「彼」の誕生日…ッたく。何でこう言う日にこいつと 出会うんだか。拠りによってこの場所で。 まあ、目的は同じなんだけどな、徹頭徹 尾。でもなァ…今となっては清らかだけ ど独占的に過ごせた日々が懐かしい。 「カゲリ、偉く又身軽じゃん」 「ヒロこそ」 「まさか体にリボン巻きつけちゃいね ぇだろうな?」 「……俺がそんななりして、似合うと 思うか?」 「……結構イイかも知んない…訳ねー だろ!」 「カズミにそんな格好して欲しいとは 思うけどな」 「奇遇だな。俺もだよ」 内容が内容だけに声を低め、不本意な がら寄り添う俺達。そう言う仲だとは敢 えて否定しないが、俺達の本命はちゃん と別に居る。これから訪ねる部屋の住人 だ。 因みに今は十一月八日の午後十一時半。 あいつの誕生日を真っ先に祝いたくて、 わざとこの時間にした。当日の午後から は確実に予定が詰っているだろうしな。 少なくとも夜は門野のじい様が一枚噛ん でそうな気がするし。 「てめーと以心伝心ってのもなァ」 「お互い様だっての。どうせ同じ穴の ナントカだろ?」 ……ついオチを付けちまったぜ。 「……身も蓋もねーな」 スマン、ヒロ。 「いらっしゃい。二人とも来てくれた んだね」 部屋の主は相も変らぬ純白フリルのエ プロンで待ち構えていた。……凶悪な可 愛さ。カズミ、おめーよ、絶対わざと反 応、試してるだろ? 「でもそう大した準備しなくて済んだ んだ。アルコールはカゲリが持って来て くれたシェリー酒で充分だし、ヒロが昼 間の内に料理を運んで来てくれたから」 ……思わずカゲリと顔を見合わせる。 ……いいけどね。こいつ、嫌いじゃな いし。体の相性もかなり良いし。 案外、何も関係無しでこいつと逢った ら……オイオイ、止めとこうぜ?やっぱ カズミが居てくれた方が良い。それに今 日は…。 「最初に二人に祝って貰えるなんて、 思ってなかったから」 先に泣くなよ、カズミ。泣くなら宴た けなわの第二ラウンドになってからな? 「……五、四、三、ニ、一!」 台詞無しで、両頬にキス。何でこいつ はこんなに髭が薄いかね?此れで俺達よ り一歳上だってんだからな。 「俺は此れね」 カゲリがジャケットのポケットから出 してきたのはベルベット張りの小さな箱。 やっぱそう来たか。さて、どっちだ? 「ま、金無かったんで」 納まってたのはシトリンと思しき石の 指輪。其れも、おい、小指サイズじゃね ェか? 「変にピアスなんてやれねぇしさ。指 輪も…ま、洒落って感じでつけて貰えり ゃ」 顔真っ赤にしてやんの。気持ち判る立 場だからなァ。正面切って主張できない 関係だし。 「俺からは此れ」 「……法律的に大丈夫だろうな?」 「でも、当り良さそう」 俺が渡したのは鼈甲の耳掻き。カズミ、 結構耳掻きが好きなんだよな。するのも されるのも。だって、普通この歳の野郎 が「好きだから」って理由で二十本耳掻 き持ってたらそりゃフェチの領域だぜ? で、誕生石じゃありきたりで面白くな かったんで、誕生日の花があるんなら、 と探したら、カズミは鼈甲に該当した訳。 で、耳掻き。 「象牙の奴と同じで、ちゃんと認可商 品だから大丈夫!」 と、俺が言い切って…三人して共犯者 風にニンマリ。 「体を張ってのお祝いも、ある訳だよ ね?」 「無くても要求するだろ?」 「勿論!」 「あんまりマジマジと見るなよ。恥か しいから」 「往生際悪ィぞ、ヒロ」 腰に宛がった枕のお陰でヒロの蕾がよ く見えている。まだ何も知らない、綺麗 な色。 「中も一応処置はして来たんだけどさ」 確かに。綺麗だし、随分解れてる。 「出してきたの?」 「有名所の市販薬を一本。後で指入れ てみたら、結構入るんだよな」 じゃ、遠慮なく。 あ、ホントに深い。カゲリより凄いか も知れない。 「じゃ、俺はこうね」 カゲリの舌がぼくの全身を清めてゆく。 痕をつけずに、只管撫で清めてゆくだけ。 でも其れは実際物凄い快楽な訳で…ずっ と焦らされっ放しも同然な訳だから…ヒ ロの締め付けと相まって、すぐに果てそ うになる。 「カゲリ、顔、跨げよ」 如何するのかなと思ってたら、カゲリ のを口で遣ってあげてる。そしてカゲリ は、僕を口付けで狂わせる。 果てそうになる自分を押さえながら、 頂点まで徐々に、徐々に…。 快楽を追う中で、ふと横切る罪悪感。 でも、今は三人で居たい。 以心伝心な三人で。 《コメント》 一寸中途半端な時期の誕生日 ネタとなりました。 誕生石(月・日共)は一応ネ ット上で検索致しております。 蒼に耳掻きをして貰う事を夢 見るヒロにご注目戴ければ…。 |