赦され得ぬ安らぎは 己の過去の思い出のみ 在りけり

蛍 火 追 憶

蛍よ

淡い灯を点しながら 小さな肩に舞い降りた
色あせぬお前の素顔 夜半の夢に華やかに


独り闇を恋で飾り そして散った蛍よ


私の心の中の弱さ 包んでくれるお前の優しさ
今も私を締め付けている 刹那に触れた君の儚さ


笑い顔 ほころぶ顔 思わず見せた悲しい顔
どれも皆君色に 青緑く燃ゆる恋の灯


君へつなぐ橋のたもとに 独りこぼれ蛍


消ええゆく自分に気づかずにいた 引き留めることはできなかった
肩に触れた手のひら つなぎ止めること、できなかった
私の中に真の灯火 与えてくれた君の狂気の儚さ
今も私を締め付けている 刹那に消えた闇夜の蛍火

我ら“暁”に 里無し -------・・・

自らのクナイにて

要らぬ 想い 絶ち捨てよ

愚かな名残 残すまじ -------・・・

「里か・・・そう言われてみりゃ私にもそんなものが有りましたっけ。
今となっちゃ、どうでも良い事ですがねェ。」

何の躊躇いも無く、クナイで自ずの額当てに
“暁”への忠誠心、自ずの里には二度と戻らないとの意味を籠めた
真一文字の傷を掘る

今まで自分が生い育った里の象徴に・・・






「・・・? イタチさん?」

とっとと忠義の印を刻んだ鬼鮫は、微動だせずに己の木の葉の額当てを
握り締めているイタチに声を掛けた。







久しく見る己の里の額当てに遠き日の風化した記憶が蘇る ------------- ・・・





























「ただいま―っ!」

夕刻、サスケは元気良く帰宅すると
普段は任務で居ない筈の兄・イタチが台所の椅子に座っていた。


「・・・あっ、兄さん!! 今日は早かったんだね!」

「あぁ、今日は任務が早く済んだんでな」


サスケは、兄イタチの姿が眼に入った途端に嬉しさの余り、
自分の掛けていた鞄を放り投げて兄の隣の自分の席に登り座った。

「じゃあさ、じゃあさ、手裏剣の修業に付き合ってよ!」

大好きな兄の存在に、声弾む。
普段任務で家を空ける事の多い兄が寛いでいる事は皆無。
この時ばかりにサスケは駄々っ子になってみたりするのだった。


「あら、おかえりサスケ。・・・ちょっとおつかい行って来て頂戴な。」

家事をあれやこれややっていた母親が洗濯場から手を拭きながら兄弟の居る
台所へ入ってきた。

「え―っ!いつもオレばっかり!」

サスケは頬を膨らませる。

「そんな事言わないの!イタチは日頃任務で忙しいんだから」

尤もらしい事を母に言われ、益々サスケ頬は膨らむ。


「・・・・・ホラ、サスケ」

母とサスケの会話を隣で伺っていたイタチは立ち上がると
“行くぞ” とばかりに自分の手を出した。

「えっ、兄さん一緒に行ってくれるの?」

華が咲いた様にパッとサスケの表情が明るくなる。

「あら、すまないわねイタチ・・・」

全くもう、といった風にサスケの頭を軽く小突く母を後に使いに出るイタチとサスケ。



















右手に枯れススキ、左手をイタチに引かれながら買物の帰り道、
チラチラと兄の横顔を伺っていたサスケは意を決したかの様に兄に質問をしてみた。

「ねェ兄さん・・・・ちょっとお願いがあるんだ!」


「 ・・・・・・ 何だ」



「額当て、 ちょっとだけ着けさせてくれないかな」

一人前と認められた証でもある額当て。
まだアカデミー在学中のサスケにとって、その証は何よりもの憧れ。
早く着けてみたくてしょうがが無かった。


「 ・・・・・・・・・・・・・・ 」

無表情で自分を見下ろす兄に段々と顔を曇らせる。

「 ・・・・・ ダメェ〜?」


暫し寡黙決め込んでいたイタチだったが。

「目を瞑れ、サスケ」

「!」

兄の一言により、顔を輝かせ嬉しそうにギュッと目を瞑るサスケ。



「♪♪」

兄からの言行をまだかまだかと目を瞑りながら待った。





















トンッ







「!?」

期待ウラハラ、いきなりオデコを小突かれサスケは目を開ける。

「期待させてすまないな。・・・これはまだお前には早すぎる。
額当てを着けるという意味、事の重さ、しっかり学ばなくてはダメだよ。」


“チェッ”とオデコをおさえるサスケの顔を中腰で覗き込み、優しく微笑むイタチ。
子供だけに兄の言う事の重要さを汲み取れなくて拗ねて下を向くサスケに
優しく頭を撫でると、

「そのかわりサスケをいい所に連れて行ってやろう」

“本当?!” 再び顔に華を咲かせるサスケの手を引き再び歩き出す。












「・・・ねェねェ兄さん、いい所ってドコ?」

待ちきれず進むたびにイタチに聞くサスケだったが、“もう直ぐだ”とかわされていた。
進むに連れて辺りは暗い畑道。

「こんな所に何があるっていうのさ〜」

周りのありふれた田畑に顔を顰めた。
イタチは無言でサスケの手を引き、先を進んでいたが。














「・・・・・ホラ、 サスケ、 あそこ」

突然降ってきた兄の言葉に顔を上げると。









わぁぁぁぁぁぁっ!!!!




サスケは目の前の絶景に駆け出した。



2人の目の前にあったもの、それは・・・・・


「兄さんっ、コレ何?!」


「・・・・・これは源氏蛍って言うんだよ」

途中立ち止まりイタチに聞いたサスケは再び光が群がる草むらへ走り出した。
すると群れだった蛍がパァ〜ッとひとつひとつ舞い上がる。
その光景といったら、まさにこの世のものとは思えない絶景の異景であった。


わあぁぁぁぁぁぁぁ--------- っ!!!!


はしゃぎ回り、無邪気に自然の“光”の中を走り回るサスケ。



「兄さん!」

不意に立ち止まり、クルリとイタチを振り返るサスケの笑顔といったら
この世の何かと代替するものが無い程、例えようの無い壮美な笑顔であった。

その後、どんなに時が過ぎ去ろうがこの笑顔だけはいつまでも鮮明に輝いた。


「兄さん、有難う!!」

















































「 ・・・・・・・・・・・・・ 」












「・・イタチさん?どうしました?」



鬼鮫の呼びかけに我に返ったイタチ。





「・・・・・もしや、木の葉に ----- 未練、でも?」






「・・・・・・・・・・ くだらない。」


鬼鮫の問いに愚弄の問いだとばかりに深くため息をつくと、
額当てに止まっていた源氏蛍ごと、木の葉の額当てに真一文字に
“暁”への忠義を彫った。


深く   深く






「・・・・・オレを見損なってくれるなよ」

大きく横真一文字に傷のつけられた額当てを己の額に力強く結いつけた。
僅か思い出も全て切り捨てる如くに -----------

愚かな名残 残すまじ ―・・・

終.

+++ アトガキ +++

嗚呼やっぱりイタサス最高。
原作のたまに出る、切ないうちは兄弟話に萌えて思いついた
お話です。自ずの力振り絞り光を放つ蛍の儚さと兄弟の儚き
想いをかけてみました。
イタサス・・・イタ→サスですかね〜。
それは決してCP的なものじゃなくて、身内を想う
最後の兄としての
想い
みたいなもの。そういうのって有る意味他人を想う愛や恋なんかよりも
ずっと深くて強い思いだったりするじゃないですか〜。
なので、深い愛みたいなものが残っていたイタチの最後の決別の念です。
最後唯一己の中で大切にしていた弟との思い出に
最後の決別の契を己の額当てに思い出諸共入れるイタチ。
原作がアレですからね〜、切ない系大スキーの私の萌えフラグ立ちまくりです。
でも最終的には兄弟、もどって欲しい・・・(無理だろうぅ・・T△T)





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