※これは裏で公開する予定のThe young pastの番外編です。
まぁ、あらすじは関係ないので適当に…。
俺は、おのせじゅん。5歳。
おねーちゃんとおかーさんとおとーさんの4人暮らし。
いつも、仲良しのりゅーとゆーねとしんやの3人とここの公園で遊んでる。
おねーちゃんが汚いって言ってた少し錆びた鉄棒でぐるぐる回って遊ぶと、
手に一杯こげ茶色の鼻が痛くなるような鉄の匂いがする。
りゅーとゆーねがその匂いは嫌いだって言ってた。
ゆーねのおかーさんとおとーさんはオーケストラっていう
音楽をする人がいっぱい集まってるところで働いていて、ゆーねもバイオリンってのが弾けるらしい。
りゅーはいつもゆーねにべったりしてる。
しんやは俺たちと遊ぶ約束をしてても、祭の日になると約束をほったらかして
お神輿を見に行く。
俺はサッカーが好きだ。だから、大きくなったらサッカー選手になってオリンピックで優勝するんだ。
そしていっぱいいっぱいお金を貯めて、大きな家を買って可愛いお嫁さんと仲良くそこで暮らすんだ。
ゆーねに、このことをいうと、お前は馬鹿だなぁ。て言われた。
ゆーねは、りゅーと結婚するらしい。男なのに?
男同士でも結婚できる時代らしー。
いつものように公園の山滑り台で遊んでいると
ブランコのあるところからギーギーっと鉄と鉄が摩れる音がした。
りゅーがゆーねの腕をギュッと握り締める。
俺がブランコの方を見ると、しんやが
「ブランコに誰かいる」
と言った。
「誰?」
「わかんない」
「男だったら仲間だな」
滑り台をスーッとおりて、ブランコの方へ駆け寄ると
俺は持っていたサッカーボールを地面に落とした。
だって、今まで見たことないぐらいのすっごく可愛い女の子が
ブランコにぽつんと座っていたから。
おっきい瞳に涙をいっぱい溜めて、頭を叩くと
ビー玉ぐらい大きい涙がぽろっと出てきそうだった。
肌もすっごく白くて、睫毛もすっごく長くて、まるで人形みたいで
まじまじとその女の子を見つめてしまった。
「おい。」
「…っぐ…・」
「何で泣いてんだよ」
「う…だって、ママが皆と遊べっていうんだもん…」
「お前、あんまり見ない顔だけど」
「昨日引っ越してきたばっかだもん…」
「おかーさんは?」
「お家…おいていかれちゃったの。夕方になったらお迎えに来てくれるの」
「そっかぁ」
ブランコの鎖をぎゅーっと小さい手で握り締めてて、
口をぎゅっと結んでいる姿が可愛らしくて、ついつい隣のブランコに座ってしまった。
「じゃあ、俺たちと一緒に遊ぼうぜ」
「ぇ…いいの?」
「当たり前だろ!サッカーしようぜ」
「サッカー?」
「お前、サッカー知らないの?」
「ぅん…」
「じゃあ、俺が教えてやるよ!」
「ほんとぉ?」
パーっとその子の顔が笑顔になって、まるで絵本に出てくる花の妖精みたいだった。
ぎゅーってしたくなるほどすっごく可愛い。
「俺、おのせじゅん。お前は?」
「俺はねー、いのうえしのぶってゆーの。」
「お、俺ぇ?」
「うん。だって俺、男の子だもん」
「えええええええええええええ!!!」
つい大きい声を出すと、しのぶは俺のところへ来て
俺の手をぎゅっと握り締めると
「行こうよ」
といった。
うん。やっぱり凄く可愛い。
これが、ゆーねがりゅーのこと好きっていってた気持ちなのかなぁ。
ちょっと胸の辺りがドキドキする。
しのぶは俺のサッカーボールの周りをくるくる回りながら、ボールを追っかける。
無意識なんだろうけど、その仕草がすっごく可愛い。
「違うって、ここはさこうやって右足を少しだけ開いて内側のかかとで蹴るんだよ」
「わかんなぁい。。。」
「ほら、こうやんだよ」
しのぶの右足を少しだけ開ける。
ちょっとだけ触れた足はすべすべしてて、やっぱりすごく白い。
ところどころ泥が跳ねていて、それが白さを強調する。
「わーい。じゅんみたいにかっこよくなったかな」
「ばぁか。俺の方がカッコいいに決まってんだろ」
「うん。じゅんかっこいいよー」
「え…」
砂場でゆーねとりゅーとしんやが山を作ってる。
今、空き地で二人きりになった俺としのぶ。
生まれて初めて、カッコいいと言われて多分俺の顔は赤くなってる。
俺が呆気にとられていると、しのぶは俺の顔をまじまじと覗き込んで
「大きくなったらじゅんのお嫁さんになってあげる」
「は?」
「ママがねー、大きくなったら好きな人と結婚しなさいね。て言ってたの」
「で、でも俺とお前は男だしよ…嬉しいけど結婚できないっつーか…」
「俺じゃ、じゅんのお嫁さんになっちゃダメなの?」
「そうじゃなくってよぉ」
一歩ずつ、しのぶが俺に近づいてくる。
その度に心臓がドクンドクンと波打つ。
あー。多分俺ってしのぶのこと好きなのかも。やべー。
「俺、じゅんのこと好きだよぉ?」
「お、俺だって」
「?」
「し、しのぶのこと好きだし!!!」
サッカーボールが空き地のバックフェンスに当たる。
俺、明日おねーちゃんにやらしーって言われるかも。
ていうか、俺ってすげぇ変なのかも。
しのぶのことすっごく好きになっちゃった。
「じゅん、顔真っ赤」
「当たり前だろ!恥ずかしいし」
「じゃあさ、もっと恥ずかしいことしよっか?」
そういうとしのぶが目を瞑って、口を押し出してきた。
目をギュッと瞑ってて、頬がピンクに染まっている。
「お、おい!お、お前キスするの初めてだろ!」
「はやくしてよぉ」
「はやくしてよじゃないだろ!き、キスとかよ…」
「じゅん、初めてなの?」
「な!んなわけねーだろ」
「じゃあ、してよぉ。俺、初めてなんだから」
「だーかーらー。そういう意味じゃなくってよぉ」
「どぉいう意味?」
「は、初めてキスする奴が俺でいーのかよっ。」
「だって、じゅんは俺を幸せにしてくれるんでしょ?」
「な、何勝手に決め付けてんだよ!」
「じゅんと結婚しちゃだめなのぉ?」
「いや、そうじゃなくってよぉ」
また、しのぶの瞳が涙で潤んできた。
男のくせに泣き虫だなー。
でも、しのぶの唇をじっと見てるとしっとりしてて弾力がありそーだ。
キスしたら気持ちーだろーなぁ。
「じゃ、目瞑れよ」
「ぇ!?」
「キスしてやるから、目瞑れっての」
「ほんとぉ?」
「いちいち聞くなって!恥ずかしいだろ」
俺がしのぶの肩に手を置くと、しのぶはそっと目を閉じて
前より頬をピンクに染めて可愛らしかった。
段々しのぶの顔に自分の顔を近づける。
あ、なんだか花みたいな香りがする。すごい甘いイイ香り。
口の先を少しだけしのぶの唇に触れると、俺はスグに離した。
ちょっとだけ目を開けると、しのぶはまだ目を瞑ってて少し泣いてるみたいだった。
「ご、ごめん!」
「え?」
「だ、だって泣いてるから」
「ぇ…。あ、違うよこれは。」
「へ?」
「多分、じゅんとキスできて嬉しくて泣いてるんだと思うよ」
しのぶがそういった後、砂場から俺たちを呼ぶ声がして走った。
そのあと、砂場でお城を作って日が落ちる頃になるとしのぶのおかーさんがしのぶを迎えに来て
俺たちはまた明日ここで遊ぶ約束をして解散した。
それから毎日、しのぶは俺の隣にいて
家に遊びに行ったりもするよーな仲にもなったし、
キスだってもう1回ぐらいはしたし、結婚の約束もした。
俺はしのぶが凄く大好きだった。
しのぶも俺のことが好きだと言ってくれた。
そう、幼い頃の俺はそう思ってた。
俺が今までで一番愛した彼。今はどこにいるのだろうか?
君が態と残したビー玉が俺の部屋の窓辺で、今も太陽の光に照らされている。
水色に光るそれは、あの頃の記憶。
ずっと一緒にいられると思っていた。
離れても、いつか戻ってきてくれると思っていた。
それが間違いだと気づいた今でさえ、俺の気持ちは変わらない。
俺は、今もあの場所で君を待ってる。