ウサギなんて飼わねぇよ、夏
〜序章〜





それは父1人、兄弟2人仲睦まじく暮す家族の感動大作秘話である。

多分。





とあるごく平凡な住宅街に、とかく奥様方に話題騒然のお家がある。

妙なウワサは全て笑顔が解決っ!怒鳴りこんできたはずのアナタを優しく包んで癒してくれるスイートハウスv

それが石川家である



今まさに住人のひとりが帰ってきたようだ。

手馴れた手つきで暗証番号を打ち込む姿はまるでホストさながら(スーツ萌v)

…昼下がりの住宅街にはあまり似つかわしくはないが、彼こそが奥様方のアイドルであり、ついでにこの家の大黒柱タケオである



「ただいま〜。あれ、コータは?」

父タケオが帰るなりそう言ったのには理由がある。

弟コータは寝るか、火遊びか、カツアゲか…ともかくまだまだやんちゃ盛りで、いやに可愛いのが余計にタチが悪く目が離せないお年頃であった。

でもって今、凄〜〜く面倒臭そうにタケオを振り返ったのが兄のキリト。

彼もまた違った意味でやんちゃであり、家事に疲れた主婦の良き刺激となっている。

(母親はとっくの昔に家を出たらしい)


「あぁタケオか。安心しろ、俺の教育のおかげで薬だけはやってないから。」

「…そういう問題じゃない気がすんだけどね。」

まぁいっか〜と呟くタケオも、兄キリトもとにかくコータには甘かった

おかげで良く言えば伸びやかにすくすく育っていくコータ

それでいいのか石川家!


ま、まぁいっか石川家!



「コータのことだから、また捨て猫にでも捕まってんじゃないのか?」

「そだね、こないだキリトが追い出しちゃって泣きそうだったし」

「あぁ、そんなこともあったな」

さり気なく放たれたタケオの嫌味をキリトもまたさり気なく流す

動物好きのタケオはいいかもしれないが、キリトにとっては動物と暮すなど苦痛以外の何物でもない。

それがいくら可愛いコータの頼みでも、そこだけは譲れないのだ…が

前にコータが拾ってきた猫を夜中にこっそり追い出した為に、一週間ほど弟の機嫌を取るべく奔走したキリトがいたこともまた事実である(弱っ)

今度もまた動物を連れてのご帰宅だったらどうしようか

飼うなんて言語道断

…しかし上手くコータの機嫌を損ねることなく諦めさせられるのだろうか…

キリトは重い溜息を落とした

「何、お兄ちゃん疲れてんの〜?…年?」

「…お前にだけは言われたくない」

まぁ微笑ましい親子喧嘩の始まりかと思いきや、そろそろ弟も登場させないと作者が話の流れを忘れそうなので(寄る歳には勝てませんよ、ふっ)

コータくんご帰宅★



「ただいま〜!お兄いる?」

「おう」

「あ、あの…頼みがあって…タケオくんはいいって言うと思うんだけど〜お兄はさぁ苦手かなって」

「なんだ、猫だったらもう…」

「ん〜ん。じゃ〜んっ捨てウサギ!」

「「!!?」」

ウサギが捨ててあるとは、なんとも珍妙な…流石こんな家族が住んでいる街だけはある

まぁワニが下水道にいたりする時代だから珍しくもないといえばそうなのだが



しかしこれは…



「こ、コータ、それヒトだぞ!」

そう、このウサギ、ふさふさの耳も尻尾も付いてはいるのだがその身体つきといったら完全に『成人男性そのもの』。

服も髪も凄い派手だし…いや、別に服が地味だからウサギって認めるとかそういうことではないけども…

ってかお前、人間だろ。

何様のつもりだてめぇとばかりに睨みをきかせる兄に気付いてか、コータはウサギをかばい始めた

「え〜〜だって耳も付いてるし、尻尾だってあるし…それにさっきウサギの真似ならまかせてって言ってたよ」

「真似ってそれニセモンじゃね−か!!」

「違うよ!ウサギよりウサギらしいって言ってたもん!それに曲芸だってできるんだよ?な?アイジ」

「うんっ。アイジ歌いま〜っす♪」


あ、今しゃべった

ウサギしゃべったよ

へ〜最近のウサギはしゃべったり踊ったりすんだな…しかしこの歌…歌?…いつまで続くんだ(苦)



「ほら、ギター弾けるウサギなんて滅多にいないって…歌は…その、ちょっと苦手みたいだけど」

「ちょっと、なぁ…ってそこじゃなくって!」

もうツッコミ所が多すぎてどうしたらいいもんか…いろんな意味でキリトが頭を抱えたその時


「まぁ、飼ってもいいんじゃない?」

「タケオ!?お前なに言って…」

「コータ、ちゃんと面倒見れるよな?」

「うん!(ヒマな時)ちゃんとやるよ」

や〜ウサギって可愛いね、アイジよろしくな〜、なんて言っている父は明らかに楽しんでいた


…そうだ、俺以上にコータには甘いこいつに何か期待すること自体間違いだった。

こいつの子どもとして産まれたこと自体が不幸の始まりだったんだ

…母さん、帰ってきて(涙)



もうなんか自棄になってきたキリトだったが一つ気になることがあった
(いや、ホントは一つなんてもんじゃないが)

「…あのさ、そのデカイ図体のウサギを一体ドコで飼うつもりなんだ?」



今更何をといった顔で振り返る2名

あぁ、嫌な予感。


「お兄の部屋じゃないの?」

「そおだよ、一番広いんだし。リビングなんかで寝せたらかわいそうだろ?」

「可哀想なのは俺だっ!!!今すぐその、う、ウサギ(?)をつまみ出せっ!!」

「なんでっ!お兄はかわいそうだと思わないの!?」

いや、なんでって…

って、ウサギ何引っ張ってんだよ。んなことしても俺の決意は固…


きらきらきら…


見つめんなーー!

「ほら、アイジもキリトに飼ってもらいたいみたいだし」

「お兄ばっかし懐かれていいな〜」



「いいことあるかぁぁーーっ!!」



その夜、キリトの部屋はすったもんだのひっちゃかめっちゃかだったそうな(適当)







…序章です。続きます。
ごめん、ね?(イロイロ)

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