今年は先生達との約束をすっぽかして、カゲリとヒロと
過ごした。本当は蓉も一緒に居て欲しかったけど、舞台の
スケジュールの都合で泣く泣く諦め。
『仕方ないな。じゃ、コレ貸出ね。必ず返す様に』
『何処まで使っていいの?』
『心変わりを起こしてなければ使い倒しOKだよ』
『おめーら…俺はモノじゃねーぞ!』
『…と、本人は言ってますけど?』
『却下して良いよ』
ヒロ…虐げられてるんだな。でもその割に首筋に虫刺さ
れ。それにその緩んだ頬は、何?
「暑ィ…窓開けるぞー」
「一寸待って。下だけ穿かせてよ」
「タオル巻いとけば良いじゃん。どうせ又なんだし」
言葉通りに腰にタオルを巻いたヒロが窓際の椅子に寄り
かかる。夜だからまだ良いけどさ。多分あの痕の数は昼間
じゃ誤魔化し利かないよね。
「ん?カズミ、見とれてる?」
「じょおっだん!」
言い返してカゲリを弄って遊ぶ。あ、体が緊張してきて
る。
「タンマ」
「バテた?」
「んー…この際挑戦してみようかと」
「何を」
「それを、ここに」
右手で《僕》を握って左手で自分の口を指す…そう言え
ばまだだっけ。
「抵抗あるでしょ?まだ」
「まぁな」
「じゃ、止めとこうよ」
「そっか?」
「そんじゃ提案」
「んだよ、おジャマ虫」
「うっせーよ。割込み野郎。でさ、カズミがまず俺を突
き上げるのよ」
「で?」
「で、イきそうになったら俺とカゲリがキスすんの」
「何処が解決策なんだよ」
「俺って吹流しみたいに言われてじゃん。だから俺の中
素通りしてカズミのアレがカゲリの口ん中に…って」
「ヒロ」
「んだよ?」
「お前、馬鹿だろ?」
「今頃なに言ってやがる」
で、一瞬の間の後三人とも布団を噛む。そうでもしない
とこの時間帯だから近所迷惑になるしね。
「…ヒロ」
「…んだよ」
「サンキュ」
「照れ臭いから止めれ。幸い俺の相棒は気持ちさえ動か
ないなら大丈夫だと言う奴だし」
「じゃ、言葉に甘えっかな」
「マジかよ」
「俺とお前が数字の形。で、カズミが俺の後ろ」
「練習台かっての…噛むなよ?」
「お前こそ」
『離れる練習?』
『…判ってたんだ?』
『なんとなくそう思った』
『役者の勘?敵わないな』
『別に、甘え過ぎてるとは見えないけど?』
『ん…でもさ』
『ん?』
『二十歳過ぎても平気で子供の日のお祝いってのも、
少しね』
『重たくなったんじゃない、か』
『あの人達に重みはかけたくないんだ、これ以上』
軽く笑う、蓉。
『君らしいな。じゃ、付き合うか』
『ゴメン』
『その代り』
抱きつかれて、耳を噛まれる。
『…精一杯仕事させて貰います』
『当然』
来年の五月は、彼等と過ごすんだろうか。
それとも…。 (2003.4.21)