タ ナ バ タ 祭

「へへ―っ、いいだろっ!」

アカデミーでの休憩時間、教室の男子集団の中から声が聞こえ、サスケは何気なく目をやる。


「これ、兄ちゃんから貰ったんだぜ―」
その生徒は自慢げに狐の暗部の面を高々ひけらかした。

「本物じゃないけどさ、俺が暗部になるの目指してたら兄ちゃんが作ってくれたんだ」
なんとも嬉しそうに顔をほころばせる。
「明日の七夕祭も一緒に行くんだ―!一緒に輪投げしたり、カキ氷食べたりするんだぜ―!」

嬉しそうに顔をほころばせる少年を離れた所から何処か羨望の眼差しで見ていたサスケ。


「なぁ〜に言ってンの、そんな事言ったらサスケ君のトコロのお兄ちゃん凄いんだから〜!
近いうち、暗部の試験受けるんだよね〜!」
山中 いの、はライバルの女生徒達に差をつける如く聞こえよがしに大きな声を出した為、
現実に引き戻される。


「すげぇ〜!暗部ゥ〜!?」
「お前の兄ちゃん、すげェんだな!」
「そういえば、先生がこの前言ってた!サスケの兄ちゃんは俺らン年で、ここ卒業したって!」

男子生徒は羨望の声、女生徒は歓喜の声が教室に響く。


“血継限界” “写輪眼”

これらの持つものの意味はまだ子供たちも解らないものの日頃のサスケの並外れた力、
忍のセンス、天性とおもわれる選ばれし者の貫禄を皆幼心に感じ取っていた。
「俺は・・・」
サスケは机の下の2つのこぶしを力強く握り締めた。





























七歳でアカデミーを首席で卒業
八歳には写輪眼が使えるようになった

それに十歳で中忍に昇格・・・・・・


それが うちはイタチ














「俺なんて、今兄さんが卒業した年と同じなのに 全然っ・・・・」
心の中で繰り返された言葉はいつしか口癖になり。

帰路の途中、七歳というまだ発育中の柔らかな小さな手を再びきつく握り締めた。



大好きで憧れの兄。
そんな兄の様になりたくて、そんな兄の背中を追い続けていた。

いつもアカデミーに残り、修業をするのが日常茶飯事のサスケだったがこの日ばかりは、
足早に家路に急いだ。
顔は少しはにかみ、口元が緩む。

自分の切願、首を縦に振ってくれるだろうか。
サスケは賢く強く美しく、そして優しい兄の居る家に早く辿り着きたくて躓く様に駆けて帰った。



























「兄さん」



玄関を開けると、出かけるのか丁度靴を履いているイタチがいた。


「兄さん・・・・・・明日、七夕祭があるんだけど、連れて行ってよ」

サスケは兄の前まで息を落ち着かせ来ると、しゃがんで顔色の見えない兄に問うた。
イタチは靴の紐を結いながら、静かに顔を上げた。

「・・・・・・俺は今宵任務で忙しい。父上にでも連れて行ってもらえば良いだろう?」


「だって父さんは町議会の人とずっと話し込んでいるだろうし、俺は兄さんと行きたいんだ」
服の裾を握ったり離したりしながら、珍しく駄々をこねてみるサスケであった。

普段は優しい兄も任務の時は気が立っているのか、少し苦笑いをするが実弟のサスケを前に
落ち着きを取り戻すし、口を緩ませため息を吐いた。
それを呆れ顔と見たのか、サスケは頬を膨らませる。

「兄さんはいつもそうやって、俺を厄介者扱いする!」

頬を膨らませていたサスケに、チョイチョイと“おいでおいで”をするイタチ。
兄の一寸手前まで駆けて来たサスケに

「許せ、サスケ ・・・・・・ また、今度だ」

そう言うと、“おいでおいで”をしていた人差し指と中指の二本の指でサスケのオデコを弾く。

結局、自分の薄い願いは叶わなかったとムスッと口をへの字にしたサスケに
目を伏せるイタチだったが、ふと顔を上げたイタチはいつもの任務前の
底の知れない深い目をしたイタチが立っていた。


「今日はお前に構っている暇が無い」

そう言うと踵を返し、出て行こうとする。

「いつもいつも 許せ サスケ”って額小突くばっかりで・・・それにいつも任務ばっかりじゃないか」




いつも聞き分けの良かったサスケはこの時ばかりは年相応の子の様に食いついたが、そんなサスケを
背にそのまま外に出て行ってしまい、玄関に独りとり残されたサスケは、ひょっとしたら再び
忘れたかの様に兄が戻ってきてくれるのではないかと、暫くその場に立ち尽くした。

だが訪れるのは暗闇で、サスケの希望は失望に変わった。





























七のつく日


縁日


花火の音


石畳


笛の音


太鼓


金魚すくい


綿菓子


喧騒


人々の笑顔


カランコロン鳴る下駄



お面 ―――







サスケは行き来する雑踏の中足を止め、立ち並んだ屋台のに下がっている暗部のお面を見つめていた。


「あれ?サスケッ」

その声に振り返ると、右手には綿菓子、左手には兄の手を握り締めた少年が立っていた。

「お前も来てたんだ! なぁなぁ、お前も兄ちゃんと来たのか?
兄ちゃん、凄いんだぜ!サスケの兄ちゃん今中忍で、今度暗部になるンだって!」

兄と手を繋ぎ、そしてまるで自分の事の様に得意げにイタチの事を語る少年に苛立ちを感じた。

「オォ、凄いな〜俺も頑張らなきゃな!」

「兄ちゃんなら大丈夫さ!」

頭を撫でられて微笑む少年と、そんな少年が可愛くてしょうがないといった少年の兄。

立派な兄弟愛 微笑ましい兄弟
だが、サスケには羨望の光景にしか映らなかった


「おい、サスケッ!何をやってる、行くぞッ!」
人ごみの中からチラリと遠目に姿が見えたは、サスケの父。
町議会の人々と長い挨拶が終わったのか、こっちを振り返り手招きをしている。



「うわっ!!」
「なんだよ、サスケっ!」
サスケは故意に手を繋いでいた兄弟の間を割って入るとふたりの手を引き剥がし父の元に駆け寄った。


「ん?なんだ、友達か?」
雑踏の中、振り返ってこちらを見ている兄弟に気づいた父はサスケを覗き込む。

「じゃぁ、ホラ、小遣いやるから遊んでろ。父さん、町議会の人達とちょっとここで飲んでるから」
遠くに行くなよ、と一言付け足すと“おでん”“熱燗”と書かれた屋台のテントの中に入っていく。

手に握られた冷たい小銭を一目し、とりあえず歩き出すが独りで回ってみても
どこの店にも入る気がしなかった。
「金なんか要らない・・・・・・‥欲しいのは・・・・・・・・」

サスケは言葉を呑み込むと、唇を噛んだ。




































「へェ〜、今日は七夕祭だったんデスねェ〜」

人ごみから少し高台にある神社の御手洗で手水をしていたイタチは今回の任務仲間の声に手を止める。
その手は返り血で真紅に染まっていた。




                
【お前の手は血で染まっている】




イタチは何度もごしごしと血に染まった手を洗った。


「今回の任務、なんでも新党の組織が関与していたとかで・・・」
「待て」
語っていた仲間に黙るように指示を出すイタチ。気配を消したふたり、スウッと闇に気配を紛らす。
そこには気恥ずかしそうに躊躇しながら何やら屋台で買物をしているサスケの姿があった。
嬉しそうに顔を綻ばせ、品物の暗部の面を受け取ると、そっと面を付けてみる。
















「なんだ、子供でしたか・・・」

「俺の弟だ」
「え?」

喧騒から離れ高台に歩いこようとする少年を前に、同期の仲間に返答する。


面を被ったサスケは僅かな気配に顔を上げた。

              「あ」








「・・・お前も独りなのか」

草陰から顔を出した猫はひと鳴きすると、サスケの傍に擦り寄ってきた。
サスケは高台の石段に座り、楽しく賑わう祭りを見ていた。

そしてお面だけ唯一買ったので、握り締めた手の中にはまだ沢山の小銭が小さい手の温もりで
温められていた。
特に使う要が無いのか、サスケはその小銭を懐にしまう。

擦り寄ってきた猫は、サスケが食べ物を持っていない事を悟ったのかいつの間にか姿を消していた。






「―― ・・・・・・ 家に帰ろう」

父親は何だかんだ言って町議会の人間と飲んで陽気に騒ぐ時間は長い。
去年もそうであった、とサスケは思い返す。
そして、去年も兄は任務に出向いてそんな父親と祭りに来ていた事まで、思い出した。

「・・・・・・・・・早く帰ろう」

ポツリと寂しそうに呟くと石段を二段抜かしで駆け下り、再び喧騒に身を投げ入れた。
相変わらず祭りは賑わっていて、サスケの小さな体は弾き飛ばされそうになる。

意地で必死に進むと曲がり角で大男とぶつかり、思い切り転がるように転んでしまう。
すると被っていたお面が転がり落ち、急いで拾おうとするが行き交う人々に踏まれて
手を伸ばした時にはもうグシャグシャになってしまっていた。

唯唯、悲しい思いに突っ伏していた顔をそっと上げると目の前に二本の足が立ち止まり、
踏み潰された面を拾い上げた。


「・・・・・・・・・兄・・さん・・」

信じられないといった表情で見上げているサスケを起き上がらせると埃を払った面をサスケに渡す。


「暗部の・・・・お面。・・・もうコレ、・・・駄目だね」
消え入りそうな声でひとつ呟くと、それでも大事そうに自分で買ったお面を受け取った。
















「サスケ。」










悲しさと焦燥感から下を向いていたサスケはイタチに名前を呼ばれ上を向くと。








「兄さん、これ!?」










目の前には綺麗な暗部の狐の面があった。





「兄さん、もしかして・・・ッ」

「あぁ・・・・・・暗部の一員に」

「本物ッ」

サスケは信じられないといった表情でお面を隅から隅までマジマジと見つめ、先程の兄弟が
まだ居ないかと辺りをキョロキョロとした。偶然にも、この場を通り過ぎないだろうかと。

自慢の兄を見せ付けてやりたかった。




「サスケ」


「?」
兄の呼びかけに首を傾げた。
掌を出してくるイタチに“あぁ、このお面か”と面を返そうと渡すがイタチは僅かに首を振った。

「手」

「えっ・・・?」




「祭り、回りたかったんだろ」

そう言うと中途半端に出したサスケの手をとると狐の面をサスケの頭に被せ、
サスケの手を優しく握る。

突然現れた兄に信じられない気持ちでいっぱいだったサスケは兄の手の感触に手を握り返した。



「へへっ・・・・」
頭に掛けられた面を嬉しそうに触ると、握られたイタチの手の冷たさ気づいた。


「 ―――・・・兄さん、手が冷たい」




「・・・・・・・・・今日は冷えるからな」

そう言って、自分を見下ろす兄の目は何処か寂しそうでサスケはギュッと手を握った。

「任務、もう良いの?」


「・・・ああ」


「じゃあさ、一緒に輪投げしたり射的したり、綿菓子食べたりしよう!」

「ああ」

頷く兄に、嬉しくて嬉しくてサスケは顔が綻ぶ。


「今日は俺が驕るよ!沢山持ってるんだ!」
そう言って懐からありったけのお金を出した。

「今日のサスケは御大尽だな。」


「じゃあ、まず輪投げからやろう、兄さん!」

嬉しさの余りはしゃぐサスケに頷き、イタチも笑顔をつくった。









「お前の手は温かいな・・・」
しっかりと握られたイタチの手はいつの間にか温かさを取り戻していた。

+++ アトガキ +++

兄サス 兄サス 兄サス〜〜
vvv
七夕とか祭り事内容好きなんですよ〜

祭りの雰囲気とか書きたかった!
あ、神社の“御手洗”ってトイレじゃないですよ(汗)
【みたらし】という神社の拝殿の近くに在って、参拝者が手や口を清める場所。

原作ではサスケに手厳しいイタチですがきっとそこには
イタチ愛が有るのねんvvと萌えてます。
幸120%話も好きなのですが、切ないのと幸せの境界線ギリギリの
シリアス話とか目茶苦茶好きなのでシリアス満載になる予感・・・
これからも、お付き合い下さると嬉しいです(
*^w^*)/

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