蜘蛛絹

  袱紗捌きも鮮やかに京介が点前を進めてゆく。
 深春は其の度に思う。本当に自分でいいのか、と。
 京介に問うた処で、只優しく微笑まれるのがオチ。
そして、誘われて果ててゆくのだ。
 『縛られていないと、不安なんだ』
 そう、京介は言うけれども、縛られているのは京介
ではなくて、抱いている側の自分。不安に苛まれるの
は、何時も深春の方。

 蒼は、其の京介の挙動の一々を記憶に焼き付ける様
にじっと見ている。
 憧れていた人と体が結ばれたのだから安心できると
思っていた。でも、この不安は何だろう?栗山先輩へ
の嫉妬?そうじゃ無い。
 不意に気付く。
 縛られたい、のかな。縛られれば、より深く愛して
貰えるのかな?
 蒼の中で、何かが目を覚ましかけていた。

 始末をしている京介の元へ蒼が訪れた。
 「今日は、少し変わった点前にしようか」
 優しく微笑んで、煎茶手前の道具を引き寄せる。
 「もう直ぐ、深春もくる。彼に、抱かれてみたくな
ったのかい?」
 蒼の頬に、朱が走った。
 「抱かれたいのは、あなたにです」
俯きながら学生服の釦を外して行く。指が幽かにだ
が震えている。真っ白なカッターシャツ。其の布地を
透かして、彼の肌に何かが巻きついているのが判る。
 「それだけじゃ足りないだろう?脱ぎなさい」
 残酷な微笑。抗う術は無い。
 蒼の肌には、絹の組紐が喰い込んでいた。蒼自身も、
申し訳程度に覆う布地の上から確りと縛られている。
 「中々に趣き深い装束だよな」
 背後から不意に抱きしめられる。
 「栗山、先輩」
 「深春だ。み・は・る」
 「…みはる」
 「いい子だ。京介、お前真ん中な?」
 「一服飲んでからが好いだろう」
 嫣然と、誘いかける。

 組紐を解かれ、仰向けになった蒼に京介が覆い被さる。
其の背後から深春が揺さぶりを掛ける。
 「きょ…う…すけ…ェ…ッ」
 「好い声で鳴くね。梅の花の時期になったら野点をしよ
う。鶯の代わりに存分に鳴いて貰うよ」
 少し息を荒げて、耳元で囁かれる。紐の跡を舌で辿られ
て、意識はもう絶え絶えだ。
 「もう…もう…」
 「…充分に、注いであげよう。まず後ろの口にね」
 「前には、俺が」
 そして、一嵐過ぎ去って。
 蒼の口元から胸元にかけて深春の樹液が迸り、蕾からは
溢れた京介の樹液が滴っていた。
 そして、蒼の表情には安堵が浮かんでいた。
 「まだ、足りないだろう?」
 美しい蜘蛛が、誘いかける…。
《コメント》
何となく、重いな。
葡萄瓜も初釜第2弾を書いて見ましたが…
蒼が受に回ってしまった。意図してませんよ。
タイトルは完全な造語です。
頼りなく見えて、実は一番強くて厄介な束縛、と
思っていただければ。

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