点灯夫

                    俺の中で、声がする。
                    知らない声ではない。聞き覚えのある、所か
                   契約をして、既に此岸から立ち去った奴の声だ。
                    でも、未練の理由が判っているだけに、変に
                   邪険に出来ない。第一その未練の元凶が、知っ
                   てか知らずか涼しい顔して今日も俺の部屋に我
                   が物顔で陣取っている。
                    「ゼーロイチ!」
                    「あん?」
                    「…変な顔!」
                    「悪かったな。お前みたいに顔のすり替えは
                   出来ねーしな」
                    「何時にも増して突っかかるね。テーグちゃ
                   んと喧嘩でもした?」
                    「判ってて茶化してんなら問答無用に叩き出
                   すぞ?」
                    …ホント、お前も趣味悪いよな?ゆた。
                    こんな奴好きになるのって、俺か座木の様な
                   奇特な性格だけだと思ってたのに……物好きだ
                   よな。ったく。

                    ほっとけよな、桜庭!
                    仕方ないじゃん。好きになっちまったもんは
                   さ。
                    桜庭零一の意識の中で双海由高の意識は胡座
                   をかいて開き直る。結局あのままあっさり昇天
                   したのかと思ったら、どうも未練があったらし
                   く、気が付くとこの束の間の同居人兼契約執行
                   人の「中」にいた。
                    で、お互い考えるのが面倒だから「同居」し
                   ている。まあ、こんな経験は滅多に出来ないだ
                   ろうし(する機会も無いし)、未練の原因であ
                   る片思いの相手をよく知る機会でもあるし。
                    深山木秋、か。知れば知るほど厄介な奴だと
                   思う。第一妖怪だし。まあ、現在憑依霊の俺が
                   言えた義理じゃないけど?
                    多分秋は俺に気付いてるだろうな。
                    気付いてて…俺から口を割るのを待ってる。
                    根競べだな。もしも負けたら思い切り大声で
                   言ってやろう。
                    「ああ好きだよ!だから遣らせろ!!」
                    ……我ながら随分即物的だよなぁ。でも此れ
                   くらいのオプション、いいよな?桜庭。

                    ……もてて良い気持ちになるのって、どれ位
                   振りかな。極めて理想的な好かれ方だよね。
                    んー…リベザルはまあ、恋愛の相手が別に居
                   るから家族で十分!
                    座木は…種族的な先天性もあるし、つい子育
                   てに理想を求めてしまったのも或るしな…決し
                   て誤算じゃないけど。
                    ゼロイチにしたって、最初お互い遊びで割り
                   切ってたのがつい、って奴。嫌いじゃないけど。
                    でも、ゆたに好かれるのは予想してなかった
                   な。今までのパターンなら精々悪友止まりの筈
                   なんだけど。
                    応えてあげるのはとても楽なんだよね。ゼロ
                   イチの体暫く借りてもいいし、お望みとあらば
                   束の間の身体を造っても良い。
                    でも、嫌だ。
                    僕とゆたが関係するって事は、一つ危険性を
                   含んでるから。
                    そう、ゆたの未練が消える事。それでゆたが
                   消えちゃったら、一寸キツイしね。
                    だから、気付いてあげない。

                    三人三様の思惑を浮かべて、安アパートの一
                   夜は暮れる…。



                   《コメント》
                    正直ネタばれですんで割愛します^^;
                                     出来れば「薬屋」シリーズ3冊目(第2巻)を
                    読んでからこちらを観て頂ければ…。
                    片思いのもどかしさを描いてみました。
                    原案時点では最後までイってたんですが
                    …其れは、又何れ…。

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