宇童さんはいつも突然モノを言う。
hands....
「手は何のためにあると思う」
宇童さんの目は僕のほうを見ておらず、手許の雑誌に落とされていた。
ぱらり、と宇童さんの手がページを捲る。
「・・・はい?」
「だから手、だ」
宇童さんはいつも突発的なので僕の脳はなかなか反応を返すことが出来ない。
数分してようやく答えの浮かんだミツルが口を開いた。
「えっと・・・普通に物を掴んだり、書いたり・・・生きるためには必要ですよね」
すると宇童さんはちらりと僕を見た。
違う
彼が求めているのはこんな答ではない
最もな返答をしてしまった自分が情けなく、悔しかった。
足りない脳をフル回転させて考えるとひとつの事が浮かび上がる。
「あと・・・」
「・・・・・あと?」
じっとこっちを見る
「あなたに、さわるためにあると思います」
「・・・・そうか」
こっちを見ていた宇童さんが再び雑誌に目を落とす。
これも違うか・・・と小さく溜息をつこうとした瞬間
「俺もそう思う」
こっちを向いていなかったけど、ぽつりと言ったその言葉は充分すぎる程僕の心に響いた。
やけに胸が熱くてどうすればいいのかわからない。
「この手がなかったらお前に触れる事も出来ない」
宇童さんがこっちを見る。
その綺麗な瞳に吸い込まれそうで、時折怖くなる
その恐怖を打ち砕いてくれるのも宇童さんであるのも事実で。
雑誌を閉じて僕に近付いてくるのがやけにスローモーションに見える。
そして手と手をを重ねて優しく額に口付けてくれる。
この手があなたに触れるためにあるのなら、
どうか離れてしまわないようにずっとこのまま 時が止まってしまえば良いと思った。
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手フェチなもので・・・
20040908