半熟関係

 一頻り萌えて、一眠りしようとした時の
不意のお声掛りだった。
 「火村、」
 「どした?」
 「朝飯の卵、ポーチドエッグ、してくれ
へんか?目玉もスクランブルも、飽きた」
 ………あのな…。
 反論しようと俺が我に帰ると、お姫様は
既に眠りに落ちた後。実力行使で目覚めさ
せる事も考えるが…流石に体力面を考える
と共倒れになりそうで止める。

 大体、ポーチドエッグといっても何の事
は無い。手っ取り早く言えば半熟のゆで卵
だ。とは言っても、一般のゆで卵と若干製
法が異なる。
 ポーチドエッグは、殻無しで茹でるのだ。
 昔こいつに読まされたクリスティの「バ
ートラム・ホテルにて」の朝食の描写を思
い出す。確かにあの場面に描かれたポーチ
ドエッグの描写には、俺も腹を空かせたも
のだ。
 その後、機会がある毎にポーチドエッグ
をメニューに探すのだが…巡り合せが悪い
のか、中々お目に掛からない。勿論自身で
もトライしたが…失敗続きだった。
 言ってみれば天麩羅を揚げる様な感じに
なってしまい…中々上手く丸まらないのだ。
 さて…如何したものか?

 あふ。
 よお寝たな。…あ、珈琲の匂い。朝飯造
ってくれてるんやな。
 ちいと意地悪やったかな。ポ−チドエッ
グ作ってくれ、なんて。別に半熟の卵やっ
たら、茹で卵でも良かったんやけど…。多
分、ダリの繭の反動やな。なんしか、閉じ
こもったもんは見たなかってん。
 それに、ネタが詰まった時に読む「バー
トラム・ホテルにて」のあの朝飯の美味そ
うな様子……反則やで。あないに美味そう
に描くの。
 でも、自分でやっても多分上手く出来へ
んし、其れやったら腹も立つから。
 せやったら、火村に造って貰った方がえ
えやん?愛の力(笑)でまだ喰う自信ある
しや。

 さて、その朝の食卓に並んだのは…。
 「………」
 「笑うんだったらさっさと笑え!これで
も必死なんだぞ?」
 「…いや…健闘してくれたんがものごっ
つう嬉しいねんけど…そ…その格好!」
 「仕様がねえだろ?どうせ汗だくになり
そうだったんだから」
 「これからもう一寝入りいうんもええか
知れんな。手間省けるし」
 「……言ってろ、………馬鹿」
 最後の声は消え入りそうに真っ赤だ。
 「卵は、とりあえずこれで勘弁な」
 「ええよ。お前が工夫してくれたんやし。
…何や、俺等みたいやな」
 「どんな所が?」
 「固まっとる様で、固まっとらんとこ。
飯の後、どっちする?」
 「上、行きたいんだろ?お相手仕ろう」
 計量カップを仮初の型にしたポーチドエ
ッグを前に、素肌にエプロンだけを纏った
助教授は、不適に作家に笑いかけた。
《コメント》
やでやで、どうにか纏まった(冷汗)
「完本・ダリの繭」を読んだ余韻で書い
て見ました。スクランブルと目玉焼き
しか出て来なかったので、少し趣味を
入れまして(笑)
裸エプロンは…指先が勝手に…(爆)

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