ここは、どこだ

暗く 寒く 無音の世界

ここは 嫌だ   思い出す独りを

孤独は嫌だ

目が開いているのか閉じているのかさえ

分からない

身体 動かないんだ

ここから 出してくれ

オレはこんな所で

立ち止まっている場合じゃないんだ



耳にこびり付く アイツの声

囁かれた この耳が覚えている

首を絞められた この肌が覚えている

父 母 一族 殺された この眼が覚えている

紅がどんな色をしているかを



アイツが生きている限り

忘れることの出来ない感触 記憶


こんな所で立ち止まっている暇は ないんだ

「ノスタルジア」【5】
ナルトの中で何かドロリとしたものが深い所から湧き上がってくる。それはナルト自身を食い尽くすかと思えるほどの、
どす黒くて禍々しいものだったがナルトはあえてそれを受け止めた。

「彼はボクに一撃をくれ、ひるむ事無く君を守って死にました」
その声にナルトは顔を上げると、白がゆっくり立ち上がるのが見えた。

「大切な人を守るために罠だと知っていても飛び込んでいける -------------------- 彼は尊敬に値する忍でした」
白は起き上がると、再び氷の鏡の中に身を沈めていく。


「仲間の死は初めてですか・・・。 これが忍の道ですよ」

「・・・・・・・うるせェ・・・・・・」
ナルトもサスケが大嫌いだった。 いや、そのはずだった。
だが、今この湧き上がる多大な悲しみと怒りはなんなのだろう。
この悲愴な気持ちはどんどん強く湧き上がってくる。
ナルトは動かなくなったサスケを抱きかかえたまま、体内に広がる禍々しいものを今解き放とうとしていた。


----------------------------------------------------------------------殺して、やる


ナルトは自分でも自分がコントロール出来なかった。
    憎悪と怒りの情念全てを白に向けて。
離れた所で、再不斬と向き合っていたカカシは突発的に溢れ起こった妖気に背筋がゾクリとするものを感じた。

「これは・・・・・・再不斬じゃない。・・・まさか、妖弧・・・ナルトか!?」

ナルトがこの世に生を受けた時に妖弧をナルトの体内に封印した。ナルトは云わば妖弧を封印する為の器であった。
なんらかの衝撃で封印が敗れたのか。 カカシの脳裏に“予感”がふと横切った。
カカシは顔色を変えると、ジャケットの隠しから巻物を1つ取り出すと、左手から指先に流れていた血を付け、
それを開いた巻物の上を滑らせるように擦り付けた。

再不斬との勝負を即急に終わらせる必要があった。
もしもあれが、ナルトの放つものならば妖弧の封印が解けてしまったと言う事。

「再不斬!聞いているか! お互い、これ以上長引かせる必要もあるまい。 お前の流儀に反するかも知れんが
楽しむのはこの辺にして、終わりにしよう」カカシの声が空気を振るわせる。再び頬リ投げるかの様に閉じた巻物を手にし
印を結んだ。

「面白い、お前に何が出来るのか、見てやることにしよう」

----------------------------------------------間に合ってくれ!
カカシは戦いに集中しながらも莫大な力を放出するナルト、急に力を感じ取れなくなったサスケが気がかりで
しょうがなかった。






ナルトを取り巻くチャクラの渦が何か獣の頭のように薄くはった霧の中から、怪しげな光を放って
白を睨み付けた様に思えた。
「そんな・・・チャクラが具現化するなんて!それに・・・・なんて醜悪な」
ナルトの身体を取り巻いていた渦が吸い込まれるかのようにナルトの体内に吸い込まれるとナルトの全身に走っていた
傷がみるみる回復していった。

同時に、身体に刺さっていた数本の千本が音を立てて抜け落ちる。
全身から妖気を漂わせながらゆっくりとナルトが身をユラリと起こした。
その目には尋常では考えられない程の激しい怒りを露にした瞳が白を捉えた。
「来る!」

獣のように四つんばいになると、思い切り大地を蹴りつけて襲い掛かってきた。
白はスピードを見切る自信ならば、難しくなかったが燃え上がるナルトの鋭い目で見据えられ全身が金縛りに
合ったかのような感覚に襲われていた。

「なんて殺意、 さっきまでのあの子とは違う!」
はっきりと生命の危機を感じ、白はナルトの頭に向けて必殺を期した千本を放った。

だが。

目の前に迫る千本を見据えたナルトは、大きく口を開いたかと思うと咆哮をひとつすると、とたん千本が堅い壁にでも
ぶつかったかの様に大きく弾き飛ばされた。

「そんな・・・・さっきまでのあの子とは全く----------------」白は咄嗟に別の鏡に移動した。その禍々しいものが
隙を見せるまで鏡の中で様子を伺い、ここ一番千本を手に飛んだ白だったが首筋の急所に決まる寸前、
ナルトはその攻撃に気づくと掌を叩き付けた勢いで大きく後方に飛び退りその攻撃をヒラリとかわした。

直前で攻撃をかわされ目標を見失った白は、態勢を崩して鏡の向こうに逃げる為に飛び上がろうと地を蹴った時だった。

ナルトの動きは全く洗練されてもいないにも関わらず、恐ろしいまでに素早く力強かった。
鏡に飛び移ろうとした時、手首を掴まれ力任せに無理矢理引きずり戻されると、白は目の前に立ちはだかるナルトの顔を
信じられない面持ちで見た。


うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!


それは声なのか動物の咆哮なのか、白にはわからなかったがナルトがその有り余る力を持て余すかのように
絶叫を漏らすとサスケの懇親を込めた炎にすら揺るがなかった氷の鏡が大きくひび割れ、崩壊し始めた。
無駄な抵抗だと察知しながらも、白は千本を振り上げた。
ナルトは獣の形相で振り向くと固めた拳を白の顔面に向けて振り抜いていた。
白は今まで味わった事の無い衝動が、白の全身に響き渡った。
その一撃で絶命しなかったのは、ひとえにはくが非凡な才能の持ち主ゆえだろう。

その小さな白の軽い身体は自らの作り出した結界を破り、大きく宙を舞いそしてドサリと地面に
大きな音を立てて落ちた。
朦朧とする意識の中で白は再び立ち上がったが、既に戦う意志は無く白自信何故立ち上がったのかわからなかった。

------------------------------------再不斬さん・・・

死体処理班・追い忍の仮面に大きくヒビが入った。

-----------------------------------再不斬さん、ボクはこの子に敵いません・・・

白の顔から仮面の破片が崩れ落ち、その素顔が露になった。呆然と虚空を見つめる白の顔に ナルトの動きが止まる。

「お前は、あン時の・・・・・」

「なぜ、 止めたんです?」
白は急に厳しい顔をすると、自分のことを唖然と見るナルトに糾弾した。

「君は、大切な仲間を殺されておいて、その殺した相手を殺せないんですか?」
その言葉にナルトの表情は大きく歪み、拳が震えていた。
そうして大きく目を開かせると、大声でわめきながら白を殴り飛ばした。そのナルトからは禍々しいものは感じず、
“人”としてのナルトであった。だが、軽い白の身体は一撃を食らい大きく後ろへ吹っ飛んだ。
咳と同時に血を吐き、それでも立ち上がる白は、表情を変えずにナルトを睨み返した。

「さっきまでの勢いはどうしたんです!それじゃ、ボクを殺す事はできませんよ」
だが、ナルトは白を憎み切る事が出来なかった。
あの時の白との会話が、どうしてもナルトの頭を離れない。

「よく・・・・勘違いしている人がいます。倒すべき敵を倒さず、情けをかける。 命だけは見逃してやろう、と・・・・。」
そう言うと白は表情を変えた。穏やかにナルトを見返して、優しげな微笑すら浮かべている。

「知っていますか?夢も無く、誰からも必要とされず、ただ“独り生きる事”の苦しみを」

「・・・・・・・何が、言いたいんだ」 聞き返すナルトに白は答えた。

「再不斬さんにとって弱い忍者は必要無いんです。・・・君はボクから存在理由を奪ってしまった」
ナルトは漸く、あの時白が口にした『大切な人』が誰であるかを知った。

「な・・なんで、あんなヤツのために! あんな悪いやつから金を貰って酷い事をする様なヤロ―なんか!
お前の大切な人ってあんな眉無しひとりだけなのかよォ!!」
白はそう叫ぶナルトをジッと見据えると、静かに語り始めた。

「ずっと・・・・・・ずっと昔にも大切な人がいました」
ナルトは再び言葉を発しようとしたが、その白の言葉に開きかけた口を閉じた。

「ボクの・・・・両親、です。」
生まれ育った霧の国の雪深い小さな村で、彼には当たり前の様に仲の良い両親が居て、どこにでも居る子供のように
無邪気に、明るく楽しくとても幸せに暮らしていた。
そう伝えるが、白はそこで急に目を伏せると話を続けた。

「でも・・・・・ボクが物心付いた頃、ある出来事が起きました」

「出来事・・・?一体何が・・・」

「この血」
白は自分の口元の血を拭うと、じっと手首に付いたそれを見つめたまま黙り込んだ。


「だから・・・・・・だから、なにが起きたんだってばよ!?」
その沈黙に耐え切れなくなったナルトは、身を乗り出した。

「父が母を殺し・・・・・そして、 ボクを殺そうとしたんです」


「え・・・・・?」

「絶え間ない内戦を経験した霧の国では、血継限界を持つ人間は忌み嫌われてきました」

「ケッケイゲンカイ?」

「ボクのような 特殊能力を持つ血族の事です
------------------------- その特殊な能力の為に、 その血族は様々な争いに利用された挙句、
国に災厄と戦禍を齎す汚れた血族と恐れられたのです」
ナルトは、白の語る言葉を信じられず目を大きく開き聞いていた。

「戦後、その血族の人間達は自分達の生まれを隠して暮らしました。その秘密が、知られれば必ず
死が待っていたからです」
白は動かなくなった横たわるサスケに目を移すと、悲しげにその骸を見つめた。

「おそらく、あの少年も辛い思いをしてきた筈です。 特殊な能力者とはそれ程に恐れ忌み恐れられるものなのです。
ボクの母は血族の人間でした。 それが父に知られてしまった。 全てそれを知った時、 ボクは父を殺していました。
--------------・・・・・・実の父を、 です。」 長い沈黙がふたりの間にあった。
白はどこか遠い所へ焦点を置くかのようにすると再び口を開いた。
「そして全てをその時失った気持ちになりました。そう思わざるをえなかった。ボクが消えても何も変わらない世界。
ボクはこの世にまるで必要とされていない人間なんだ、 と。」


ナルトはその白の言葉に、ついこの間までの自分の姿を思い出していた。
「君はあの時、ボクに言いましたよね? 里一番の忍者になって、皆に認めてもらうんだ、と。
もし、 君を心から認めてくれる人が現れたなら、 その人はきっと君の大切な人になるでしょう
・・・・・そして、 ボクにとってはそれが再不斬さんだったのです」

白の目から、一筋の涙が一瞬こぼれた気がした。

「あの人は、ボクの忌み込められた全てを承知の上でついて来いと言ってくれたんです。
誰もが忌み嫌ったこの血を、遠ざけず必要としてくれた・・・・・・・・・」
白の脳裏には再不斬と過ごしてきた日々が、走馬灯の様によみがえった。

「・・・・・・・・・・嬉しかった・・・・」
再不斬が霧の国を出る決意を固め、野望を少し話してくれた夜、白は傍らで嬉しそうに主人の顔を眺めていた。
白は今までずっと共にしてきた再不斬が何を必要としているか知っていた。


「ボクは、再不斬さんの武器です。だから、ずっと再不斬さんのお傍にその道具として置いてください。」
その日から白は再不斬の武器として、どんな困難な言いつけもこなしてきた。白の想いの前には、
どんな困難な任務も可能となった。
再不斬の足手惑いになるような行為は、絶対にありえない事であった。

だが、その思いは最早今宵敗れたのだった。

「ナルト君、 ボクを、 殺してください。」


















「フッ・・・・お前に何が出来る。 お前はオレの気配すらつかめてないんじゃないか? だが、オレにはお前が
手に取るようにわかる。 カカシ、 今やお前は完全にオレの術中にはまったんだよ」
    だが、カカシは寡黙を通すと、素早く印を結んだ。

「忍法、 口寄せ土遁、追牙の術!!」
カカシは握った巻物を両手で地面に力強く押し付けた。
と、そこから飛び出したいくつもの影が地面に飛び込み、四方八方へと走り出した。

「ん?」
それらは、一旦散らばったかに思えたが、次の瞬間再不斬の方向へ向かってきた。
目を瞑って気配を探っていた再不斬は一瞬、その影に気づくのが遅れ、迫り来る何かに目を見開いた。
咄嗟に目を見開いた再不斬だったが、自分を取り囲むように飛び掛ってくる忍犬達に肩や腕、腿を噛み付かれ、
動きを封じられていた。
そして、自分の目の前のゆっくりと晴れる霧から現れる影に目をやった。

「どうして、オレが二度までも、お前の攻撃をこの身体で受け止めるような真似をしたと思う?お前の武器には、
オレの血の臭いがべったりと染み付いている。・・・その臭いをオレの忍犬達に追わせたんだよ」
忍法、口寄せの術。
契約をかわした動物達を術によって自由に呼び出せるというものであった。

「その忍犬達は、どの犬よりも鼻が利く。・・・術中にはまっていたのはお前の方だ」
カカシは腰を落とした態勢で素早く両手を組む様に短く印を切るとカカシの全身から、凄まじいチャクラが
集まるのが分かった。
「オレは、写輪眼だけで生き延びて来たわけじゃない事を教えてやろう。 コピ―忍者カカシ、唯一のオリジナル技をな。」
カカシの右手が、空気を裂くような音を立てて光を発した。それは目に見えるまでに高められ、一点に集結された
チャクラそのものであった。

    その名、『雷 切 ―ライギリ―』という。

「お前の野望は多くの人を犠牲にする。それは忍者のやる事じゃぁ無いんだよ」
カカシは尚もチャクラを集めると、再不斬を睨みながら腹から出した低い声で言い放った。

「そんな事、知るか。オレはただオレの思想の為に戦うだけだ。それは、これからも変えるつもりは無い!」
カカシは目を閉じると、カッと大きく見開いた。もはや、この男と話すべき事は何も無い。

「諦めろ・・・・・・・・お前の未来は、 死 だ」












「君の手を汚れさえる事になって、申し訳ありません・・・・夢を、掴んでください、ナルトくん」
ナルトは、もう立ち上がる事の無くなったサスケを振り返った。目の前に立っている少年は、サスケを殺した憎い相手。
ナルトは唇を噛んだ。そして、足のホルダ―からクナイを引き抜くと、白に向かって進み始めた。

白は、ナルトの前で無抵抗であった。 命を投げ出すつもりであった。
この少年にならば、殺されても悔いは無かった。彼は自分よりも強かった、それが何より・・・。

だが、次の瞬間白の身体は、その決心と逆の動きを見せた。

「な、何を・・・」

ナルトの突き出したクナイは、白の手に掴まれて胸に突き立つほんの僅か手前で止められていた。
驚愕の表情を向けるナルトに向かって、白は悲しげに僅かに微笑んだ。

「ごめんなさい、ナルトくん・・・・・ボクは、まだ死ねません!」
そう言いながら、白はナルトの手を掴んでいる逆の空いてる手で印を切っていた。
突然、ナルトの目の前で冷たい空気が旋風のように巻き上がり、再び目を開けたナルトの前から姿を消した。











チリチリと空気を切るような音を響かせながら、チャクラの宿った右手を構えカカシが疾走する。
忍犬達に五体をふさがれた再不斬は、ただその動きを見返すしかなかった。

と、カカシは再不斬の背後に今までは無かった鏡の様な氷の壁が立っているのが目に入った。
カカシは一瞬逡巡したが、加速のついた攻撃は止められなかった。
いかなる刃よりも鋭利なものと化したカカシの右手が肉に食い込み、骨を断ち切り、そして突き抜ける感触があった。

そして辺りに鮮血が飛び散った。

「なに?」

驚愕に目を見開いたのは、 カカシだった。
カカシの力を込めた一撃を、胸のど真ん中で受け止めていたのは白であった。

同時に再不斬を押さえつけていた忍犬たちは、煙と共に姿を消した。いつの間に放ったのか、
地面に置いたカカシの放った口寄せの巻物に千本が突き立っていた。
焦点のどこか合っていない目でカカシを見つめると、白は震える手で目の前の相手の腕を残る力精一杯、
カカシが動かぬよう掴んだ。

「再不斬さん・・・・・」

次の瞬間、白の口から大量の鮮血が吐き出された。それでも白は掴んだ腕を放そうとはしなかった。
氷の鏡が溶け出して崩れ落ちる。

「ど・・どういう事だってばよ!」
駆けつけたナルトがその光景を目にして呆然と立ち尽くしていた。ナルトの出現に再び止まっていた時間が
動き出したかの様に再不斬が口を開いたのもその時だった。

「・・・・・・・ 見事だ、白」
そして、再不斬は肩越しに自分の背中に背負っていた大刀に腕を伸ばす。カカシは咄嗟に白の掴んでいた腕を
振り払おうとして気づいた。

その小さな胸にカカシの手首を食い込ませ、その腕を抱え込むようにしながら、白は絶命してた。


「全く・・・オレはよくよく良い拾いモンをしたもんだ! 最後の最後で、こんな好機を与えてくれるとはな!!」
再不斬は巨大な刃を振りかざすと、白の背後から一気に斬り下ろした。

カカシは白の身体を抱えると、渾身の力で後ろへ飛びその一撃をかわす。辛うじて相手の間合いを逃れると、
冷たくなっていく白の骸を横たえると、白の顔を見下ろし開いたままの白の眼にそっと手を翳して閉じてやった。

「ククク・・・・・・白が死んで動けたか」
再不斬の冷酷な言葉に、横で一部始終を見ていたナルトは怒りに身を震わせた。

「ナルト、お前はそこで見てるんだ」
カカシは再不斬に静かに目を据えたまま、そう言った。

「・・・・・・・こいつは、オレの戦いだ」
ナルトは飛び出そうとした足をその言葉で止められ、ただ黙って大きく頷いた。

「ナルトォ!!無事だったのね!!」
と、ナルトの元へサクラがタズナを伴って駆け寄ってくるのが見えた。サクラの姿を見た途端、ナルトの表情が強張る。

「あれ? サスケ君は? サスケ君はどこよ!」
サクラはナルトの肩越しに辺りをキョロキョロと見回す。ナルトは呆然とサクラを見つめていたが、
サクラがナルトに視線をもって来ると表情を固くし、咄嗟に顔を背けるのだった。
サクラには、それが何が起こったのか理解するには十分であった。

そして、その様子を横で見ていたカカシも十分に伝わってきた。

「おい、余所見している暇はないぜ!」再不斬が大刀を振るって襲い掛かってくると、クールに見えた目線が
写輪眼の赤で染まり身体の中から沸き起こる怒りを爆発させているかのようだった。そして戦いは再び始まる。









サクラは朦朧とする意識の中、ナルトに導かれサスケの亡骸の前にやってくると、そっとサスケの頬に手を伸ばした。
「・・・・・・冷たい・・・・・これは・・・・もう・・幻術じゃ無いのね・・・・」

「お嬢ちゃん・・・・・・・」
タズナは今は酷く小さく見えるその背中を見下ろしながら、呟くように言葉を吐いた。
「わしの前だからって、気にすることは無い。 こういう時は、素直に泣いたらええ。」
だが、サクラは呆然とサスケを見下ろしたまま言った。

「私、いつもアカデミ―(忍者学校)のテストで百点取ってた・・・・・・百以上もある忍の心得を全部覚えてて、
いつも得意げに答え書いていた」
サクラの小さな背中が少しずつ大きな震えに変わっていく事にタズナは気づいていた。

「ある日のテストで、こんな問題が出たの。 “忍の心得、第二十五条を答えよ”って。
それで私はいつものようにその答えを書いたわ」
サクラは大粒の涙を溜め込んでいたかと思うと次の瞬間その大きな瞳からボロボロと零れ落ちた。

「・・・・・・・忍者は、どのような状況においても、その感情を・・・・・・・表に出すべからず・・・・・・・任務第一とし・・・・
何事においても・・・涙を・・・、 涙を見せぬ心得を持つべし、・・・・・って・・・」
声を殺しあまりにも悲しげに肩を大きく震わせるその後ろ姿に、タズナはかける言葉が見つからなかった。

これが忍者というものなのか。なんと残酷-------------------なんと苦しく、 辛いものなのか。












「なぜだ・・・・・・・なぜ、ついていけない・・・・」

ナルト達と少し距離を置いた所で、今カカシと再不斬の戦いに決着がつけられようとしていた。
再不斬は肩で大きく息をしながら、大刀に縋る様にしてようやく立っていた。
大きく傷ついた左腕はだらりと垂れ、柄を握っている右腕も、自分の血で赤く染まっていた。

「ヤァァァァ!」
気合と共に突進する再不斬だったが、佇むカカシの振るった拳に容易く弾き飛ばされても必死で堪え、
再び向かって行こうと顔を上げるが、既にそこにカカシの姿は無かった。

「今のお前は、オレには勝てない」

「・・・・・なに」

カカシの腕が再不斬の後ろ襟首を掴んでいた。

「お前の野望は大きすぎた。 さよならだ、 鬼人よ」
だが、再不斬は諦めず渾身の力で身体を捻り、大刀を引き戻そうとするとクナイは再不斬の右腕を貫いていた。

「これで、腕は使えなくなった。 もう、印も結べないぞ。」
傷つき動かせなくなった両腕は力なくダラリと垂れ下がる。
再不斬は動かなくなった両腕に悔しそうに顔をゆがめた。


「おお、 随分と派手にやられたモンじゃないか?」


その声に再不斬は鬼の顔を上げた。
「・・・・・・・・・・・・ガト―」

橋の向こうから、何十人もの侍を引き連れた成金のような派手なスーツ姿の人影が杖を突いてやってくるのが見えた。
その腕には、分厚く包帯が巻かれ首から吊る下げられていた。

「あれが、 ガト―か」
カカシは刺す様な鋭い目で、今回の張本人である男の顔を見た。

「なぁに、作戦が変わった・・・・・というより、ハナからそのつもりだったのだがね。
・・・再不斬、お前にはここで死んでもらう事にしたよ。もともと、お前と交わした契約金なぞ、払うつもりは無かったんだ。
許してくれ、何せ正規に忍者を雇えば、莫大な報酬金を要求されるからねぇ。
その上、契約違反でもすれば、後々処理が面倒。 その点、お前達の様な抜け忍なら、適当に利用してからでも、
後腐れなく始末できるからねぇ。」

そう言って、ガト―は狡賢く微笑みを浮かべた。

「カカシ・・・・・・・すまないな。 戦いはここまでだ。 タズナを狙う理由が無くなった以上、お前と戦う必要も、 無い。」

「・・・あぁ、 そうだな」
    ガト―達に目を向けたまま、カカシも頷く。

「まぁ、お前に関して言えば、再不斬、完全に期待外れだったがな。 なんだ、そのザマは。
鬼人の名前が聞いて呆れるぞ。今のお前は、精々 “可愛い小鬼ちゃん” ってところだなぁ」
馬鹿にするような下卑た笑み、そしてまるで勝ち誇った様な顔を向けるガト―に続き侍達も笑い声を立てた。
数に驕って明らかに再不斬を見下している風情であった。

「ん・・・?こいつは」
ふと目の前に倒れている白に気づくと、足を速め少年の亡骸に近づいた。

「こいつ、 わしの腕を折れるまで握りおった、 あの忌々しいガキか」 
そう吐き捨てると、ガト―は白の骸を思い切り蹴り飛ばした。

「あははは、死んじまってるじゃぁないか! いいザマだな、はははは!」

「何しやがんだってばよォ、コラァ!!」
それを目にしたナルトは怒りに我を忘れて、ガト―に向かって飛び掛ろうとするとカカシは腕を伸ばすと、通り過ぎざま、
ナルトの襟首を掴んで引き戻した。

「馬鹿が!勢い任せに飛び出すな、あの数を考えろ。迂闊に飛び出すんじゃない」
カカシに掴まれたままの格好で、なるとは再不斬に向かって怒鳴った。

「お前も何とか言えよォ! 仲間だったんだろう!?」

「だまれ、小僧。 白はもう死んだんだ」
    低く、静かに再不斬は呟く。 それでも尚且つ食って掛かるナルト。

「あんな事されて、何にも感じないのかよ! あいつとは、ずっと一緒だったんだろ!?」

再不斬は前方を厳しい目で見つめると、言った。
「オレは白を利用しただけのことだ。 ガト―がオレを利用したようにな・・・・・・・言った筈だぞ。忍者には、利用するか、
利用されるか、その二種類の人間しかいない」 再不斬は、そこで一度言葉を置くと、

「オレ達忍は、ただの道具だ。 オレが欲しかったのはあいつの血で、あいつ自身じゃ無い-------------------未練は、無い」
再不斬の切り捨てる様な言葉に、ナルトは震える。
「本気で言ってんのか、お前っ!」

「やめろ、ナルト。もうこいつと争う必要は無い。 それに------------------------」
ナルトは止めるカカシの手を振り切りると再不斬を指差し叫ぶ。

「うるせェ―! オレの敵は、 まだこいつだァ!!」
再不斬はナルトに背を向けたまま、何も答えなかった。二人を見つめるカカシもまた、 かける言葉を見つけ出す事が
出来なかった。

「あいつは、 あいつはお前の事が、 本当に大好きだったんだぞ!」
ナルトは白を指すと、 必死の形相で再不斬に訴えかけた。

「本当の本当に好きだったんだ! それなのに、 なんともお前思わねェのかよォ!」 ナルトの中で、
白の言葉がコダマした。
あれ程までに白が想いを込めた 『大切な人』 が、どうしてその想いを踏みにじる事ができようか。

ナルトに敗れ、 自分の存在価値がなくなったと思った白がナルトに自分を殺してくれとまで言った白が、
最後にとった行動は、大切な人間を守る為に命を捨てる事だった。
それを前にして、尚も冷酷になれるものなのだろうか。
だからこそ、 鬼人と呼ばれているのか、 この男は。


だからって・・・だからって、そんなの哀れじゃねーか・・・・
「あいつは、お前の為に命を捨てたんだぞ!!」ナルトの目から、白を想っての無念の涙が零れ落ちた。

「自分の事なんて考えるより、お前の事をいつも考えて・・・・」


「------------------------------------------ 小僧 」

「そんなの・・・・辛すぎるってばよォ・・・」

「小僧!」

ナルトはその声に驚き、顔を上げた。

「それ以上は、何も言うな」
くぐもった声で言いながら、 肩越しにチラリと見えた再不斬の目に、光るものがあった。

「白は、オレだけの為じゃない、 お前らの為にも心を痛めて戦っていた。 オレにはわかる。 あいつは、優しすぎた」
噛み締めるようにそう言うと、 再不斬は口布を自ら噛み破った。

「お前達と、 最後に戦えて良かった。 そう、 結局は、小僧、 お前の言う通りだった。 ・・・ 忍者もまた人間。
・・・感情の無い道具にはなれないのかもな」 そう呟くと再不斬は振り返った。

「オレの、 負けだ」

その目に最早涙は無く、あるのは全てを悟ったようなひどく落ち着いた穏やかな表情だった。

「小僧、クナイをかせ」

再不斬に言われ、腿の飛び道具ホルスタ―からクナイを取り出すとナルトは再不斬に向けて放った。
両手の使えなくなった再不斬は、それを口で受け止めると、それまでの再不斬の穏やかな表情鬼の様に変わる。

そして疾風の様に再不斬が駆け出した。 真っ直ぐに自分に向かってくる再不斬の気迫に気づくと、
ガト―は悲鳴を上げて侍達を振り返った。

「こ、こ、殺せっ! かまわん、 あの連中をやっちまえ!!」
侍達はニヤニヤと笑いを浮かべながら前に出ると、数に余裕の構えを見せた。

だが、その余裕も再不斬の姿を目にするまでの事だった。
それはまさに鬼の姿そのものであった。

再不斬の前に立っていた人間は皆、ひとりの例外も無く、血煙を上げて倒れていった。無数の刃を全身に受け、
その身体剣山のようになりながら尚、再不斬は周りには目もくれず標的に向かっていく。
ガト―は自分を守るべく立ち塞がった人垣を突き破り、 目の前に出現した再不斬の姿を
信じられない面持ちで見返した。

再不斬がにやりと笑った。
ガト―が悲鳴を上げる瞬間、 再不斬のクナイがガト―の腹部に深く突き刺さっていた。


「いい加減に、死ね!!」
口々喚き立てながら侍達が再不斬の丸腰になった背中に刀や槍を突き立てる。

「き、・・・きさま・・・・そんなに仲間のところへ行きたいなら・・・ひとりで行け!」
再不斬に刺されても尚、 その強欲の証でもあるのか肥えた腹が致命傷を避けたのか
半狂乱で喚くガト―に再不斬は答えた。


「残念だが、オレは白のところに行くつもりはねぇ」

「な、なにを?」


お前と一緒に、地獄へ行くんだよォ!

再不斬は、ガト―の腹に突き刺さったクナイを銜え直すとくぐもった笑い声を上げた。

「たいしたことはねぇ霧隠れの鬼人も、 死んで地獄に行けば本物の鬼になれるぜ」
再不斬は、そうして震えるガト―から一寸離れると、 再び飛び掛った。

「楽しみにしとけ! 小鬼ちゃんかどうか、 地獄でたっぷり確かめさせてやるよォ!!」
次の瞬間、鈍い音を立ててガト―の首が宙を舞った。
凄まじい、斬撃であった。

地に落ちて転がるガト―の首に、それまでとは反転、侍達は悲鳴を上げて後ずさりしながら、
雇い主を殺した相手を恐れ見た。
首を失い横たわるガト―の身体脇にユラリと立ち上がり、鬼の気迫に満ちた目を向けると
悲鳴を上げ逃げて行く者もいた。


不敵に笑みを浮かべると、再不斬の口からクナイが転がり落ちた。
同時に、 崩れ落ちるかの様に再不斬の身体が倒れていく。
その再不斬の目の前には、 あの時の白が立っていた。


                     『 ずっと、 お傍に置いてください 』


再不斬は、朦朧とする意識の中で微笑んでいた。


「もう、さよならだよ、 白」

血で湿った音を立てて、再不斬は地面に伏した。

「今まで、 ありがとう。 悪かったなぁ・・・・」

それは鬼人と呼ばれた男の、 長きにわたる戦いの幕が閉じられようとしていた。
















----------------------------------------- オレ、 死んだのか?

気が付くと、 サスケは闇の中にいた。

---------------------------------------- ここは、 どこだ?

周りを見渡しても、どこまでも 闇・闇・闇 の世界。
遠くで誰かの声が聞こえたような気がした。

---------------------------------------- ナルト?  サクラ? ・・・ カカシ?

サスケは耳をすませてみたが、 だめだった。 まるで聞こえない。

---------------------------------------- ここは 嫌だ! 気が、 狂いそうだ!

サスケはどこまでも続く闇に身を竦ませた。
いつしか遠い過去を思い出す事になる 『闇』



「・・・・・・・・・・・・スケ」
----------------------------------------? カカ・・シ?

それは、カカシの声のようだった。 幻聴、 か?
だが、その声に縋りつく思いで、サスケは身体を伸ばす。
頭上に光が見えてきた。

「サスケ君・・・サスケ君・・・・うぅぅ」
サクラの妙に悲しげに無く声が聞こえてきた。
「・・・サ・・クラ・・・?」
目の前が眩しくなり、目を閉じて再び目をそっと開けると、そこにはサスケに覆いかぶさる様にしてしゃくり上げる
サクラの姿があった。

「サクラ、重いぞ」

驚愕な目、驚愕で言葉が出ずに口をパクパクしているサクラは、目の前の起き上がったサスケを一瞥するとその目に
大粒の涙が溢れかえった。

「サ・・・・サスケ君! わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今まで溜め込んでいたいろんなモノが解かれたのか、子供の様に泣きじゃくるサクラはサスケに抱きついた。

「・・・・いてぇよ、サクラ」
生きていたとはいえど、身体には千本が刺さっているのだ。サスケはそういうとサクラを遠ざけた。

サスケは身を起こした。
ようやく思い出した。確か、あの時、白の攻撃からナルトをかばって ---------------------。


「サクラ、ナルトはどうした? ・・・それに、あのお面ヤロ―は・・・・・・」

「ナルトなら大丈夫よ。・・・・あのお面の子は死んだわ」

「何・・・・・・・ナルトがやったのか?」
サスケの驚いた声に頭を振るうサクラ。
「よくわからないけど、 あの再不斬をかばって・・・・・・・」


「・・・・・・そうか」

最初から、白は自分達を殺す気は無かったんじゃないか、 この千本も、ワザと急所を外して
打ち込まれていた様な気がする。
サスケの中にそんな考えが浮かんでは消え、浮かんではまた消えた。

「ナルトォ、 サスケ君無事だったよ!」
離れた場所にいるナルトに向かって、嬉しそうに大声を張り上げるサクラ。
その声に振り返ったナルトは、確かに起き上がっているサスケを確認すると、思わず倒れている白に目を移す。
「白・・・・・・おめェ・・・」

「さて、 サスケも無事だったか。 それは何よりだが・・・・」
サスケの無事を一瞬頬を緩め愉悦するカカシだったが、微かに眉を顰め前を見た。


「お前ら、何安心してるのかなぁ?」
再不斬に数人を切り倒され、逃げた者もいるとはいえ未だ圧倒的人数の侍達がニヤニヤと笑いながら近づいて来る。

「クソ忍者どもが、折角の金づるを殺してくれちゃってよう!こうなったら、街を襲って
金目のものを全部頂いてくしかねーってワケ」
侍達は戦いでボロボロになったナルト達を、嘲笑うかのように見下ろした。

「と、言うわけでおめェらが最初の血祭りだな、 死ねや!」
口々に気合の声を上げると刀を抜き、足並み揃えて走りこんでくる侍達。

「せ、 先生! こう、 バ―ッとやっつけちまう術とかね―の?」
ナルトは思わず縋りつくような目でカカシを見た。

「無茶言うな、 再不斬とやるのにどんだけチャクラ使ったと思ってんだ」
どうみても、分が悪かった。
チャクラ切れのカカシ、白との戦いで自分もチャクラの大半を失っていたし、怪我も少なくなかった。
そしてサスケは息を吹き返したものの、サクラに支えられ立ってられるのがやっと。

万事休すか、とそこにいるメンバ―誰しも脳裏によぎった時だった。


「それ以上、この島に近づく輩は、この島の町民全員が相手をだぞ!!」
その声に振り返ったタズナは目を見張った。

「ギイチ・・・・みんな・・・」
村の人々は、手に武器を持って橋の上を埋め尽くしていた。
「お前たち・・・・」
タズナは目にこみ上げるものを隠そうとはせず、震える声で言った。

「ガト―の手下どもめ、これ以上近づいたら生かしやおかねぇ!」
ギイチの声に後ろに構えていた町民が一致団結で声を上げた。そんな町民に感化されたのか、ナルトは印を切る。
残り少ないチャクラでは、数人に分身するのがやっとだったが、それでも侍達は明らかに動揺を見せた。

「その手度程度なら、今のチャクラでも・・・・・ハッタリにはなるか」
カカシは独り言の様に呟くと、影分身の術を発動した。
とたん、数十人はいるであろうカカシの分身が橋の上を横一列現れたのだった。それが侍達の気勢を完全に削いだ。
 悲鳴と共に乗り付けた船まで大慌てで逃げ走っていく侍ら。

と、村の人々からは同時に歓声が上がった。













「終わった・・・・ようだな」

「ああ」

見下ろすカカシの足元で横になり弱々しくそういったのは再不斬であった。
彼の命の炎はまだ完全には燃え尽きていなかった。

その理由を、カカシはまるで理解しているようであった。

「頼みが、ある。 あいつの・・・白の顔、 見てェんだ」

カカシは無言で跪くと突き立った武器を外し、再不斬の身体を抱えあげた。

白いものが、ふわりと空から舞い降りてきた。

「 ・・・ 雪?」

サクラは天からゆっくりと舞い降りる綿毛を見上げていた。
季節は初夏に向かう頃であり、振る筈の無い雪であった。

再不斬は降りしきる雪の中、 カカシの手に運ばれながら小さな優しい少年を想っていた。

-------------------------------------------- 白よ、・・・・・・泣いているのか?

再不斬を白の直ぐ隣にそっと横たえると、 カカシは無言で離れて行った。
全身に残った力を振り絞り、 顔を白の横顔が見える位置まで傾けると麻痺して中々動かない震える手をその頬に
そっとあてた。

------------------------------------------- ずっと傍にいたんだ・・・・・・・・・・・せめて、 最後もお前の傍で・・・・・・・。

ゆっくりと、白の美しい純白の顔を撫でさすりながら、再不斬はひどく穏やかな声で囁いた。

「・・・・・・・・・できるなら・・・・・お前と一緒の所に行きてェなぁ・・・・オレも・・・・・・・・・」

微かに残ったぬくもりのせいか、 白の目元にふわりと舞い降りてきた雪が、溶けて流れ落ちる。 まるで涙のように・・・


その光景を見ていたナルトは大きくしゃくり上げた。

「こいつ・・・・・・・・雪の沢山降る村で生まれたんだ」

「そうか。 雪のように真っ白な少年だったな」

カカシは静かにそう答えると、次から次へと降って来る天を仰ぎ見ると、 心の底で思った。

------------------------------------ 行けるさ、 再不斬。  ふたり一緒にな・・・・・・。


















それから二週間が過ぎた。

タズナの橋は完成を迎え、ガト―もいなくなった事もあり街は再び活気を取り戻しつつあった。
そしてナルト達も里へ戻る日がやって来た。

再不斬と白を葬った墓の前で手を合わせ最後の別れを告げていた。
供え物に手を出そうとしていたナルトの手を叩き、神妙な面持ちでカカシにサクラは躊躇いながら問うた。

「ねぇ、先生。 忍者って、やっぱりこのふたりが言っていた通り・・・なのかな」


「・・・そうだな」
カカシはふたりの並ぶ墓に目をやったまま、静かに答えた。

「忍者ってのは、自分の存在理由を求めちゃいけない。 ただ、国の道具として存在することが大切 -----------------
それは木の葉でも同じことだよ」

「本物の忍者になるって、本当にそう言うことなのかなぁ」
それまで、黙ってふたりの会話に耳を向けていたナルトが口を開く。
「なんか、それってばオレやだ!」
    納得のいかない表情で、頬を大きく膨らますナルト。


「アンタも・・・そう思うのか?」
横にいたサスケの問いにカカシは小さく頭を振った。

「忍者ってヤツは多かれ少なかれ、 そのことに悩みながら生きているのさ。 再不斬や、あの少年のようにな」
静かに、だが真実味にそう言い放つカカシの横顔をじっと隣で見上げると、


「アンタ--------------- ・・・・・ あの時」

「ん?」

口を開きかけたサスケに振り返るカカシ。


                         【アンタ、 アノ時オレヲ呼ンダ?】


サスケは先刻、独り闇の中にとり残された時に聞こえた声を思い出していた。

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