情けないけれど、この手が離れてしまうことを恐れていた。
どうか、どうか
二人きりの時、宇童さんは必ず僕の手を握ってくれる。
勿論皆に内緒の事ではあるけれども。
今もそう
何を言う訳でもなく、ただそっと優しく握ってくれている。
「宇童さん」
「何だ?」
夜の街、
ビルの屋上で月に背を向けてこっちを向いた宇童さんは
とても綺麗で思わず見とれてしまったほどだった。
「ミツル?」
「あっ・・・」
「どうかしたか?」
言えるはず無い、見とれていただなんて。
同性なのにこんなことを思っているだなんて笑われるかもしれない
けれど僕は、宇童さんのことをとても綺麗だと思っている。
「・・・宇童さんは何でこうしてくれるんですか・・?」
「・・これか?」
宇童さんは繋いだ手を一度だけ見、少しだけ力を込めて微笑みかけた。
思わず照れて目を逸らそうとすると、あいた片方の手で
宇童さんが俺のほっぺたにそっと、触れた。
「ぇ・・・」
「こっち見ろ、ミツル」
ゆっくり宇童さんを見ると、それは真直ぐな目をしていて
とてもじゃないけどそらすことが出来なかった。
どれくらい経っただろう。1分、もしかしたら1秒かもしれない。
動きの止まった僕を宇童さんが・・・・抱きしめていた。
「好きだ、ミツル」
「宇童さん・・・」
「好きじゃなかったら抱きしめたりも、手を握ったりもしない」
それを聞いて僕は宇童さんの背中を、体にきつく抱きついた。
なぜって、僕も宇童さんが好きだから。
もう不安になることは、ない。
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ナーバスミツル。死亡
20040902