瞬間、心、重ねて。

瞬きをした一瞬の出来事だった。



嘘・・・・・・

トールが・・・・・・・・?

突然途切れたスカイグラスパーからの信号。

私は一瞬にして頭が真っ白になり何も考えられなくなった。

考える事、語る事、手を動かす事、モニターを見る事、

全てがマヤカシに思えて------------


皆の騒ぐ声が頭の遠い所で聞こえる。

まるで他人事の様に・・・。

私は只、呆然と立ち尽くしていた。



私はそこから記憶が無くなった・・・・・・・



一瞬の出来事だった。

討たれ不安定に不時着をしたバスターG.

乗っていた俺は着地の衝撃で瞑っていた目を開いた。


そこにはこのバスターに照準を合わせた地球連合の

足つきが目の前に、立ち塞がっていた。


俺は相手に戦意がない事を示す為に両手を挙げて

降伏する。



軍のために戦死?   冗談じゃない。

死ぬ覚悟はあるが、死ぬ為に戦っているわけじゃない。

どこだろうと、生き残れば帰還するチャンスは

いくらでもあるさ。

だけど死んだら、そこで終わり。 ・・・冗談じゃない。

誰かのために自分を犠牲にするなんて。

艦の通路途中で人が集まっている。

何?どうしたの・・・・?



ザフト軍のモビルスーツパイロットが捕虜?

嫌!嫌!!

直ぐに立ち去りたかった

その存在を目にしたらトールがいないという事が

決定付けられそうで・・・


だけど全身が硬直して足が思うように動かなかった。

オイ、これでも俺は怪我人なんだよ!

おいおい、いくらなんでもこりゃないんじゃないの?

俺は怪我人なんですけど。

捕虜は捕虜でももうちょっとマシな扱い方・・・



あれは・・・・・・女?

女なんか置いてるのか?

戦争をなめてるんじゃないの?

へぇ、この艦こんな女の子も乗ってんの?

いきなり聞こえてきた大きな声。

逃げ出したかったのに動かない身体。

人だかりの間から見慣れない整った顔がゆっくりと顔を上げた。

コイツが、トールを・・・・?!

そいつのオメデタイ声を聞いたら

抑えきれない涙が出てきた。

こんなヤツにトールが・・・

は?なにあの女。

何、イキナリ泣き出しちゃったりしてるワケ?

泣きたいのは捕虜にされたこっちだっつーの。

何泣いてんの?ばっかじゃない?泣きたいのはこっちだっつーの。

これから女ってのは。

別にいいけどさぁ〜

軍に置くのはどうかと思うよ?

・・・・・っ

そいつのその言葉で

私の中にある
潜んでいた重苦しくドロドロとした感情が爆発した

なんで戻ってくる筈のトールが戻らなくて

あんなヤツがこの艦にいるの?!  なんで?!

私は信じられなくて涙が抑えたくても次から次へと溢れ出てくる。

許せない・・・・ 許せない・・・・・!!

コイツがトールを・・・・・・・・・・・・

ううん、コイツじゃなくても、コイツの仲間がトールを!

同じ軍の中で同じ食事をして、同じ空気を吸い生活してきた。

だからコイツも共犯者。



許さない!絶対に・・・・・・・!

何で泣き出すんだよ。

俺が怖いのか?






コーディネイターである俺が。

ふぅ〜、お優しいねぇ。

ちょっと大げさに痛いフリをしたら

監視人も付けずにこんな医務室に

連れてきてくれちゃって。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さっきの女、なんで泣いていたんだ。

クソッ、なんかしんねーけど

あの泣き顔が頭から離れねぇ。


つうか何?

俺って放置?センセーまだなの?

食事・・・・・サイが無理にでも摂った方が良いと言うけど

身体が受け付けない。

トールと一緒に食事をした場所

トールと一緒にいろんな事を語った場所

トールと皆と一緒に力をあわせて敵軍から護った場所

どこもトールとの思い出がイッパイで ・・・・・・・


このまま何も食べず飲まずにいたらトールに会えるのかな?


サイ、イロイロ気を使わせちゃってゴメンね・・・

医務室?
そうだね、少し休んだ方が良いのかな。

皆にも気を使わせてしまうから・・・・

なぁ、センセー

遠くからやってきた足音が大きくなり

この部屋の中に入ってきた。

は〜、やっと 来たの?先生。




あ?

目を開けるとそこにはさっきの泣き虫女が立ってた。


しかも何? また、泣いてんの?

     なんだ、まぁたお前?

なんてツラしてんだよ。また泣いてんの?

       俺が怖い?

     それとも 珍しい?


       ハハッ・・・

   大丈夫だよ、縛られてっから。

コーディネイターだから。

コーディネイターだから。



いい加減にしてくれ。

なんでよ・・・・

なんでこいつがここにいるのよ?

トールの夢や笑顔

それを奪ったやつ


トールの声、私を呼ぶ優しい・・・

もう二度と聞けない・・・







その瞬間、私の中で何かが切れる音がした。

頭のの芯から熱いドロドロとしたものがこみ上げる。

初めて人を殺したいと思った。初めて心底“憎い”という

感情がどんなだか解った。

ふと目を背けると私を呼んでいるかのように

ナイフは鋭利な光沢を暗闇で増した。

ここが戦場だって事は言われなくたって判ってる

涙が何も解決しない事だって判ってる

馬鹿で役立たずなナチュラルのカレシでも死んだぁ?

女が泣くのなんて大抵“男”かんか?

でも、まさか、な。

俺は冗談交じりに言葉を吐く。




こんな冗談、自分で言っててもウケねぇつーの。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?

な、  なんだよ?

まさか・・・・・・・当た・・

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

私はそのナイフを取ると無意識のうちに

そいつに襲い掛かっていた。

憎い!憎い!!憎い!!!

トールを殺したヤツなんてっ

コーディネイターなんて死んじゃえばいいのよ!

身体が動かなかった・・・・

これがさっきまでベソ掻いてた同じ女の目か・・?

そんな風に考えていると瞬間鋭いナイフが

スローモーションのように目の前に迫った。

コーディネイターのチカラというものなのか

瞬時に身体が反応する。

ナイフは間一髪、頬をかすり枕に深く突き刺さった

みたいだ。


イテェ・・・・  頬、切れたみてぇだ

ちょっとそこで途切れた集中力。

迫リ来る気配に気づき、視線を上げるとそこには

突き刺さったナイフを両手で引き抜き、

女は涙と狂気に満ちた目で再び俺に迫ってきた。。

ナイフの刃はアイツをかすめた。

刺せなかった。

枕に刺さったナイフを引き抜き、にじり寄る。

こんなに近い距離なのに・・・もっと追い詰めないと。


トール、もうちょっとだからね・・・・・・


トール・・・・・トールッ・・・・・!!

返してっ    私の大好きな人を!!



サイの声が遠い場所にある今の私を引き戻したかと

思った瞬間、強い力で腕を取り押さえられた。





なんで?なんで?!

なんで止めるの?サイは悔しくないの?

私たちの大事な仲間のトールがここにいなくて、

なんでこんな奴がここにいるの?


許せなくないの?


何で止めるのよぉぉ!

ミリアリアッ!

やめるんだ、ミリィ!!

離してっ!

ミリアリア!!

サイの声が頭の上から響き渡る。

だって、悔しいでしょ?

トールがいないのに、こいつがここにいるなんて。

  トールがっ・・・トールがいないのにっ!
何でこんな奴・・・こんな奴がここにいるのよ!!

悔しいよ。

悔しい。

止め処も無く出る涙。

ぽとり、ぽとりと落ちていく。

・・・・・・・・・・・・・・

俺は漠然とそんな2人の取っ組み合いを

見ていたが、出入り口にもうひとつ影があることに

気づいた。


見た事も無い女・・・また女が入ってきた。


なんだよ・・・んなもん、どうするつもりなんだよ。

フレイッ?!

サイのその声で我に返った。

何を手にしているの、フレイ・・・・?

コーディネイターなんて皆死んじゃえばいいのよ!!

!?

その瞬間、私は狙いを定め銃の引き金を引く

フレイの前に飛び出していた。

何よ!?アンタだってコイツらコーディネイターが憎いんじゃない!!

違うっ!

違う!



いけない、こんな事!

だって・・・・・

だって、あの優しい悲しい目をした

誰よりも私たちの事を思っていてくれた子・・・・

キラ・・・・・・

あの子はコーディネイター。






心臓が止まるかと思った・・・

さっきフレイが口にした言葉は、

まさに私が思っていた事と同じだったから。

フレイが私に見えた。


“コーディネイターなんて死んじゃえばいい”

自分の欲の赴くままに。

大切な“仲間”の存在を傷つける所だった・・・

赤い髪が向けた銃、俺はこんな所で死ぬのか?

戦線じゃなく、女に撃たれて・・・・



そんな時だった。

あの泣き虫女が急に飛び出してきた。

マジかよ。

それ、ホンモノの銃なんだぜ?

しかも、あの赤毛、撃ちやがった。

当たれば死ぬんだぜ?

あの泣き虫女、何考えてんだ?

俺が死んだら、良かったんじゃないのかよ。

あいつ・・・・・

怪我、していたのに・・・・

ううん。怪我くらい 何よ・・・




・・・・・・・・・・・・・・・


あいつの事を少しでも考えると

全てトールに繋がる・・・・・



また、抑え切れない涙、我慢したのに出てきた・・・

周りを見渡すと暗く静まり返った独房の中。

さっきの騒ぎが嘘みてぇだな

俺は騒ぎに駆けつけた上官らしき男らにこの

独房へ連れてこられた。

医務室のベッドより硬いベッドに横たわる。

・・・痛っ・・・

さっきあの女にナイフに切られた頬は軽く手当てされて。

傷の痛さなんて然程気にはならなかった。


気になるのは寧ろ・・・・・


そういや、あのオンナ 泣き顔しか見ねぇな・・・

それは目の前にいるのが俺だからか?

さっきまで殺そうとしてたのになんでかばったんだ?

ワケ、わかんねーよ・・・


なんかすっきりしねぇな。


胸ン中、モヤモヤしたカンジ。

解ってる、イライラしていた。


俺達はエリートチームの即席、皆闘争心が強いが為

バラバラだった。

だけど、戦闘を共にしていくうちに隊としても人としても

まとまりかけてた。


だが、そんな中での突然の仲間の死。

滅多に涙なんか見せない奴が泣いていた。

涙は見せないが、心ン中酷く傷ついた奴もいた。

だけど、これは戦争。

学校でも遊びでもない。

俺はやり場の無い思いにイライラしていた。



【馬鹿で役立たずなナチュラルのカレシでも死んだぁ?】



そんなイライラした思いを彼女にぶつけていた。

涙しか見せないあの泣き虫なオンナに。

また、オンナ特有の泣きじゃくりをただ起こすかと思ってた。
そしたら、あのあいつ・・・まさかあんな行動とるとは
思いもしなかった。

女があれだけの行動をとるなんて余程の思いだよな・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


まさか、 ビンゴだったとは、な・・・・・・


あのオンナも亡くした奴がいたとはな。

大切な人間を失った辛さはわかっているはずだったのにな。


クソッ、 俺・・・かっこ悪いな。

私は体が震えそうになるのを必死で抑えて足を一歩一歩

前に出す。


         イッテドウスルノ?

         -----わからない。


私は監禁されているあのザフト兵の牢へ向っていた。



どんな事があっても一番に


 “生” を信じていなきゃいけないのに。

それなのに私は敵討ちとばかりに相手の命を奪おうとした。



l声にならない痛哭が後も無くのしかかって来て

立っているのがやっとだったが、必死で足を1歩1歩出した。





1日、自室謹慎というカタチで。

ずっと考えごとをしていた私は閉ざされたドアロックが

解除されるまでの時間がとても短く感じられた。

いくら考えた所でグルグル考えは同じ所を回り

はっきりとした答えは出なかった。


こうしている間にも帰還の朗報を期待していたけど

自室から出た私が見たみんなの顔色は沈んだままだった。



食事?

もうそんな時間?

お腹、  ちっとも空かないや・・・

サイが心配そうな顔をして迎えに来た。

カタチだけでも食堂に行こう。

本当、ゴメンね、・・・・・・サイ。

目の前に置かれる食事をのせたトレイ。

いつもより少ない人数 そして口数

私は無理にでも口に入れる気がしなくて、

トレイの上にのった食べ物をゆっくりとフォークで転がしていた。





カズイが急に漏らしたコトバ







サイがチラリとこっちを見て不謹慎だとカズイを怒鳴りつけた。

そうだよね・・・死ぬの、怖い。 怖いよね。





MIA----------“戦闘中、行方不明になる事。”

もう何度も耳にした言葉  なんて嫌な響き

      


それは生存率はかなり低いと言われている。

私は机の下でスカートを握り締めると立ち上がっていた。

私を慌てて宥めようとするサイ。


-----私、傷ついた?

違う

-----私が、殺した

キラを・・・



そして  トールを・・・


私は無我夢中で走り出していた。

プラントに着いたら除隊申請、出来るよな?

俺、除隊申請書まだ持ってるんだ。
死ぬの嫌だよ・・・・怖いよっ・・・・

TOP


>>

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル