“今ならコイツを殺れる”
イザークはその囁きに誘われるがままに、気を失っているキラの首に手を伸ばすとその手がキラの首に回される。
温かくそれはトクントクンと大きな脈をうっていた。
生きている証拠。
だが、イザークは指一本一本に力を入れて、晩年の思い食い込むよう首を締め上げていく。
“これで、コイツは死ぬ。今までの恨みもこれで・・・”
Je te veux U
「・・・ぐっ・・・・」
「!」
一気に喉への圧迫がかかった為、その華奢な身体からは苦しそうな声が漏れたのでイザークは思わず一瞬力を緩めた。
その瞬間キラは一度に空気を吸い込んだため苦しくて体をクの字にして咳き込む。
キラは意識が朦朧としていた。涙でぼやけた視界にうっすらと映る人影。
その目にはぼやけて赤いパイロットスーツが滲んで見えた。
「・・・誰・・?・・・・・・アス・・ラン?」
「違う」
「え・・・・?」
耳に飛び込んできた声が、予想していた声とは全く違い低いハスキーボイス交じりの声が返ってきたので、
キラは瞬時に意識を取り戻した。 そして何があったのか、も・・・。
「・・・・・・んでなんだ!なんでなんだ!」
キラは一足離れてたイザークに飛び掛った。だが、それは交わされ、逆にイザークに銃を突きつけられる。
「・・・・なんであの機を討ったんだ・・・・」
キラは涙を流しながら力無くしゃがみ込むと砂地に膝をついた。
イザークは無言でそんなキラに照準を向けたまま見下ろしていた。
「貴様・・・この傷が分かるか・・・?貴様に付けられた傷だ!」
そう叫ぶと銃の柄でキラを殴った。
「殺してやるっ」
殴られた頬を押さえ倒れ込むキラに再び正確に照準を合わせて、ゆっくりと引き金を引く。
倒れこんだキラの目の前にはあの時少女がくれた折り紙の花がクシャクシャになって落ちていた。
キラは手を伸ばしてその折り紙を大切そうに自分の身の方へ引き寄せた。
「・・・・・・・・・あの機には・・・・・・民間人が乗っていたんだ!!」
イザークはキラのその悲痛な叫びに引き金を引く手を緩めた。
「な、に?」
「あの軍機には、戦争には関係ない一般の民間人が沢山乗っていたんだ!それを・・・それを、あなたが――――!!」
思っても居なかった事態にさすがのイザークも動揺した。
途端に、額に受けた傷が痛み出した。
そんな異変にキラが顔を上げる。 初めて相手の顔を見た。
切り揃えられた綺麗な銀髪・・・そして端正な顔には大きな痛々しい傷がまだ赤々としていた。
「・・・怪我、してるんですか?!」
キラは先刻の自分が受けた傷も忘れて、イザークに駆け寄る。
「触るなっ!!」
イザークは憎悪と殺意に満ちた瞳を一身にキラに向け、再び銃をキラに突きつけた。
護身兼戦闘用に身に着けていたワルサーPPK/Sがギラリと光る。
キラはそこで足を止めると、それ以上は何かする様子はなかった。
その時丁度、先程デュエルから発信させた緊急の信号返信が冷静を失いかけたイザークの耳へ飛び込んだ。
お陰で冷静を取り戻す事が出来た。
「貴様も、俺が憎いんだろう?殺したいんだろう?・・・アマちゃんだな、そんな腑抜けで良く軍人になれたもんだ。」
イザークは見下す様にキラに吐きつける。
「ハッ、残念だな、これからザフトの救援隊がここへ来る。わざわざ、俺が手を汚すことも無い。
貴様はザフト軍によって拘留され、裁かれればいい。」
「死よりも辛い裁き、を。」
イザークは卑下た笑みを浮かべる。
憎かった。
戦争とは無縁そうな奴なのに、自分やクルーゼ隊4人でかかっても落ちなかった相手。
自分は今まで周りに認められようと血の滲むような努力をしてきた。それを易々と目の前の相手は―――――
今まで積み上げてきたものが、プライドと共に一瞬にして崩された。
その憎たらしい相手が目の前に居る。
照準のファインダーを通して再び、キラを見る。
大きく見開かれた紫色の大きな瞳が自分を睨み付けていた。
「・・・・・僕は!・・・」
『・・・GTA-X102・・・・・聞こえるか?応答願う。』
まもなくすると周波数が合ったのか、通信がクリアーに入ってきた。
それにより、キラは何か言いたそうな顔をしたが言葉を飲み込んだ。
「認識番号HD803C472、イザーク・ジュール。」
意識はキラに向けたまま、軍IDに続けて自分の名前を応える。
『所在地を確認した。今から回収に向かう。現在の状況は?』
「・・・戦闘でGTA-X102デュエルG前頭部破損、メイン、サブ電源共にダウン。起動不可能。
GTA-X102デュエルパイロット顔に負傷、至急その治療要す。」
『・・・了解した。以上か?』
「・・・・・先の戦いで地球連合のGAT-X105ストライクGとそのパイロットを抑留。」
『了解。只今より回収班をそちらに向かわせる。待機せよ。』
そう告げると通信は切れた。
相変わらず、紫の大きな瞳が悲しそうにイザークを見上げていた。
認めてくれるだろうか、軍に忠勤している両親。
見返してやることが出来るだろうか、軍や周りの人間を。
そして、再び取り戻す事が出来るだろうか、あの人の信頼を――・・・。
――― これで全てが終わる ―――
イザークは焦燥にも似た達成感を一度噛み締めると、容赦なく照りつける砂漠の空を見上げた。
全てが終わると思われた出会いは、全てが始まる出逢いだったとは未だ知る由も無かった。
Tへ戻る。 Vへ続く。
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《途中感想》
キラたん、ザフトへ・・・ひぃぃぃ〜、王道でつか。
しかも、今更??
アスランやニコルたん、ディアッカ早く出したいv好きなんだなぁ、彼ら。
そんでもってフラガさんやマリュさん達地球連合の方達も。。。
あ、「Je te veux」はフランス語で「あなたが欲しい」という意味で(汗)
タイトルって長編だとなかなか決められないものですね・・・・む〜
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