キラのロックは完璧だった。
モビルスーツ4機、ジン8機、その他各種戦闘機それぞれが
全く違うパスワードで、またそれらに何の共通点もなかった。
結局解析出来たのはアスランのイージス1機。
ザフトの作戦は始まる前から失敗に終わった。
何故アスランだけが解析出来たのか。
それは他の軍人達の疑いの的となったが、
普段の彼の優秀さぶりを知っている彼等はそれでも納得したようだ。
ただ一部を除いて。
「おい、例のナチュラルどうした?」
アスランが食堂でぼーっとしているとイザークが声を掛けてきた。
「・・・帰ったよ」
「帰っただと!?」
大きな怒鳴り声にディアッカ、ニコルも姿を現す。
「おいイザーク、お前まさかあのナチュラルの仕業だとか言うんじゃねえだろうな」
「そうですよ、そんなことは不可能です」
「分かってるさ!奴らの無能ぶりならこの間の奇襲作戦で十分承知している!」
「だったら・・・」
「だがおかしいだろ!!何でこいつだけが機動出来てんだよ!
外部からの侵入者!ザラ隊長のみ知っていること!怪し過ぎるんだよ!!」
「・・・・・・」
イザークの言う事を頭から鵜呑みにするわけではないが、
作戦が失敗に終わったことはディアッカにとってもニコルにとっても悔しいことに変わりはない。
思わず疑ってしまう気持ちも分からないでもない。
「さあ!どうなんだ!?」
3人の仲間に詰め寄られ、アスランは虚空を見つめたまま、
ただ一言。
「だがあいつはもういない」


























作戦が失敗に終わったその日、
アスランはふらつく足で何とか自室に向かっていた。
部屋に戻ればどうなっているかは分かっている。
だが、予想と期待とは時に違うもので、
もしかしたらキラはまだあの部屋にいるかもしれない。
いつものように笑って、
『お疲れ、アスラン』
そう言って出迎えてくれるかもしれない。
作戦をめちゃくちゃにしておいてまだここに残るなど、
そんな馬鹿な真似はしないと分かっている。
分かっていても、そう思わずにはいられなかった。
そう思わないと、もう。
その僅かな期待だけを頼りに今のアスランの身体は動いていた。
(キラ・・・キラ・・・)
譫言のように名前を呟いて重い身体を引きずる。
扉の前まで来て、驚く程落ち着いた自分がいることに気付く。
ゆっくりと扉を開けると、
「お疲れ、アスラン」
「ただいま、キラ・・・」
誰もいない部屋でひとり呟いて、電気も付けずにふらふらと寝台へ向かう。
脱ぎ捨てられた自分の軍服を手に取ると、
微かにキラの香がした。
「・・・・っ!」
アスランは軍服を己の顔に押し当てると、
そのまま地べたに座り込んだ。
分かっていた。
最初からすべて分かっていた。
キラをよく知っているからこそ、分からないはずなどなかった。
それでも、
それでも期待した。
だから聞かなかった。
“お前、地球軍にいる友達はもういいのか?”
“これからどうするつもりなんだ?”
聞けば、彼が自分から離れてしまうのは目に見えていたから、
だからずるずると時間を先延ばしして、
いつか聞かなければならないと分かっていながらも、
手放すことなど出来なかった。
「・・・っつ・・・ふ・・・うぅ」
こんなに、こんなに苦しいのなら
いっそ監禁でもしてしまえばよかったのか?
手足の自由を奪って、ずっと一生この部屋に閉じ込めておけばよかったのか?
だが、きっとそれも出来なかった。
例え遠く離れていてもキラは自分を思ってくれている。
そんな期待が、
幼い頃の思い出が邪魔をする。
たとえ敵対したとしても、殺さなければならない相手だとしても、
それでもキラの気持ちが欲しかった。
絶対に嫌われたくなかった。
あの頃のように、
ただ
「アスラン」って
甘えたように
拗ねたように
たったそれだけなのに・・・。
「っ・・・キラぁ・・・」














同日同時刻、
キラ・ヤマトは宇宙を漂う小舟の中で声をあげて泣いた。
何度も何度も愛しい人の名前を呼びながら。







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