身 体 測 定。
「はぁ〜・・・嫌になっちゃうよ」
その大きな鎧姿からは予想も付かない甲高い声でため息を付くアルフォンス。
同じ部屋で、賢者の石の調べ物をしていたエドワードが頭を上げた。
「あ?なんだよ、アル」
「身体測定。今日の午後にあるじゃない。どうせ変わらない僕がやったってしょうがないじゃないか。
また“巨人”扱いされるんだから・・・。はぁ〜」
再びため息を吐き出そうとしたアル。
「・・・ちょっと待て!ちょっと待てっ!今、なんつった!?身体測定だぁ〜?!」椅子から転がるように
立ち上がったエドは血の気の引いた顔を強張らせた。
「し、し、し、し、身体測定なんて聞いて無いぞ!そんなモン、今まで無かったじゃないか!」
「え?何言ってるんだよ、兄さん。毎年あるじゃないか。」
「ふざけンのはお前だろ!身体測定なんてそんなモンやった事無いだろ!」
エドのその言葉に図体のでかい体できょとんとするアル。
「兄さん、大丈夫?・・・まぁ、本部(セントラル)に行けば解る事だよ。」
冗談とは思えない弟の言葉に今一度過去を振り返るが、この身長、他人に測らせるなんて言語道断有り得ない事だ。
特にあの五月蝿い大佐や中佐に知れたら、なんと言われる事か。
考えただけで恐ろしくなり、シンボルの立ち上がった髪の毛が思わず震えた。
だが、軍部は任務でそれどころでは無いだろうが。
「や、鋼の!」
「△×★□!?」
「あれ?大佐、なんでこんな所に」
特別開設室に入った瞬間、大佐の爽やかな笑顔が飛び込んできたので2人は、・・・特にエドは間の抜けた声を上げた。
「測定の職員が急遽こちらの手配ミスで本日来れなくなってしまってね。部下のミスは、上司の責任。
私がその代わりにこうしてやる事になった。――――さあ、上着脱いで来たまえ。」
心なしかロイの表情が不敵な笑みを浮かべている様な気がし、エドワードは思いっきり引け腰になった。
「ちょっと待て----!!な、な、何でアンタが!そんなの認めねーぞ!誰がアンタの測定なんか受けるかっ」
怒る振りをしてあわよくばその流れに乗じて、身体測定を受けずに部屋から脱出しようとするエドワードの思考なんて
経験豊富・年の功のロイ・マスタングにはお見通しの様で直ぐに切り返された。
「“認められない”のはこっちだ、鋼の。身体測定を受けないと、国家錬金術師の資格を剥奪されるのだぞ?
軍直属の錬金術師に不正があっては困るのでな。―――さ、どちらからでも良いぞ?」
「・・・・・って、オイ!アル、お前何受けようとしてんだよ?お前は国錬術師じゃないだろ」
ロイの言葉の後、直ぐにロイの居る体重計の方へ歩んでゆくアルに慌てて止めに入ったエドワード。
「・・・証明が欲しいから。 自分が“存在する”って証明が欲しいんだ。だから、大佐にお願いして無理言って
この身体測定を受けさせてもらってるんだ。肉体が存在しない器だから、体重や身長に変化なんて無いけど、
それでもボクが今ここにいるっていう存在理由が欲しいのかもしれない。」
背中を向けたまま、静かに答える鎧姿のアルフォンスに言葉を失くすエドワード。
「・・・・・・・・アル・・・・・・・・」
「・・・・ん―、体重97kgに身長202cmか。相変わらず良い体格してるな。」
照れて頭を掻くアルフォンスに、身長180cm台の流石のロイも見上げるようにして言った。
そして、有無を言わさず必然と、2人の目線が硬直しているエドワードの方へ向く。
その視線にエドワードはグッと喉を鳴らし、
「乗りゃぁいいんだろうが!」と威勢良く体重計に乗った。
「― ・・・体重49kg・・・・・。 ってなぁ、鋼の!もう少しウエイト付けたらどうなんだ?49kgって、有り得ないぞ?
まぁ、お前の場合体重よりも先に上背をつけなきゃ話にならないからなぁ!」
そう言うと“ハッハッハッ”とダイナミックに大きく笑った。
瞬間急騰湯沸かし器の如く顔を真っ赤にして大佐に詰め寄るエド。
「俺はこれからが成長期なんだ!あんたよりも絶対でかくなってやるからな!」
まるで子犬が大型犬に向かってキャンキャン吠えたぎっているようだな、と客観的に見ていたアルは
そのやり取りを冷静に見守っていた。
「それには、牛乳を飲みたまえ、牛乳を」
エドが牛乳嫌いなのを知っていて、ワザと面白がるように痛いところを突く様な言い方をする。
「だぁぁ〜!!誰が牛から出るあんな白い分泌物なんか飲むかっ!牛乳が身長の全てじゃねえ!!」
「じゃ、次。 身長な、鋼の。」
エドの言葉を無視し、冷静に言い放つ。
断固拒否・絶対に駄々をこねると思われていたエドだったが、これまた素直に身長を測る台に上がる。
ガンッ!!
鈍い音が室内に響いた。
「!?ぐっ゛〜〜〜・・・ 何すんだよ!!・・・いてぇ――っ!」
台に上がったら、ロイが身長計の板をエドの頭上に思いっきりクリーンヒットさせたのだ。
「背が縮んだらどうしてくれんだ――!!」
痛そうに頭を抑え、しゃがみこむエド。
「靴を脱ぎたまえ!土足厳禁、常識だぞ。」
ちゃっかりブーツを履いたまま身長測定の台の上にあがっていたエドを(もちろん故意である)、
大佐は見逃すはずもなく。
厚く出来たブーツは10cmはサバを読めそうだった。
「・・・・・あ、バレました?」
スマイルを向けるが、一瞬真顔になり“チッ”と舌打ちをするエド。
「兄さん、そこまでして・・・・タンコブで、身長割り増しになるかも、よ?」
後ろで見ていたアルフォンスが冗談なのか本気か呟くが、
“所詮2mあるヤツには解るまい”とタンコブをおさえるエド。
「さあ、さっさと乗りたまえ、鋼の。」
心なしかさっきよりも満面の笑顔を浮かべる大佐。
「―――だぁぁぁぁ! 身長168cmって書いておいてくれ。・・・・そうだ、俺は所用が出来た。・・・・・って事で」
退散しようとドアに向かうと、いきなりそのドアが開いた。
「何言ってるのよ、アンタ!」
そこには何故かウィンリィが突っ立っていた。
「!? ちょっと待て、なんでお前がいるんだよ!!」
突然現れた幼馴染に焦りを隠せないエドに更に畳み掛けるように
「何言ってるのよ、アンタの身長は160cmどころか15・・」
「わぁぁぁぁぁあぁぁっ!!余計な事、言うんじゃねぇっ!」
「実際に確かめるまでだ。 さっさと乗りたまえ、鋼の」
大佐は指をパチンッ☆と軽く、ひと鳴らしすると焔を出現させた。
「大人げないぞ、エドワード・エルリック!!」
とりあえず逃げようとしていたエドは扉を開けると、目の前には筋肉の扉が行く手を遮断した。
「吾輩、援護に参りました」
そう言うと、ボティービルダーの如くポーズをとって見せ、上腕二等筋をピクピクさせるアーム・ストロング少佐。
「――― よく来てくれた、少佐。ソレをここにやってくれ」
「な、な、な、なっ」
じりじりと迫る筋肉に後ずさり、間合いから逃げようとするエドだったが易々と子猫の様に首根っこを掴まれ
引き戻されてしまった。
「さぁ、観念しろv鋼の。」
身長測定器の前に座っていた大佐は “WELCOME” という様に両手を広げた。
無理矢理、測定器に押し付けられる形となった。
「ぐわぁぁ〜!!離せっ!離せぇぇぇ―!!!アル、見てないで助けろっ!」
押さえつける少佐の腕の間から弟を除き見、探したら一緒になってエドを押さえているではないか。
「アルッ!!お前っ・・・・!」
「ゴメンよ、兄さん。軍には逆らえないよ・・・それにボクも兄さんの身長、実は知りたかったりして」
エヘヘッと無邪気に微笑むアルだったが、エドには悪魔に見えたに違いない。
「それじゃぁ、いくぞ」
無気力とばかりに魂の抜けたエドはされるがままの状態になっていた。
パシコ―ンッ!!
本日、2度目の頭に板がクリーンヒットだが、
よもや魂の抜け切ったエドは無念とばかりに頭を垂れていた。
「良いのか?頭を垂れていると小さいものが余計小さくなるぞ?」
エドは弟の裏切り行為に無気力となり、大佐の声はその耳に届いていなかった。
「良いのか。では、え―、エドワード・エルリック、ひゃくよんじゅう・・・」
「・・・・・さん、・・・兄さん、兄さんっ!」
「ダメだ、ちっとも起きないや」
ベッドに蹲り、うなり声を上げているエドを揺すっていたアルは観念声を上げた。
「・・・・・・無ぇ―・・・・そんな・・・身長・・低く・・・・無ぇ―・・・・・・・・」
再び、うなされて声を上げるエド。
「兄さん・・・・・・可哀相な事しちゃったカナ・・・・いくら今日がエイプリルフールだったからって
“身体測定” があるだなんて言っちゃって。元々そんなもの無いのに・・・。」
うなされる兄を目の前に、起きた時にどうやって真実を話そうと頭を重くするアルだったが。
「アル――、お前・・・・・・・後で覚えとけよぉ・・・・・・」
「エッ!?!?に、兄さん、起きてるの?!?!」
焦って思いっきり後ずさりするアル。
だがしかし、未だ悪夢から醒めずにいたエドは更にうなり声を上げるのだった。
いくら冗談でも言っては良い事と悪い事が有る、と実感したアルフォンスであった。
END.
+++ アトガキ +++
アホっぽく書こうとしたら支離滅裂になってしまいました(汗)
ロイエドじゃなくて、ロイ+エド+その他 みたいなギャグダイスキなんですよv
大佐とエドがアホやってるのを外から冷静にアルが突っ込むみたいなの。
はうぁ!ホークアイ姉さんを書くの忘れてたっ!(でも女性が測定場に入っちゃマズイだろ)
また、ギャグちっくなロイ+エド書こうと思います。(まだ書く気かよ!)