R or B「あれ?リベ君少し背が伸びた?」 「成長期なんです」 小さな嘘。多分貴方も好きだから。 「多分ワタシなんて、さっさと追い越しちゃうわね」 多分、そうなってしまう筈。其の時が…今から怖い。 「今日は!あ、総和さん来てたんだ」 「今日は、柚之助君。あ、君も背が伸びてる!」 何気無い会話。でも、其の裏の感情の波、俺には判っ てしまう。 自分がこんなにずるい存在だなんて、思わなかった。 きっと、初めての感情。こんなにまで人を好きになった 事は無かった。師匠や兄貴に対する独占欲とは、又違う 独占欲。 長い眼から言えば柚之助。でも、きっと本心が欲しが ってるのは総和さん。嫌だな、こんな俺。 「ボクじゃ、納得できない?」 この間、柚之助から不意に訊かれた。一頻り、戯れた 後で。俺達だって伊達に長く生きて来た訳じゃない。こ の行為が何を意味するかってのは判ってる。只、変化し ないと一緒に気持ち良くなれないし、変化したからと言 って其の体が感じなきゃ、意味が無い。 「そんなんじゃないよ。柚之助とは気持ち良いよ、と ても」 集中してない俺が悪いの。それだけ。 「これでどう?」 柚之助が更に変化したのは…寄りによって総和さん。 ほてっ。 誘われる様に、胸板に頭を預けてしまう。理性じゃ柚 之助って判ってる筈なのに、柚之助に対して悪いって、 思ってるのに。 「短くて後60年、か。待てるよ、ボク」 其の優しさが、物凄く辛い。 二人を会わせたのは俺。其の時は、この感情に気付い てなかった。気付いてたら、多分会わせなかった。 「柚之助」 「ん」 「俺が総和さん選んじゃったら、どうするの?」 「泣くよ。思い切り」 「それだけ?」 「それで総和さん殺したら、リベが泣く。それは嫌だ から」 本当に、俺ってずるい。 総和が神社の境内に呼び出されたのは其の晩。呼び出 し人は柚之助。用件は、多分リベの事。 「御免ね、遅くなって」 「此方こそ、ゴメンナサイ」 優しく微笑みながら、首筋に触れる。 「え?」 「虫刺され。もっと気をつけなきゃ駄目よ。若いのに」 「…知ってたの?」 「気付いてた」 軽く、苦笑い。 「若さには勝てないわね…正確な言い回しじゃないか」 「知ってるんだ?」 「はっきりとは知らないわ。でも、環境が環境だった しね」 言うべき言葉を捜して、二人とも無言になる。 「リベは、良いよ」 口を開いたのは総和。 「でも、恭二はやらない」 「…御免」 「そう言う筋じゃねーだろ?青少年」 くしゃくしゃっと、黒髪を掻き回す。 「リベが幸せなら、それで良いさ」 「後一つお願い、いいですか?」 「出来る事なら」 「恭二と、一夜過ごして下さい」 「……平気なのか?お前」 「総和さんと同じ。ボクも、幸せなリベが良い。でも 恭二も彼だから、不幸せじゃいけない」 ふぅ。 溜息が一つ洩れる。 「背が伸びた、だけじゃないな。本当に成長したか。 我が身が恥ずかしいな」 其の翌朝、総和は帰っていった。恭二の心に思い出を 残して。 「懐かしいな」 「いい人、だったな」 「あの人のお陰で、今の俺が居る。ユノを好きな、俺 が居る」 「コラ、からかうな」 100年経っても、色褪せない赤い色…。 《コメント》 かなり淡々と書いてみました。 濡れ場無しと言うのは久し振りのような気が …でもBL風味。雰囲気で味わって下さい。 もう少し文章が在った方が良いかな? |