透明な袋に入ったそれは色とりどりのジェリービーンズだった
甘すぎるそれは
いつもの如くパンチングマシーンのホルダーを塗り替えようとふらりと立ち寄ったゲーセンで涼に会った。
学校帰りなのだろう、涼は制服で友達数人と一緒に居て、僕に気付くと駆け寄ってきた。
「あれ、ミツル一人?宇童君は〜?」
「さぁ・・・約束してないから一人だよ」
「ふ〜ん・・・あ、そうだミツル、プリクラ撮ろうよ!」
「え、やだよ」
「良いから良いから!」
楽しそうに僕の背中を押しながら機械に押し込む。
無理矢理プリクラ台に連れ込まれ、開放されたのはそれから30分後のことだった。
つ・・・疲れた・・・!女の子は何であんなものが好きなのか僕には全く理解できない。
椅子に座って一休みしていると涼が歩み寄ってきて手の平くらいの大きさの何かを手渡してきた。
「?」
「付き合せちゃったお礼。さっきあそこの輸入雑貨店で買ったの」
渡されたものに目を向けると、透明な袋に入ったそれは色とりどりのジェリービーンズで
いいの?と見上げると、涼は優しく笑ってくれた。
その後涼と別れ、ジェリービーンズ片手に街を歩いていると突然携帯が鳴った。
誰だろう、と思ったがディスプレイも見ずに通話ボタンを押した
『もしもし』
『・・ミツルか?』
『う、宇童さんっ』
驚いた事に電話の主は何所に居るのかもわからない宇童さんからだった。
『今どこだ』
『いま・・駅の近くですけど』
『そこ、動くなよ』
『え?あっ』
動くな、と言って一方的に電話は切られてしまった。
ツーツーと無機質な音を立てている携帯電話と、立ち尽くす僕。
とりあえず通行人の邪魔にならないようにしなくてはと思い、ここから目と鼻の先にある公園へと移動した
ベンチに座り携帯電話とジェリービーンズを交互に見ていると頭の上から聞き慣れた声
「動くなと言っただろう」
「えっと・・・すいません」
「探したんだが」
「えっ、ご、ごめんなさい」
宇童さんはしょうがない、と小さく呟いて僕の隣りに座る。
珍しくA,Tははいていなかった。僕もだけど・・・走ってきてくれたみたいで、少しだけ息が乱れていた
「あの」
「なんだ?」
「どうしたんですか?急に」
「・・・・涼が」
「涼?」
「・・・・・いや、何でもない」
僕は何も聞かなかった。宇童さんが言いたくないならそれでも良い。
ただ、こうして会いに来てくれている事自体が僕にとって嬉しい事だから。
嬉しさにミツルは小さく微笑んだ。
「あ、宇童さん」
「ん?」
「これ、食べます?」
「ジェリービーンズか・・・」
「嫌いですか・・?」
「いや」
開封したジェリービーンズの袋に指を入れ取り出し口に含んだ。
毒々しいまでに色づいたそれを。
「食べないのか?」
「あ、食べます」
促され自分も口に入れると、甘い味が口いっぱいに広がり、
宇童さんの口の中も同じ感じなのかなぁ、とぼんやり考えていると
いきなり顎をつかまれて宇童さんの方を向かされる。
「ッ・・・」
びっくりした、宇童さんの顔が目の前にあるものだから
・・・・思わず一瞬だけ、息が止まった。
否、息を飲んだ。
「変なことを考えるな」
「かっ考えてませんよ!」
「嘘つけ」
何でだろう、この人に嘘がつけない
僕が嘘をつくのが下手なだけかもしれないけど
と、更に顔が近付きもう距離感がつかめない。くらくらする
ぎゅっと目を瞑ったら、瞼にそっとキスをされ宇童さんとの距離がまた少し遠くなった
しょんぼりしていると宇童さんは僕の腕を掴み立ち上がる
「・・・帰るまで我慢だ」
勿論顔をそらしてだったけど
とても嬉しくて、僕は笑顔で返事をした
「はい!」
ジェリービーンズを左手に、右手には、あなたの左手
--
え、え、何コレ・・・!!
何で宇童さん急いでやってきたかって涼ちんが連絡したんだよ、みちゅが一人でしょんぼりしてるよって。笑
↑のシーンも書きたかったけど長くなるから・・さ・・・続き物とか嫌じゃない。ねぇ?聞くな
20040905