雨と踊る

午前三時、雨に煙る森の中踊っている
カズミを見つけた。
踊っていると言ってもそれは俺のただの感想。
内側の何かに操られているかの様に踊って
いる様な動きをしていた、とでも言えば
正確なのかも知れない。

「帰ろう、蒼」

俺はそう言って、只彼の袖を引っ張る。
そして『蒼』は俺と一緒に今夜の寝床に帰る。

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両肩を抱いて寒がる彼に一声。
「服脱いで、シャワー浴びような?」
こくんと頷くその瞳には、いつもの快活さは
ない。そして、透明さも今は無い。
錠を確かめて手早く服を脱がせ、二人とも
裸になったところで包み込む様に抱いてやる。
そして、背中に回した手で背中を軽く
二、三回叩く。

「カゲ、リ?…どうして、ぼく」
「お帰り、カズミ」
抱擁体勢を解いて、髪を軽くかき回す。
「一風呂浴びて、さっぱりしようぜ」
「ん…」

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カズミが不意に夜中のダンスを始めたのは
今年この森に来てからだ。
それまでもこの森には来ていた筈なのに、
俺と一緒にきた今年に限ってこの現象は
起きたらしい。今日で3日目だ。
心理学に詳しい先生なら何だかんだと理由を
つけて解決できるんだろう。
恐らく、カズミの過去にまで踏み込んで。
俺にはそんな芸当は出来ない。でも、
カズミをほったらかしにもして置けない。
だから、『蒼』と一緒に帰って暖めてやる。

****************

「何でかって聞かないの?」
「聞いたら答えられるのか?」
「出来ないよね、多分」
「なら、聞かない」
外の雨とはうって変わって暖かいシャワーに
煙る浴室の中、俺達は只会話している。
「二人で来てから、こうなったんだよね」
「そだな」
「皆と来ていたのに起こらなくて、カゲリと
来てから起こった事、かぁ」
「あー、余計な事は考えるなよ?お前が
これ以上この森に居たくないなら別の
ところに行っても良いし」
「でも、二人で居る限り起こるかもね?」
あ、ヤな突っ込み。
でも、否定は出来ないんだよなぁ。
嫌な可能性にぶち当たって無口になった
俺の耳に、不意に熱い息がかかる。
「今から踊ろうか、二人で」

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「逆戻りしてどうするんだよ」
「でも、気持いいでしょ?」
「…まぁな」
そして、再び雨の中。今度は二人で。
雨に濡れるのは別に構わないけど、
この異様に早い動悸は何が原因だ?
カズミの裸なんて相当見慣れてるぞ?

でも股間は実に正直に俺の心の動きを示して
いる訳で。つまり俺はカズミの踊りを見て
興奮していた訳。

そしてカズミが体をぶつけてくる。
その瞳はいつものカズミで、そして俺の
体には俺と同じ状態になった『カズミ』が
当たっている。
言葉も交わさずに、俺達は抱き合って
雨の中転がりまわった。

「来年も、又来ようね」
「ああ」
癖になりそうな、雨とカズミとのダンス。
(2003.6.11)
【後書】
きっかけになったのは頭の中に
浮んだ映像。後は筆の向くままに
任せました。

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