優雅なる謀り 華麗なる争い
貴なる血痕の果てなき野心は

今 悠久の闇に眠る・・・

うたかた。

「スゲ―ってばよ!何、コレ―!」

  闇夜に煌く桜色。
  微量の風で雪の様に散った桜が辺り一面敷き詰められて桜の絨毯の様で。

「先生、『今日の任務終了後良いモノ見せてやる』って言ってたのコレだったの〜?!」

「ン、夜の方が空いてるし、夜桜の方が映えてスキなんだよね」

  任務後の7班とカカシは木の葉への帰路の途中、
  サクラは舞う桜の中を無邪気に弧描く様に走り回る。
  それに続く様にナルトも後を追う。

「サクラちゃんの髪の色と同じだってばよ」

「えへへっ、この時期に生まれたから私の名前、桜からとったんだってェ〜」

地面に敷き詰められた桜の花びらを手に取り、宙に投げ合っているナルトとサクラを見つめながら、
“もっと洒落た言葉、吐けないのかねェ・・・ま、所詮ナルトじゃぁな”ぼんやりそんな事を考えていたカカシだったが
サクラがキョロキョロと見渡す。

「あれ?サスケ君は?」




















「わぁ〜〜っ、兄さん凄い!」

  兄、イタチと手を繋ぎ夜桜の中を歩くサスケがいた。
  深邃に突き進んだ為、辺りには人がおらず閑散とした空気はまるで桜の散る音が聞こえてきそうな程であった。

  サスケは繋いだ手を解き、遠くまで淡紅色に染まった桜の絨毯の上を縦横無尽に駆け出す。
  舞い散る桜に見とれ、つい夢中になって駆け出した。
  我に返り、辺りを見回すと兄の姿が見えなかった。
  有るのは辺り一面、闇夜に浮かぶ桜。桜。
  サスケは得体の知れない不安に思わず身体をブルリと小さく震わせた。

「・・・・・・兄・・さん・・?」

  サスケは喉の奥で振り絞った声をやっとの事で出すが、シンとした闇夜に吸い取られサスケは
  景色に夢中になり思わず離してしまった兄の手の感触を今更恋しく想い、己の手を握り締めた。












「サスケ!」

  突然、イタチの手によって引き戻される。

「・・・あまり遠くへ行くな。父上と母上を見失う・・・」

  見上げた桜の中にいたイタチに、サスケはイタチが桜に飲み込まれてしまうのではないかと不安に襲われ、
  思わず力強く兄にしがみつく。

「 ・・・・・ どうした、サスケ?」



ヒラリ ヒラリ ヒラリ ヒラリ



「・・・サスケ。 桜は何故淡紅色か知っているか?」

「・・・・・ん〜・・?」

  突然の兄の質問に頭を傾げていると、イタチの手が伸びてきてサスケの頭に乗っていた桜の花びらをとる。
  それをマジマジと見つめるイタチ。



「桜の根のは人の屍体を養分にしている。屍体の血を・・・・・」

「え・・・・」

  イタチの言葉に狼狽するサスケ。


「人の血を吸って生きるからこそ、こんなに儚く美しい・・・・」

  再び風によって舞い上がる桜の花びらにサスケはギュッとイタチにしがみつく。


「 ・・・・・ みんな、痛くないの?」

  しがみついた小さなサスケの手は微かに震えていた。


















「「 ・・・・・・・・・・・・ 」」


  風がやみ一瞬桜の絨毯が凪いだ。









「 ― ・・・・・ サスケ ・・・・・ もしも、オレが壊れた時は ・・・・・ 」

  イタチが何か言いかけた時、再び凪いだ風が舞い上がった為サスケは最後まで聞き取れなかった。

「えっ、何? 何、兄さんッ」

  見上げた兄の顔はいつもの無表情な顔とは違い、どこかうら寂しげに感じた。
  再びそっと伸びた手は優しくサスケの頭を撫でると離れていった。



































































「 サスケッ!」









  桜吹雪の中、いきなり名前を呼ばれ強く腕を掴まれ我に返る。
  顔を上げると目の前にいたのは。











「 ・・・・・・・・ カカ・・・シ?」






「ハ〜ッ、ビックリした・・・・・サスケが桜吹雪に攫わちゃうかと思った。 何だったんだろうね、今のは。
・・・・・駄目デショ、いきなり居なくなったら。 ナルトもサクラも心配するデショ。」




  力強く掴まれた手首。






  あの時と同じ。









「アンタも心配、した?」

「ウン。そりゃ、担当の生徒だし。」  
(“うちは” サスケ だし。)


  カカシの返答に俯くサスケ。



「 ・・・・・・・ アンタは― ・・・・・・・・」

「ン?」


  笑顔で首を傾げるカカシの後ろにはやはりあの時と同じ桜がヒラヒラと舞い降りていて。







(アンタは消えたりしない?)










  闇夜の桜が再び攫いに来るのではないかと、顔を上げる。
  すると闇夜からぼんやりと黄色い温かみのあるモノが駆けて来る。






「あっ!いたってばよ!サクラちゃ〜ん!
サスケとカカシ先生、こっちにいたってばよ!!!」

  静寂の闇夜にけたたましいナルトの声が響きわたる。
  いつも騒がしくてウザッタイ声。
  だけど、この時ばかりはなぜかとても心強かった。






「え〜〜ッ、サスケ君居た-----っ!?」

  歓喜の声で駆けて来るサクラの声もこれまた安堵の声だった。



「サスケ!勝手に居なくなるなってばよ!皆心配したんだぞ!!」

  この時ばかりと、サスケに食って掛かる様に詰め寄る。

「くぉら〜ッ!!ナルトッ!サスケ君に何てこと言うのよッ!」

  女の鉄拳で思い切りナルトの頭を叩く。

  サクラの心中では、“内なるサクラ”が
  【一番に私が見つけてツーショットにこんなバッチグーなスチエーションになれたのにィ!!】
  と地団駄踏んでいた。



  突然騒がしくなった自分の身の回りにキョトンとしているサスケ。






「さ、風も出てきたし里に帰ろうか」

  全員集合したところで、カカシが声を掛けた。




「カカシ先生〜、帰りに一楽でラーメン食べて行くってばよ!」

「何言ってンのよ!美容に良くないから駄目ッ!」

  カカシとサスケの目の前を行くナルトとサクラはギャーギャーと相変わらずやり合っている。
  サスケは、背を向けた闇にチラリと振り返るが不思議と先程の不安感は無く、美しい薄紅色の桜が舞っていた。








「サスケ」

  立ち止まっていたサスケは前を向き直ると。

「ホラ、行くよ?」

  そう言って目の前に立っているカカシ。
  少し先でナルトとサクラが振り返り、サスケを待っていて。




「・・・・・・・っ!・・・・・・カカシッ」

  我に返ったサスケ、自分の手がずっとカカシに握られている事に気づいて
  どんな顔を向けて良いか解らなくなる。
  何故だか急に顔が熱い。


「 ・・・・・ ン? 何?」



「 ・・・・・・・・・・・ あ ・・、 ・・・・ いや、何でも・・無い」

  握られた手の温もりがとても心地良くてサスケはいつもだとありえない心中に駆られた。
  もう少しこのままで居たいと思う気持ちに、顔を赤らめながらもそのまま身を任せた。





「サスケ、早くするってばよ!」






「 ・・・ 五月蝿い、ウスラトンカチッ!」

  喚くナルトに“ケツキック”をかますサスケ。
  “やっちゃえ、サスケ君!” とガッツポーズを決め込むサクラ。
  “ハイハイ、程ほどにネ” とそんな7班生徒を尻目にイチャパラを読み始めるカカシ。


ヒラリ ヒラリ ヒラリ


  舞う夜桜が見送る中、4人は里のラーメン“一楽”へ向かうのだった。

+++ アトガキ +++

あ〜、解らん。解らんです、自分でも。(ォィ!)
アリガチな『桜の下には・・・』ネタ。
兄サスなのかカカサスなのか。
いや、サスケピンでしょう!(エ)
夜桜を前に忘れかけていた兄の記憶断片が蘇ったサスたんです。

これで最後も暗いオチだったらウカバレないなぁと思い
皆で仲良く帰りましょ!にしましたが、ワケ解らない話になっちゃいました。
ウギャ〜・・・ 反省・・・


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