孤独


孤独なんてなんともない

今までそうだったように

これからだって変わらない



一族を失った時から独りだった

今 一緒に過ごしている奴らは

自分に力をつける為 共にしているだけ



まだまだ足りない

ヤツに追いつけていない。

強くなりたい  強くならなければならない

肉体的にも  精神的にも


歯を食いしばれ

最後にこの目に焼き付けた

アイツの後姿 思い出して
「ノスタルジア」【4】






数日後、再不斬達のアジトに護衛の侍を引き連れたガト―が姿をあらわした。

ガト―はいくら待っても再不斬からのタズナ殺しの報告が届かないので、憤慨し自らやって来たのだった。

乱暴にドアが開かれて、ガト―達が踏み込んで来ても、ベッドに横になった再不斬は身じろぎひとつせず、
悠然と構え只天井を見上げているだけであった。


「あんたまで返り討ちとは、霧の国の忍者は余程のヘボと見えるな。」

ガト―の左右には、磨き上げた体を自慢するかのようにもろ肌を脱いだ巨漢との侍達が立っていた。
腰に帯いた太刀はそれなりに立派なもので、それに見合った腕の持ち主である事は、
使い込まれた太刀からもわかる。

「部下の尻拭いも出来ず、何が鬼人じゃ。 笑わせるな。」

ガト―の吐く嫌味にすら再不斬は全く反応せず、左右に居た侍どもがガト―の前に出て柄に手を添える。
再不斬の態度に不遜なものを感じたらしい。

だが、ガト―はそれを制止すると、さらに再不斬に近づき、殆ど枕元まで迫ると手を伸ばして
再不斬の肩を掴もうとした。

「おい、黙っている事はなかろう。 何とか---------------------------」
手を伸ばしたガト―の手首を、白の右手が掴んでいた。

「汚い手で再不斬さんに触れるな」

少年とは思えない凄まじい力に、ガト―の掴まれた手首の骨が悲鳴を上げる。

「ぐっ・・・な 何を・・・」

異変を察知した侍達が、慌てて太刀を引き抜こうとした次の瞬間、彼らはいつの間にか
引き抜いたはずの自分の刀を、ガト―の腕を掴んでいた白に突きつけられていた。

「そんな、一瞬で・・・・・」

自分の強さに自惚れて浸っていた侍達は全身からゾッとするものを感じた。

「やめたほうが、いいよ。」
普段見せていた声色は、恐ろしく冷静で。


「・・・・ボクは、怒っているんだ。」
ガト―はその状況に悲鳴を出さないようにするので精一杯だった。


「つ・・次だ! 次に失敗をするような事があれば、ここにお前らの居場所は無いと思え!」

声を張り上げると、とガト―は侍達を引き連れて逃げるように出て行った。







「・・・・・・・・・・・余計な事を」
少し不満そうに呟いたのは再不斬であった。
彼は仰臥したまま、密かに掛け物の下でクナイを抜いていた。

「わかっています。・・・只、今ガト―を殺すのは尚早です。 今、騒ぎを起こせば、
また奴らに狙われる事になるでしょうから。今は、我慢です。」
霧隠れの抜け忍である彼らは、ようやく追手を振り払い、この地まで逃げ延びて来たところだった。
もしも、この状態で発見されれば再不斬達が無事に逃げ遂せる確立はとても低い。

「ああ・・・そうだな」
自分でも解っていたのか、再不斬が少し間を置いてから再び天井に顔を向けたまま呟いた。












翌日、霧が出ることもなく天気も上々だったため一行はタズナの村まで足を進めた。

「ねぇ、タズナさん。 なんでタズナさんは ・・・・」
タズナの近くを警護していたサクラは横目でチラリとタズナを伺うと恐る恐る言葉にした。

「-----------------------ん? ・・・・・なぜ、命を狙われとるか、と言う事か?」
先の戦いで少しずつ信頼し始めたのか、タズナは顔色を変える事無く、頷くサクラを振り返った。

「 ・・・ おい、先生よ。」 一行の後ろで松葉杖をついて歩くカカシを振り返るタズナ。

「大丈夫、か?ワシの村はもうすぐの所じゃ。」
動けない状態から少し回復したものの、宿で過ごした時間を取り戻そうと出発した一同だっただけに
流石のタズナもカカシの具合が心配になった様だった。解っている、とばかりに頷くカカシに安心し話を続けた。

「・・・・・・実際、話すよりも見てもらうのが一番じゃろう。」
重い口調で話すタズナに知りたがりサクラもそれ以上は聞こうとはしなかった。



一行は朝早く出発すれば、昼下がりには村までやってこれるだろうとふんでいたが、丁度太陽が真上にきた頃、
進む先で橋の工事が行われていた。
その工事現場の中の一人がなにやら、こちら側を指差しているとぽつりぽつりと周りの者も
こちらを見て手を振っていた。

「 ----------------- ワシの村の仲間じゃ。」
タズナはそう言うと、足を止めている一行から先に進みだした。


「お―、タズナさん!無事だったか!」
作業現場の皆は手を止め、駆け寄ってくると口々にタズナの無事を喜んだ。
それを見て、ナルト達も暫し心落ち着かせた。

「ん? どうした、ギイチ?」

輪から外れて、数人突っ立っている作業現場の男に声を掛けるタズナ。


「タズナ・・・・・・ちょっといいか?」
言いにくそうな表情を浮かべると、そのタズナと同じ位の年齢のギイチと呼ばれた男は申し訳なさそうに寄ってきた。


「いろいろ考えさせてもらったんだが、・・・・・・降ろさせてもらっていいか?」
ギイチは酷く辛そうな顔を浮かべると俯き加減にそう言った。

「なんじゃと!そんな、今になってお前まで!」

「お前とは長い付き合いだが、これ以上関わっていれば俺達までガト―に目をつけられちまう。俺には家族も居る。
・・・・・・・・なぁ、もう橋作りもこの辺りにしないか?」

「そうはいかねぇよ。 この橋は、資源の乏しいこの国に、新しい活気を与えてくれると信じて、
みんなと作ってきた橋なんじゃ」
タズナは一念の強い意志をした瞳をギイチとその仲間に向けたが、ギイチらの表情を読みとり
辛そうにギイチに背を向けた。



「もういい、解った。・・・ギイチ、明日から来なくていい。 すまなかったな。」

「タズナ!」

「もう昼だ、今日はここまでにしよう。 ・・・・さ、案内しよう。」

それまでの雰囲気を取り払うかのように大きく2回手を叩くと、それまで少し離れて見ていた
ナルトたち一行を振り返った。


現場から離れ、タズナに導かれる通りにやって来た一行は村の近場で一番の繁華街にやって来た。
だが、そこに漂う一種異様な雰囲気を感じ取った。
「・・・・・・なに、これ・・・お店なんてなんにも置いてないじゃない。 それに、仕事くださいって看板とか
物乞いの人達ばかり」
呟いたサクラの目の前を、

「泥棒!」と喚きながら走る男が通り過ぎる。
その前を、何か抱えた別の人影が死に物狂いの形相で走っていくのが見えた。
それだけではない。

道端には、年端もいかない子供が夢も希望も無い虚ろな顔で座り込み、頭を抱えるように
蹲っている姿がいくつもあった。
かと思っていると、薄汚れた子供が近づいてきて酷く卑屈にしつこく食べ物をねだって来る。
増えるそんな人間に、サクラは思わず非常食の飴玉を、ありったけ渡した。
とたん、その子供に無数の人間が群がった。子供だけでは無い。いい年をした大人が奪い合い。

「ちょっとあんたたち、いい加減にしなさいよ!」

サクラの声に群がった人々は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
飴玉を渡した子も、怯えた目で逃げ去ってゆく。


「どうなってんの、この街は・・・・」

その状況に、ナルトは目を大きく震わせる。
「ガト―が来てからこのザマじゃ。 ここの人間は、そろいも揃って皆腑抜けになってしまった。」
タズナは表情を曇らせそう言った。

「だから、今、あの橋が必要なのじゃ。 何者にも屈しない、勇気の象徴として無抵抗を決め込んだ
この国の人間に、もう一度、“逃げない精神” を取り戻させるために、な。」
沈痛な表情で語るタズナを見上げながら、一行は何もかける言葉を見つけられなかった。




サスケは、僅か1日のうちに勢いをつければ既にカカシが最初に見せる為に登った枝近くまで
登ることが出来る様になっていた。
が、サスケは横で修行を重ねているナルトを横目で見ると、内心焦りを感じていた。


--------------------------------------- あいつ、 随分追いついて来やがった


最も、ナルト自身も、いくらやっても追いつけないサスケに酷く苛立っていたのだが。


「おい、ナルト」

サスケが声を掛けてきたのは、ナルトが次の木登りの為に意識を集中してチャクラを練り上げていた最中だった。
ようやく、 “行ける” と思った瞬間に声を掛けられた所為で、 ナルトは思いっきりずっこけた。

「な、なんだってばよ! 大事なところなんだから、声なんか掛けんな!」

サスケは少し気まずそうに目を伏せると、心に決めたように顔を上げ口を開いた。

「ナルト、お前 サクラに何教わったんだ?」

ナルトは一瞬、サスケの言った言葉が理解出来なかった。
まさかサスケが自分に物を聞いてくるとは思わなかったから。

ようやく、事態を飲み込むとナルトはにんまりと満悦に笑った。

「教えな―いってばよ!」 サスケの表情が曇るのがわかり、ナルトは内心嬉しさがこみ上げた。
それもそのはず、村へ着いてからナルトは必死で木登りに精していた。サクラから教わった・・・・というべきなのか、
只、心を無心にして駆け上がる、と言う無茶苦茶なアドバイスを信じて。











「・・・・・・・・こんなところで寝ていると、風邪引きますよ。」

ナルトは日が大分落ちて、修行で熱くなった身体が落ち着きいつの間にか大の字になって寝ていた。
不意に肩を叩かれる感触があり、寝ぼけたナルトは目を擦りながら起き上がった。

「ん------------------? ・・・あんた、だれ?」
目の前にいたのは、とても顔立ちの整った綺麗な少女だった。肌は雪のように白く美しく、唇は紅を引いた様に美しい。
背中まである長い髪の毛は真っ直ぐで黒檀の様に黒く艶やかであった。
ナルトに見せる様に差し出された手には、何か摘んだ草が入った篭が提げられていた。

「ここで、ほら・・・・この薬草を・・・・・知り合いが病気なもので」

「ふうん・・・・・・姉ちゃん、大変だなぁ」

「君こそ、こんな所で何を?」少女は不思議そうな顔で座り込んでいるナルトを覗き込んだ。

「オレ・・・・・・? え―と、修行! 修行してたんだ!!」
にっこりと笑うとナルトは答えた。

「修行?もしかして、その額当てとか・・・・君、忍者かなにかなの?」

「そう見える?見える??そう、オレってば忍者!!」
今まで、初対面の人に最初から忍者と言われたことの無かったナルトは嬉しさのあまり身を乗り出して喜んだ。
少女はそんなナルトを見て微笑む。

「面白い人ですね。 ・・・・・・ 君には、誰か大切な人はいますか? 人は大切な何かを守りたいと思った時、
本当に強くなれるもの。」

「うん、それはオレもわかってるってばよ!」
ナルトはアカデミ―の時の、どんな事があっても見放す事無くついていてくれた教師のイルカや、今のカカシ、
そしてサクラや木の葉の皆の顔を思い出していた。
ナルトの答えににっこりと微笑み返すと、少女は下に置いた篭を拾うと立ち上がった。

「修行の邪魔をしてごめんなさい。・・・・・・君はもっと強くなる。きっと。 また、どこかで会いましょう。」
そう言いながら、背中を向けると少女は付け加えるように言った。

「 ・・・・・・・・・それと、 ボクは男ですよ。」

仮面を外し、髪の毛を下ろしてはいたが、その少年はナルト達の目を偽って再不斬を殺したと見せかけ、
仮死状態にし連れ去った、あの忍者------------------------白、だった。
その素顔を知らないナルトは、ただ、ただ、女だと思い込んでいた目の前の人物を呆然と見送っていた。








「何処に行った?まさか、修行をやめて逃げ出したとも思えんが。」
カカシは、サクラと共にナルトとサスケが修行しているはずの場所にやって来るとふたりの姿が無い事に眉を顰めた。


「へへ―ん、どうだ! オレってば、こんなところまで登れるようになったってばよ!」
幹の上に立つと、ナルトは自慢げに上の枝まで行き自慢げに小躍りする。 と、調子に乗っていた次の瞬間足が滑る。

「いかん!」
カカシは回復したとはいえ、まだ杖を頼っている状態だった。咄嗟に飛び出そうとするが間に合わない。


「な―んちゃって!」
ナルトは、枝の真下に両脚をくっ付けた状態でぶら下がっていた。最初にカカシが見せたものと同じ。

「この馬鹿!なにやってんのよ!」 真剣に心配しただろう、とサクラはナルトに向い凄まじい剣幕で怒鳴った。

「へへ―っ、びっくりしただ・・・・うわっ!」
今度のは冗談ではなかった。 調子になり油断したのだろう、ナルトの足が枝からゆっくり離れていく。

一度距離が開くとチャクラの力を集中しても再び密着させる事は酷く難しい。
カカシが目を見開いて、身を乗り出す。
「この、馬鹿野郎っ!」


    ナルトの体が一瞬宙に舞った


が、寸でのところでナルトの足を掴み体を支えたのは、同じように枝からぶら下がったサスケだった。

「このウスラトンカチが」
サスケの登場に目を輝かすサクラ、助けられた上にそんなサクラを見て剥れるナルト、とりあえず良くやったなと
いつもの調子の部下に複雑なため息を吐くカカシ。






その夜、カカシはナルトとサスケに修行の終わりを告げた。自らの体力がほぼ回復したと言う事は、相手にも
回復の時間を十分与えてしまったことを意味する。
カカシは翌日から本格的にタズナの護衛を再開する事に決めたのだった。

ナルトはカカシの命令を受け、村に帰ってくる娘と孫を迎えに出向いてた。

「今日はナルトが居ないが、サスケ、サクラ、タズナさんの護衛、頼むぞ。」
カカシが2人に念を押すと思い切り返事良く引き受けるサクラとは対照的に、無言で歩き出すサスケ。
一行は、橋の現場へ向おうとしていたところだった。

「・・・・・・・・・・・何か、 いる」

足を止め、口に出して言ったのは少し先を歩くサスケだった。
カカシもそれに相槌を打つ。
「そうだな」


「あ、見て!」
サクラの指差した先には、作業着姿の男たちが何人も倒れているのが見えた。
血相を変え、その場に駆けつけたタズナは、まだ息のあるその男の言葉に眉を顰めた。
「どうしたんじゃ、おい!」

「ば、化け物が---------------------」

カカシは息を吐くと、天を仰いだ。

「全く、 絶妙のタイミングだなぁ 」


と、それまで晴れていた空が、怪しくも曇ってきた。カカシはそれを見てとると、腰を低く落とし、身構えながら叫んだ。

「来るぞォ!」


既にサスケもサクラも気づいていた。
サスケは素早く移動し、カカシの背後につくと、戦いに備えて身構える。 サクラもサスケを見、同じ様に備えた。

「せ・・・・先生、これって、あいつの雲隠れの術よね」
サクラの声に答える様にどこからともなく声が響いてきた。

「一週間ぶりだな、カカシ。 しかし、相変わらずそんなガキ引き連れて・・・おやおや、また震えてるようじゃないか、
まったく、可哀相に。」
刹那、カカシ達の周りを、突然出現した何人もの再不斬が取り囲んでいた。
再不斬の言葉どおり、微かに身体を震わせながら、しかし、サスケのその顔には余裕すら感じさせる笑みが
浮かんでいた。

「武者震い、なんだがな」

それまで余裕ぶっていた再不斬の表情が、驚きに変わる。



「やれ、 サスケ。」
カカシがそう命じた瞬間、サスケは驚くべき早さで再不斬の水分身達の間を駆け抜けていた。
そして再び元の位置に戻って構えを取ったサスケの周りで再不斬だったものが、水となって崩れ落ちた。

「ほう、水分身を見切ったか。 強敵出現ってところだな、 白」
防御にも攻撃にも十分な間合いを置いた場所に、霧の中から再不斬が姿をあらわした。
その背後に従うは仮面をつけた

先日の少年であった。

「あ―あ、 予感的中か。」 カカシが冷静に言った。


「あのお面の子、どう見たって再不斬の仲間でしょ! どの面下げて、堂々と出てきちゃってんのよ、アイツ!」
サクラが目を吊り上げて前に出て行こうとするところを、割って入るように制したのはサスケだった。

「あいつは、オレがやる」
サスケは “白” と呼ばれた仮面の少年に目を据えると、軽く腰を落とした。

「ヘタな芝居しやがって。 オレはああいうスカしたガキは一番嫌いなんだ」

構えるサスケの後ろで “カッコイイ、サスケ君”と黄色い声を上げているサクラ。
自分はスカしたガキじゃないのか、 と心中突っ込みながらカカシはサクラを見た。
多分、ナルトが同じ事を言ったらこの子は即座に張り倒してるんだろうな、と。



白はサスケを見やりながら、まるで他人事の様に言った。

「すごい少年ですね。 いくら水分身の術が本体の十分の一の力しかないとはいえ、あそこまでやるとは・・・」

「だが、先手は打った。 ・・・行け」 再不斬のその言葉と同時に、白はその場からフッと姿を消した----------- 
・・・と、次の瞬間、
突然目の前に出現した白に、 しかし、 サスケは平然と応じていた。
それを見たカカシとサクラはタズナを挟んで防御の陣形をとった。

「君を殺したくはありません。 このまま引いてくれ、と言っても無駄なのでしょうか」
突き出した右手の千本をサスケに受け止められた格好で、凄まじい力のせめぎ合いを続けながら白は落ち着いた
静かな声でそう呟いた。

「アホ言え」

サスケもまた、その中で余裕の笑みを浮かべている。自分の力を上げるための生死をかけた実戦、サスケは
一瞬身震いをした。

「やはりね・・・・・・でも、君はボクの次に仕掛ける技にはついてこれないでしょう。 更に言えばボクは先手をふたつ、
既に打っている」

「ふたつの先手だ?」
サスケは微かに目を細めた。

「ひとつは、君が破ったお陰で辺りにばら撒かれた水分身の変じた水。 もうひとつは、ボクが君の片手を封じたこと。
君は、ボクの攻撃をただ防ぐだけになる」
言うや否や、白は自由になっている左手で恐ろしいスピードで印を結い始める。
それはカカシすら目にした事の無い秘技であった。
「片手で印を・・・・・・」

「秘術、 千殺水翔!」

印を結び終わると同時に、白の右足が地面を蹴る。
と、周囲に散った水が、細長い針のように形を変えながら宙に舞い上がる。
それは組み合うふたりを包み込むようにその鋭利な先端を内側に向けると、白が後方に飛び退ると同時にいっせいに
サスケに向かって襲い掛かってきた。

その瞬間、サスケは目を閉じると印を結び、足の裏に意識を集中した。
直後、衝撃者と共にサスケの元に水の針が殺到する。だが、再び水が飛び散った後、
サスケが立っていた筈の場所には、何も残ってはいなかった。

「・・・消えた??」

それに気をとられた白は頭上からの手裏剣に気づくのが遅れた。 かろうじて、寸ででそれをかわすが、着地した白は
背後から予想もしなかった声を聞いた。

「案外、トロいんだな」
いつの間に回り込んだのか、クナイを構えたサスケが白の背後に足の裏に爆発的な量のチャクラを集中して、
そのまま宙に舞い上がったのである。周りを取り囲んだ水の針は、唯一、頭上だけは覆っていなかった。


「これからお前は、オレの攻撃をただ防ぐだけになる」

サスケはワザと白が先程言った台詞をそのままつき返した。

目にも止まらぬ恐るべき早さであった。
白の背後から襲い掛かったサスケは、仮面の少年に何もする間も与えず一方的に攻撃を続けた。
振り下ろしたクナイをかわされると見るや、指先だけのスナップでそれを打ち出し、至近距離からのその攻撃を白が
紙一重かわすと態勢を崩した白に、十分に体重の乗った重い蹴りを叩き込んでいた。
白は思ってもみなかったサスケの蹴りに跳ね飛ばされると、殆ど再不斬の立っている場所まで吹き飛ばされていた。


「なるほど・・・言うだけはあるって事か」 再不斬が言うとカカシが口を開いた。
「うちのチーム、なめてもらっちゃ困るな。 サスケは木の葉の里ナンバ―ワン ル―キ―だし、
このサクラは里一番の切れ者。」

だが、再不斬は楽しげに目を細めて笑った。
「だとよ。 困ったな、白。 このままじゃ、返り討ちにあうぞ」
白は僅かに間を置いてから答えた。


「残念です・・・・・・本当に。」 そう言うや否や、立ち上がった白の身体から冷気の白煙が漂いだす。

「これは・・・・・・冷気? 何だ?」
戸惑うサスケの目の前で印を結ぶと白は術をなにやら唱えた。

「秘術、魔鏡氷晶」

と、地面の先程の濡れに変化が起こった。
サスケを囲む水面が波打ったかと思うと生物のように蠢きながら、いくつもの水の帯が天を指して龍の様に伸び始める。
白が漂う冷気にひと触れすると、それらは水の結晶と化しながら、大きく薄く瞬く間に成長していった。

「 !! 」
    鏡のような面を向け、幾枚もの氷の壁がサスケを取り囲んでいた。

白はその氷の1枚に近づくと、両手を押し付けた。すると白の身体は吸い込まれるように氷の中へ消え、
同時にサスケを囲んだ氷の鏡面全てにその姿が映し出された。




「くそっ!」

カカシはタズナの元を離れ、サスケを取り囲む壁に向かって駆け出した。
だが、その前に再不斬が立ちふさがる。

「お前の相手はこのオレだろ? どのみち、あの術が出たら、ヤツは終わりだ」

「クッ・・・・・!」
カカシは歯噛みしたが、サスケを助けつつ戦えるほど、再不斬は甘い相手ではなかった。


サスケを取り囲んだ氷から、いっせいに白の声が響く。

「それじゃ、行きますよ。 ボクの本当のスピ―ドをお見せいたします。」
相手を読めないまま、サスケは身構えた。同時に、鋭い痛みがサスケの二の腕、足に走った。
次の瞬間、 サスケの周囲を、疾風----------------いやそれよりもっと早いものが舞っていた。


「うぐうっ!」
ほとんど同時にサスケは全身を切り裂かれていた。


「サスケ君っ!」
タズナの護衛についていたサクラは叫ぶと、微かに震える声でタズナを振り返った。

「ごめんね、 タズナさん、 私・・・・・」 タズナを見ながらもサスケの身を案じてそちらを気にするサクラにタズナも

「わしゃかまわん。 行って来い。」
力強く頷くと、サクラはサスケの元へ向かって全力で駆け出しながら、抜き出したクナイを放った。
あの術の正体はわからないが、氷の壁がなんらかの重要な鍵になっていることは確かだった。
サクラは氷の壁を破壊に力を注ごうとしたのである。

だが、白は氷から身を乗り出すとサクラのクナイを受け止めていた。

「かわされた!」

しかし次の瞬間、白は態勢を崩すとそのまま氷の中から転がり落ちた。どこからか飛来した手裏剣が、
白の仮面を掠めたのである。

橋の外れに派手な白煙が上がった。全身、血まみれになって倒れたサスケの顔に苦笑いが浮かび、白が
その方向に身を向ける。
白煙を割って派手に登場したその姿は------------------------------------------------------


「うずまきナルト、ただいま見参!!」
素早くクナイを構えると、ナルトは手裏剣を持ち構えた。 だが、再不斬の放った手裏剣は、ナルトの元に届く寸前、
横合いから飛んできた千本に打ち落とされた。
「何をする、白」

「ごめんなさい、再不斬さん。 でも、彼らとは、ボクの流儀でやらせてください。」

「手を出すなって事か。 相変わらず、甘いヤロ―だ お前は」
サスケは自分の傷をあらためながら再不斬の言葉に内心頷いていた。

「甘い、か・・・・・・確かに全部傷は急所をはずしてはいるが。まさか、なぶり殺しにでもするつもりか?」
サスケは、自分を取り囲む鏡面のような氷の壁を見回した。これが、あの得体の知れない攻撃の要であることは
違いなかった。 だが、その手段がわからない。


よく、考えろ・・・どこかに術を解く鍵があるはずだ、 とサスケは体力を再び貯めながら見渡した。
こうなれば自分が内側から、ナルトには外から攻撃してもらい様子を伺うしかない。
そう、サスケは判断しナルトに伝えようと顔を上げた時だった。

「よっ、 助けに来てやったぞ!」

目の前にナルトがいた。

「お前ってやつは・・・・・・」 最悪だった。
これであの白という少年の罠にふたりともまんまと落ちた事になる。
しかもカカシは体調が良好ではない上、再不斬とのにらみ合いが続いており、助けに動けない状態であった。

サスケは、再び鏡の向こうに姿を見せた白に向き直るとクナイを投げつけようとした。
 が、 次の瞬間聞こえてきた白の声は全く予想のしない方向からであった。

「こっちだよ」
背後で悠然と見つめる白にサスケはわが目を疑うように、たった今まで姿があった鏡面を見返した。
確かに、今の今まで白が映っていたはずの鏡には何も映っていない。

「ど、どうなってんだァ、これ!」
全く事情の呑み込めていないナルトが隣で騒ぐ。サスケはその構造を必死になって考えた。

「移動した、のか? クソ、それならば・・・」
サスケは、周りを囲んだ鏡が氷で出来ていることを思い出すと、手早く印を組み始めた。

「火遁、 豪火球の術!」

鍛え上げられたチャクラによって生み出された、以前よりも確実に威力の増した炎がサスケの口から吐き出される。
一瞬眩しい炎の向こうに氷の壁が見えなくなるが、炎がおさまると鏡は何事も無かったかの様にそこに
悠々と存在した。

「なに」

「そんな火力でこの氷は溶かせませんよ」
再び、見えない攻撃が炸裂した。 ナルトも巻き込んで白の攻撃がまさに一瞬で彼らを激しく傷つけていく。

「くそっ!分身の術か! 本体はどこだァ!」
ダメージが浅く、サスケよりタフさは一枚上のナルトは素早く身を起こすと、鏡の向こうに映し出された白の姿を捜した。

「君達の目では、ボクの動きは追えませんよ」

「それならァ!」
叫ぶや否や、素早く印を結んだナルトはふたりを囲んだ鏡に向かって、作り出した己の影分身たちと共に
いっせいに飛び掛った。
ナルト達の固めた拳が鏡に向かって振り上げられたその刹那、電光石火の如く鏡から飛び出した白は、
千本を構えてその脇を通り抜ける。
瞬時に別の鏡に移動すると、白は再びその鏡に迫った別の分身に向かって飛び出した。

白はそれを分身の数だけ繰り返す。
何が起きたのかもわからないうちに影分身たちは、白の放った攻撃により全て消滅させられていた。
ナルト本体も多大なダメージを受けて地面にドサリと落ちた。

「この術はボクだけを映し出す鏡の反射を利用した移動術。君たちの動きはボクにしてみれば止まっているかのよう」



再不斬の肩越しに、氷の壁の向こうの戦いを見守っていたカカシは、白の使う術の正体に気づいていた。
「まさか、 あの少年があんな術を体得していようとは・・・・・・」

「ククク・・・・」
    再不斬が喉を鳴らす。

「あんな術?」
    サクラが横で尋ねた。

「血継限界だ!」


    【 血継限界 --------ケッケイゲンカイ-------- 】
         その生まれにある人間だけが使うことの出来る、特殊な能力に基づいた術の事だった。
         血継限界のひとつである写輪眼が、一部の家系にのみ現れる特異体質であるように、
         白の用いる術もまた、同じ血脈の人間以外には使うことが不可能な特殊なものであった。


「深き血の連なり・・・・・超常固体の系譜。それのみによって、子々孫々と伝えられてきた類の術なんだ、あれは。」

「え、 それじゃあ・・・・」

「そう、サクラ。 あの術は、オレの写輪眼を以ってしてもコピ―不可能。 破ることさえできないだろう。」
そう話すカカシの顔色はとてももどかしそうであった。



「ちくしょう・・・・だから、なんだってんだ そんな事で特別扱いしやがって・・・」
サスケもまた、うちは一族の末裔。
その特異体質を持つべき血によって好奇の目に晒された事も少なくなかった。

「こんなところでくたばってられっか! オレには叶えなきゃなんねぇ夢があるんだ」
横で傷つき転がるナルトは悔しげに白の姿を見上げていた。

    【叶えなきゃいけない夢】

そのナルトの言葉に反応するサスケ。
    自分もやられる気は毛頭なかったが、ナルトの言葉に自分のやらなければならない事を思い出す。
    サスケの脳裏に浮かぶは、一族の屍が転がる中去ってゆく後姿-----------------------------------------



白の中では数日前ナルトと出会った森の中での出来事がよみがえっていた。 まっすぐな目の少年だった。
そしてそれは今も全く変わらない瞳。

    だが、白にもまた叶えたい想いがあった。

全てを失い、路頭に迷い、ただ、無気力に死を待つだけだった白を拾ってくれた男が今の白にとって、全てだった。
「ボクには忍者の心を持つことは難しい・・・・・・・出来れば、君達の事は殺したくないし、君達に殺されたくもない。
それでも君たちが向かってくるのなら、僕は心を刃で殺し、忍者になりきる。」

それは、ナルトの言葉に対する、 白の答えだった。

「この橋が君達の夢へと通じるものならば、僕にとってもまた夢へと繋がる場所・・・・恨まないで下さい。
ボクは、ボクの大切な人を守りたい。 その人のために働き、 その人のために戦い、 その人の夢を叶えたい。
それが、 ボクの夢なんです。」
白は千本を構えたまま、すうっと上半身を沈み込ませる姿勢をとった。

「そのためなら、ボクは忍者になりきる。 君達を殺します。」 そう言った白の気は次の瞬間、凄いものとなった。



白の言葉を耳にしたカカシが目を細めて呟いた。
「くそ。 あれでは、あいつ等あの少年に絶対勝てない」

「え、ど・・・・どうして?」
サクラを横目で見るカカシは続けた。

「あの少年は、人を殺すと言う事の意味を知っている。人を殺めると言う事が何を意味するか、
それを知って戦っているんだ。だが、 あのふたりにまだその精神力は ない。」

「ククク・・・平和ボケの木の葉のような里では、本物の忍者が育つわけがない。
人を殺す、 それが忍者にとって最も重要な事。それを後回しにするような連中ではな。」

カカシは再不斬を睨み返すと、 左目を隠した額当てに手をかけた。

「悪いが、 一瞬で終わらせてもらうぞ」

「ククク・・・写輪眼、 ・・・・・芸の無いヤツだ。」
刹那、 再不斬はそう言うとゆらりと揺れた。
大刀を抜く代わりに、 隠し持った短剣で写輪眼を発動させる隙を突いてカカシに突きかかる。
真っ直ぐに心臓を狙ってきた一撃をカカシは右掌で受け止めていた。

ぽたぽたと血を流しながら、 カカシは含み笑いを漏らす。
「芸が無いと凄んでみても、 やはり写輪眼は怖いか、再不斬。」

「ククク・・・忍者の奥義はそう何度も見せるもんじゃないだろ」 短剣を突き刺しながら再び喉を鳴らす再不斬。

「あの子に感謝しろ。 二度もこれを拝めるのは、お前が初めてだよ。 最も、三度目は無いがな。」

「仮にオレを倒す事が出来ても、 お前は白に勝てねぇよ」 再不斬は残忍そうに目を細めると、 言った。

「あいつは、 オレ自らガキの頃から徹底的に戦闘技術を叩き込んできた。
言ってみれば人の命も情も全て捨てて戦う、完璧なる戦闘マシンだ。
その上、やつにはオレすら敵わない切り札がある。血継限界、 という名の恐るべき秘術。」
言いながら、 再不斬は突き出した短剣を引き抜く。
僅かに距離を置くように後退しながら、再不斬は嘲笑うかのように言った。

「おめぇの連れてるスクラップどもとは、 モノが違うんだよ」
カカシは額当てを握った腕に力を込めると一気に引き上げた。
額から瞼、頬に縦に大きく1つの切り傷と共に写輪眼が姿をあらわす。
「他人の自慢話ほど、 退屈なものは無いな」

「まぁ待て。 話し序にお前の台詞を借りて、 もうひとつ自慢話をしてやろう・・・
----------------------お前は前に確かこう言ったな?」

「何?」

「ククク・・・オレは、 その台詞を猿真似したくて、 ウズウズしてたんだぜ」 再不斬の顔に楽しげだ笑みが浮かんだ。

「 『言っておくが、 オレには二度と同じ術は通用しない』 だったか?」



カカシの目が細められる。 再不斬は、印を結びながら続けた。

「オレは既に、 お前のその目の、 くだらないモン全て見切ってるんだよ」
言うや否や、 再不斬を中心に濃密な霧が湧き上がる。

「霧隠れの術!」

たちまち、たちこめた霧は再不斬の姿を覆い隠してなお、その濃さをましていく。

「サクラ! タズナさんのことは頼んだぞ、 こっちはこれで手一杯だ」

「わかったわ、先生! タズナさん、 私から離れないで」
サクラは素早くタズナの元に戻ると、殆ど密着するようにしながら、姿勢を低く落とした。


カカシは霧の向こうから飛来してきた無数の手裏剣を、 手にしたクナイ一本で全て弾き飛ばした。
    と、 背後から再不斬の声が響く。

「流石は写輪眼。 見えない攻撃を全てかわすか・・・・だが。」

その瞬間、 カカシの脳裏に閃くものがあった。 相手のそのものの狙いはなんだったか思い出す。
薄笑いを浮かべた再不斬が、タズナとサクラの背後に現れたのは案山子が飛び出すのとほぼ同時だった。
そのまま、音も立てず、タズナの背後から大刀首切り包丁を引き抜いて襲い掛かった。


かろうじて再不斬に追いついたカカシは、 ふたりをかばうように必死の形相でその刃の下に入り込む。

「遅いっ!!」

「先生ェ!」

一寸先は濃い霧の中、 サクラの悲鳴がコダマする。






サスケとナルトは、 白の鏡が囲む結界で闘志を燃やし、まだ生きていた。
白の恐るべき動きを見切ることは出来ないままだったが、 なんとか決定的な一撃をかわしながら、
反撃の機会を伺っていた。

だが、 ふたりとも既に何本もの千本をその身体に突き立てられ、 苦痛と疲労で既に限界に達しつつあった。
自然と、ナルトをかばう様に立つとサスケは、 頭上の白に挑むような目を向けて睨んだ。

「君は本当に凄いですね。 だけど、 次で終わりにしましょう。」

酷く追い詰められた状況下にありながら、 サスケの心は妙に落ち着いていた。
確信めいたものは無かったが、次にはあの動きを見切ることが出来るような気がした。

サスケは両目に全神経を集中すると、 白の動きに全ての感覚を研ぎ澄ました。
白の攻撃は、 例えるならばまるで雷の電光だった。

サスケは、 はっきりとそれをとらえると、 視界に浮かんだ攻撃の軌道から、勢い余って、ナルトの身体を
放り出しながらも、サスケは何とか滑る身体を止めると、 再びその瞳を白に向けた。
仮面で表情は全く読み取れないが、白は一瞬たじろいだ様に思えた。

瞬間、サスケの双方の瞳が深い闇の様な黒い瞳から真紅の色に変わった。
虹彩の左右に浮かび上がった神々しい模様。

「----------------------! 写輪眼・・・そうですか、あなたも血継限界の血を。
だとすれば、これ以上長引かせるわけにはいきません」
チャクラを大量に消費する白の術は時間をかける戦いには向いていない。しかも、サスケは既に白の動きを捉えつつ
これ以上時間をかければ、白は敗れる可能性が出る、と危険を感じ取った。

「これで、決めさせてもらいます!」

そう声を掛けると同時に、鏡面から白が飛び出した。
今までは集中して目を凝らしてやっと光が動く位の凄技として見えたものも今のサスケの目には酷くスローモーション
のように見えた。
白の次の動きの視線すら見切ったサスケは、白の狙いが自分ではないことに気づいた。
倒れたままのナルトに向かって一直線に飛ぶ白にサスケは無我夢中で全力、身体を飛び込ませ

    そして-----------------------------------------------











再不斬の短剣は、カカシの胸に浅くは無い傷を作った。音を立てて、カカシの胸元から血が流れ、落ちる。

「かろうじてかわしたか・・・・・だが、随分と動きが鈍ってるな。御大層な目を持っていてもガキどもを助けたい一心で
頭が鈍ったか?読みが追いついてないぜ?」

カカシは再不斬のそれを無視した。ただ、じっと再不斬を見ていた。

「もっと楽しませてくれ、カカシよ。仮は楽しく返したいんでな。心配しなくたってあのガキどもはとっくに白が殺してるよ」
布の下からぐぐもった不気味な声が不気味な言葉を吐く。

「じょ、冗談じゃないわよ!」サクラが悲鳴の様に叫ぶ。
「サスケ君も、ナルトだってあんなガキにやられたりしないもん!」

「そうとも。オレはあいつらを信じてる。ナルトのタフな意外性・・・そして、サスケは
木の葉の最も優秀な一族の正統後継者!」

「なに・・・? ・・・・まさか」再不斬の眉がピクリと動く。

「そう・・・・・やつの名は うちはサスケ。
あのうちは一族の直系の血-----------------------------血継限界をその身に宿す正真正銘の天才忍者だ」

流石の再不斬もその名を聞いた途端、顔色を変えた。

「だがそれは、白とて同じこと! やつの秘術を破った者はひとりといない。たった、ひとりもな。」
顔色をもどすと、そう言いながら再不斬は再び濃くなった霧の向こうに姿を消していった。













どの位、時がたったか----------------------------------------------------

ナルトは漸く意識を取り戻し、かすむ冷気の中にぼんやりと倒れこんでいる白の姿が目に入った。




「・・・・・・・・まったく・・・・・・・お前は・・・・・・・・・いつまで経っても、足手まといだぜ・・・・・・・・・・」
ナルトは自分の目の前から聞こえてくる声に視線を移すと声を掛けた。

「サスケ!やったな、お前----------------」
次の瞬間、ナルトは声を出すのも息を吸うのも忘れた。

サスケの全身には無数の千本が突き刺さっていた。それでも尚且つ、ナルトを守るかのように立ち尽くしていたサスケ。

「・・・なんて顔、 してやがんだ ウスラトンカチ」
立っているだけでもやっとのはずなのに、ゆっくりと振り返ると微かに微笑みそう憎まれ口をたたくサスケに
ナルトの顔がくしゃくしゃと歪んでいく。

「な・・んでっ!」


               【ホント、なんでだろうな。オレもわかんね―よ。】


「知るかよ・・・・・そんなこと・・」
グラリと身体が揺れると、ナルトに支えられる形でサスケの身体は地面に倒れこんだ。
サスケが再び目を開くと、ガタガタと震え大粒の涙を必死に堪えくしゃくしゃの顔をしたナルトがいた。


だけどサスケの脳裏には短い期間ながらも、密度の濃いナルトと過ごした日々が去来した。
一人ぼっちの自分だった。  だが、 ナルト  サクラ  カカシ・・・・・
あいつらといた過ごした僅かな時間、 いつの間にか生活の一部になっていてそれが当たり前の様になっていた・・・・・・

    それはとても心地の良いものだった。 
    ・・・だが、
    
    ------------------------------------怖かった。

    父さん、 母さん ・・・・・ そして ・・・
    一瞬にして消えてしまった-----------------------------

    期待すれば、裏切られるオモイ。
    心地よさになれるのは、怖い。
    再び、この心に “特別な人達” を作るのは。 作られるのは。
    そのためにも、人に接触しないようにしてきた。
    特別な人達の “死” はもう嫌だ


「・・・・・お前、・・なんて・・・大嫌いだったのに・・よ・・・・」 サスケは麻痺してくる目をそっと開けるとそう呟いた。

「なんでっ・・・なんでオレなんか・・・・・・よけ―なこと、しやがって!」

短く咳き込むと、ため息交じりにサスケは答えた。
「知るか・・・・・よ・・・身体が・・・・勝手に・・・・・動いちまった・・・・んだ・・・・・・あの男を・・・・兄貴を殺すまで・・・・
死んでたまるかって・・思って・・たの・・・・に・・・・」

サスケを支えていたナルトはドキリとした。
自分とサスケの肌の触れた部分、 サスケの身体がだんだん冷たくなっていくのが嫌でもわかったから。

「---------------------------------お前は、死ぬな・・・」
そう呟いたと思ったら、 サスケは弱く息をひとつ吐き、そのままそれきり動かなくなった。

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