うよ。愛してくれるのが親だ
ろうが他の人だろうが関係ないさ。」
「深春・・・」
「おまえは立派に蒼の親代わりをしてるよ。もっと
自信持てや。」
なんか迷っていた僕の背中を大きな手がドンと後押し
してくれた気分。
「さあ 明日は蒼と何をしようか。」
「俺も仲間に入れてくれよ。」
「勿論。」
「天気が良ければ外行かないか。おまえら家の中にば
かりこもってないで。」
そうだね。天気が良ければ3人で外に行こうか。
ねっ 蒼? かたわらで無邪気な顔をして寝ている蒼
の頬を僕はつついた。
君と一緒に僕も健やかに成長出来たらいいと思う。
いや、君に僕が手を貸して貰っているんだよ。
ありがとう 蒼。
子供の日とは子供に感謝する日かもしれないね。