君は本当にいつも突発的
sweet sweet!
「ねー左」
「・・・・なんだい」
嫌な予感はした。
だって彼が僕の名前を呼ぶときなんて、滅多に無い上に
大抵碌なことが起こらないからだ。
「甘いものが食べたい」
「そう」
軽くあしらえばむっと膨れ、近くにあったCDケースの角で頭を殴られる。
・・・・・痛い
「・・・痛いんだけど」
「ケーキ食べたい」
「僕の話聞いてるかい?」
「ケーキ、食べたいんだけど」
こうなった彼を誰も止められない。
いや、宇童君なら止められるだろうけど(でもそんなことさせない)。
やれやれ、と溜息をついて立ち上がるとミツルくんは目を輝かせて
シュクルのフルーツケーキで!と言った。
何だか癪なのでミツルくんのぐいっと腕を引っ張り立たせて無理矢理キスをしてやる
「っん、ぅ」
「帰ってきたらもっと報酬、貰うから」
「は?何言って・・・」
「ほう・・・僕を使うのに無奉仕ですか」
「・・・・・気が向いたら」
小さく舌打ちをする君でさえ愛しく思えてしまう僕はもう末期だろうか。
財布をズボンのポケットに仕舞い、ミツル君の額にキスを落としてやると
ちょっと眉根を顰めていたけど、それは見なかったことにして家を出る。
日の落ちが早くなり始め、まだ夕方の4時だと言うのに空はオレンジ色に染まっていた
駅前にあるケーキ屋は僕ここからそう遠くはなく、歩いて15分程度である。
待たせるのは悪いかな、と思いつつも僕は歩みを進めた。
最近良く歩くようになった。
学校もあるし、バトルの時以外履くつもりはなかったのだが、
ミツルくんがデコチャリを壊されたのと元々歩くのが好きな彼に合わせて僕も歩くようになった。
空を飛ぶのは夜だけで、彼が傍に居る時だけで良い。
そう思うようになったのはいつからだろうか
先日偶然(なのか?)出会ったシムカに
「左くん丸くなったねぇ、別人みたい!」
と言われたのだが褒め言葉として受け取っておく事にした。
”丸くなった”自覚はあった。誰かのために何かをするなんて、前の僕には考えられなかった事だ
彼を、慈しむという気持ちでさえも以前の僕には持ち合わせていなかったもの。
これらは彼と出会って得たものであり、僕の何にも替えがたいものとなっている
そうこうしているうちに駅前に到着。
正直大の男がケーキ屋に入るのには少し気が引けるというものだ(それも一人で・だ)
さっさと買い物を済ませようと頼まれた彼の好物、フルーツケーキを頼む。
・・・・・ホールで。
ああ見えてよく食べるミツルくんは大概のケーキならば丸々彼の胃袋に納まってしまう。
以前カットされたものを3つ程買って帰ったら怒られてしまった。
足りない、と(でも結局食べていた)(その後コンビニでプリンとゼリーを買わされた。しかも5個)
どれだけ食べても太らない彼の胃袋はどうなっているのだろうかといつも思う
宇宙なのだろうか・・・・・本気でそう思うのだから馬鹿にしないでくれ。
少しすると店員がお待たせしました、と声をかけケーキを持って来たので会計を済ませ店を後にする。
すると携帯から着信音が鳴り響き、一通のメールが届いた。
『早く帰って来てよ』
たったその一言が僕を一喜一憂させるなんて君はまだ知らなくて良い
嬉しさに思わず緩んだ顔を軽く叩いて僕はケーキを崩さないように、足早に家へ向かった
夕日は、沈みかけていた
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20041021
なんじゃこりゃ。うちの左、ミツルを溺愛しすぎだろ・・・!!キモイ!(オイ
大食いミツル。胃下垂ボーイ。何
シュクル、実在します。知り合いのお店なんですが。笑