珍しいことに宇童さんが家にやってきた。
それだけで驚くべき事なのに(普段は僕が宇童さんちに行くからね)
それに加えて、一人ではなかった。
小さい猫と
ピンポン
と軽快な音を立ててチャイムが鳴る。
どちら様、と扉を開ければ見慣れたあの人が立っていた。
・・・・・猫を抱いた姿で。
とりあえず家の中へあげて、ソファに座ってもらう。
「どうしたんですか、その猫」
「そこで・・・箱に入ってた」
まぁなんとなく予想はついていたが、
つまるところ宇童さんは僕の家に来る途中捨て猫を見つけたらしい。
箱を除いたが最後。あの愛らしい姿にやられてしまったのだろう。
ああ見えて動物好きだから(鳩は別として・だ)
動物愛護団体に訴えられそうなことをしている宇童さんだが、今はソファに座って猫とじゃれている。
「どうぞ」
コーヒーを入れたカップを宇童さんの前のテーブルに置き、
なぜかあったミルク皿にほんの少しだけ温めた牛乳を入れたものを床に置く。
「お前はこっち」
猫を抱き上げミルク皿の前に下ろす。
それを舐める姿はとても可愛くて、しゃがんだままちょいちょいと猫の頭を撫でてやった。
すると
「・・ミツル」
「はい?」
振り向けばひょい、と抱き上げられる。僕がさっき猫にしたみたいに・だ。
おろしてくれるのかと思いきや抱き上げたまま。
見た目からは想像できないほど力を持っている彼は軽々僕を持ち上げたまま言った。
「あまりそっちばかり構うな」
「・・・・・」
「・・・・・」
「え、だって宇童さんが連れてきたんじゃないですか」
それに可愛いしと付け足すと、すとん。と床におろされ口付けられる。
突然の事に驚きに目を見開くと後頭部を固定され深く、深くなる。
宇童さんの舌がまるで別の生き物のように蠢く。
ぴちゃ、と言う水音で現実に引き戻される。こみ上げてくる羞恥。
「ーッ・・・・//」
肩を押し唇を離す。
なんで
なんでそんな悲しそうな目をするんですか
「だめか?」
「だ、だめっていうか」
「なら、良いだろう」
抱きすくめられる、心地よい体温
こうされると、何でも許してしまえるような気さえする。
でも今は
「宇童さんだめです」
「何で」
「猫」
「・・・・・」
不機嫌そうな顔に変わる。猫のようだ、と小さく笑いミツルは思った
「こいつどうするんですか?うちマンションですけど」
「・・・飼えばいい」
「だからうちは」
「二人で飼おう。バレなきゃいい」
バレなきゃいいってこの人何言ってるのかわかっているのだろうか。
・・・ん?ちょっと待て。二人で飼おうって・・・・
「・・・宇童さんうちに居るんですか?」
「だめか?」
「いいえ、全然」
この小さな猫と大きな猫を飼いならすのは先になるんだろう。
とりあえず、大きな猫の機嫌を損ねないようにしなくちゃ。
そうして、僕と宇童さんの二人プラス一匹暮らしは始まった。
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うちのアキラ氏はよく嫉妬します。何に対しても。そんで強行手段でちゅーとかしちゃう。
続くような続かないような。一応単発モノとして・・・・
20040902