〜忘れな草は永遠に〜


太陽が地平線のかなたへと消えていったころ。
一人の少年が、ハンモックに寝そべってこうつぶやいていた。  
「どうしよう・・・。」



少年、ダレン・シャンがその気持ちに気がついたのは、ほんの2,3時間前のこと。 ダレンをバンパイアという、人間からしたら「化け物のような存在」に変えてしまった男、ラーテン・クレプスリーにつれられて、ダレンはバンパイアマウンテンに来ていた。
十二年に一度だけバンパイアマウンテンで開かれるバンパイア総会に参加するためだ。
バンパイア総会には世界中からたくさんのバンパイアがやってきており、もちろんそこにはクレプスリーの昔の親友もいて、クレプスリーは昔話に花を咲かせていた。
ダレンもクレプスリーの昔のことを聞けるのは楽しかったので話しに耳をかたむけていた。
しかし、そこに思いもよらぬ人がやって来た。
数少ない女性バンパイアの一人、エラであった。
エラとクレプスリーは昔の恋人だったらしく、クレプスリーは親友と話しているときより楽しそうに話していた。
昔の恋人なんだから親友より楽しく話すのはあたりまえのことだから、ダレンも笑顔で二人の話を聞いていた。
だが、笑顔とはうらはらにダレンの心の中にもやもやっとした気持ちがただよった。
鼻の下をのばしきって話しているクレプスリーを見ているとダレンは無性に腹がたってきて、いてもたってもいられなくなり、「僕、部屋に帰るっ。」と怒りの声をクレプスリーにぶつけて部屋へとかえっていった。
「おいっ、ダレン!?」というクレプスリーの困惑した声を聞きながら。

ダレンは部屋へと帰るとボンッとハンモックの上に乗っかった。
たかが昔の恋人同士の昔話なのに、と考えると恥ずかしさでダレンの心はいっぱいになった。
だが、たかが昔の恋人同士に怒ってしまったのはまぎれもないダレン自身。
恥ずかしさより、なぜ自分はあれほどまで怒ってしまったのだろうか、という疑問が出てきた。

しばらく考えているうちにわかってしまった。
「クレプスリーのことが好き」ということに・・・・。



そして今に至るのである。
自分が好きになった相手はラーテン・クレプスリーという男。
自分が好きになった相手に禁忌を犯せようか・・・。
ダレンは「どうしよう」と幾度もつぶやいた。
いくらつぶやいてもダレンの気持ちは消えない。
むしろ「好き」という気持ちがどんどん膨らんでいくばかりだった。
このまま自分の中にこの気持ちをしまっていくのは無理だと、ダレンは思った。
一度だけクレプスリーにこの気持ちを伝えよう、そしてそのあとはクレプスリーから離れよう、そうダレンが考えたときだった。
「ダレン、いるのか?」
部屋の入り口でクレプスリーの声が聞こえるではないか。
どくんっ、と脈打つ気持ちをおさえて、ダレンはいるよ、と答えた。
「入るぞ」という声が聞こえた。
とてもじゃないけど今クレプスリーと目があわせられるわけがなかったのでダレンは入り口のほうに背中を向けた。
コツッ、コツッとクレプスリーの足音が近づくたびにダレンの心臓はどくん、どくんと大きく脈打っていく。
「ダレン、先ほどはどうした。お前らしくないぞ。」クレプスリーは優しく話しかけた。
だが、ダレンからの返事は返ってこない。いや、返せなかった。
でも、返さなければいけなかった。せっかくの告白の機会を逃すわけにはいかなかった。
ここをでていくのは、はやい方がいいとダレンは思った。
1つ大きく深呼吸をしてダレンは話しはじめた。
「あのね、クレプスリー。」
「なんだ?」
「僕、気づいちゃったんだ。だからね、ここ、出てかなきゃならないの。」
しばらくその部屋に沈黙が訪れた。だがクレプスリーがその沈黙を破った。
「なぜお前が出て行かなければならないんだ!!」
クレプスリーの口調はさみしさがこもっていた。
ダレンはクレプスリーが自分のことを師弟としてさみしくおもってくれるだけで、涙があふれてくるほどうれしくなった。
「だって、僕、クレプスリーのことがすきになちゃったんだもん。」
しゃくりあげながらダレンは自分の気持ちをクレプスリーにうち明けた。
クレプスリーは僕のことを軽蔑して突き放すだろう、とダレンは思った。
だが、クレプスリーは、
「そんなことで、でていくことはないぞ。」といったのだ。
ダレンはびっくりしてクレプスリーのほうを振り向いた。
「な、なんで?」
クレプスリーは先ほどまで後ろで組んでいたであろう手を前に持ってきた。
その手にはダレンが昔見たことがある、忘れな草という花が一輪にぎられていた。
「この花をダレンに誓うからだ。」 ダレンは意味がわからずきょとん、としている。
みかねたクレプスリーはにっと笑って一言一言大切にこういった。

「忘れな草の花言葉がな”真実の愛”というそうだ」
ダレンは飛び上がるほど驚いた。
「本当に?」
「ああ、本当だ。」
クレプスリーはダレンの体を優しく抱きしめた。
ダレンの目からは大粒の嬉し涙がとめどなく流れていた。


+あとがき+
うはぁ。き、緊張しました。
初めてのクレダレということであまり上手くはかけませんでした・・・。
初めてということで勘弁してください。
次はもっともっとがんばりますので・・・。

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