長い、長い夢を見た。 僕がMr.トールに犯される夢。 犯されて、犯されて。 体も心もぼろぼろにされて。 僕はクレプスリーの名前を呼ぶことも、抵抗することもできなかった。ただ、涙を流し、流し、流し続けただけで。 夢はそこでおわった。 最もそれは夢じゃなかっただけで。 この腰に走る異様な痛みと、僕の後ろのねばねばしたモノがそのことを物語っていた。 でも、Mr.トールに犯されたなんていまでも信じられない。 いや、そのことを認めたくなかった。 だって、クレプスリーと変な感じになったまま、僕は僕のすべてをクレプスリーに捧げることなく、Mr.トールに奪われてしまったから・・。 それは僕にとって一番つらいことだから。 ベットに寝たまま涙を流す。 ぽたっ、ぽたっと涙は頬をつたって白と赤のシーツのうえにしみをつくる。 「クレプスリー・・」 どこにいるとも分からない僕の大好きな人を静かに呼んでみる。 自分の声だけが広いこの部屋に響く。 そのさみしさに、また涙がこぼれる。 どうしてこんなに涙がこぼれるのだろう。 いくら泣いても下半身からは血が流れ、上のシャツはやぶけたまま。 自分は手足を投げ出したまま寝ているだけ。 なのに・・・。 どうして・・・・。 「・・・クレプスリー・・。」 もう一度クレプスリーの名前を呼ぶ。 Mr.トールに抵抗することなく犯された僕は、クレプスリーに愛してもらう資格などはもうないのかもしれないけれど。 せめて、 離れ離れになる前に。 あの赤いマントに優しく包まれたいから。 「クレプスリー」 名前を呼ぶ。 僕のところへ駆けつけてきてほしいから。 どうしたんだ、ダレン?って優しく聞いてほしいから 「クレプスリー」 「クレプスリー・・」 「ねえ、クレプスリー。」 「僕のところに来てよ、クレプスリー。」 何度も、何度も名前を呼ぶ。 「クレプスリー。」 何度目の呼びかけだっただろうか。 小さくつぶやくように 「クレプスリー」 と、名前を呼んだときだった。 勢いよくテントの入り口が開かれた。 そこにはちらちらと燃える炎のように、赤い、マントがあった。 「クレプスリー・・・・。」 そこにはまぎれもなく僕の大好きな人が立っていた。 赤いマントを着て、肩を上下させながら立っていた。 おもわず僕は上半身をベットから起こそうとした。 「・・っ・・!」 でも、Mr.トールに犯されたせいで手に力が入らず、途中でぼふんっとベットに逆戻りしてしまった。 「ダレンっ!!」 そんな僕をクレプスリーが僕の名前を呼びながら、僕が寝ているベットに走りよってきて、赤いマントで僕を優しく包み込みながらゆっくりぼくの上半身を起こしてくれた。 そして、ぎゅっと僕を赤いマントで包み込んでくれた。 「ダレンっ!!」 「・・ダレンっ!!」 クレプスリーが僕の名前を何度も呼びながら、ぎゅっ、ぎゅっ、と僕を強く抱きしめる。 ちょっと痛かったけど、僕は何も言わなかった。 涙が流れて、流れて、流れて、何も言えなかった。 と、その時、僕の目の前にポツ、ポツっ、と水滴が落ちてきた。 これは、クレプスリーの・・? 「・・すまなかった。ダレン・・・。」 クレプスリーが泣きながら僕に謝ってきた。 「謝らないで・・、クレプスリー・・。」 「泣かないで・・、クレプスリー・・。」 僕の首に顔をうずめて泣いているクレプスリーを力の入らない手で包み込みながらクレプスリーに言う。 「僕のせいだから、泣かないで、クレプスリー・・。」 クレプスリーが僕の首に顔をうずめたまま首を左右に振る。 「・・我輩いが、我輩が、あんなやつにだまされなかったら・・・。」 「・・我輩が、ダレンを助けれたのに・・。」 「・・我輩いが不甲斐ないばかりに、ダレンをこんなことにさせてしまった・・。」 「クレプスリー・・・。」 そっと、優しくクレプスリーを呼ぶ。 「・・・我輩いのせいだ、ダレン。本当にすまなかった・・。」 ふわっとクレプスリーが僕の首からのいたかと思うと、僕の目の前で頭を下げてきた。 「・・ちょっと、クレプスリー!!そんなことやめてよっ。」 僕の言葉を無視してクレプスリーが頭を下げたまま続ける。 「・・我輩いを焼くなり煮るなり、ダレンの好きにしてくれ・・!!。」 クレプスリーは額をベットにこすりつけるほど頭をぐいぐいさげてきた。 「クレプスリー!!・・・。」 そんなこと、しないでっ!! そう言う変わりにクレプスリーを手を震わせながら包み込んだ。 「・・あのさ、クレプスリー・・。」 「僕がこんなことになったのはクレプスリーのせいじゃないんだよ。」 僕のせいなんだ、 ふと、その言葉を言いそうになりながら、思った。 ここで『僕のせいなんだ。』って僕が言っても、クレプスリーは頭をあげてくれないだろう。 それに、思えば、こんなことになったのは僕のせいじゃないのかもしれない・・。 Mr.トールのせい、と言えばそうだけど、それじゃあ憎しむだけだし。 Mr.トールだって僕を犯したのも何か深い理由があるのかもしれないし。 考えているうちにひとつの結論が出た。 「こんなことになったのは、僕のせいでもないと思う。」 「Mr.トールのせいでもないと思う。」 「こんなことになったのは誰のせいでもないんだよ、クレプスリー。」 そう、僕はこんなことになったのは誰のせいでもない、と結論を出した。 だって、こんなことになったのは、誰のせい、自分のせい、お前のせい、って言いあっっても何も進まないしね。 前向きに考えないと! そんな僕の気持ちが伝わったのかクレプスリーがようやく顔を上げてくれた。 「そうだなダレン・・・。」 と、笑顔つきで言いながら。 クレプスリーの笑顔に僕もつられて笑う。 体中がこわばっていたから笑顔も少しこわばっているけれど・・・。 あっ!! 体で思い出したけどこの体どうしよう・・・。 ぎとぎとのどろどろだよ・・。 自分で洗いたいけど、僕、まだ手に力はいらないんですけど・・。 そんな僕の気持ちを読み取ったのか、クレプスリーが 「そうだ、ダレン。このことは一件落着したし我輩いがお前の体を洗ってやるっ!!」 と、爆弾発言をした。 「・・もうちょっとしてから自分で洗うから洗わなくてもいいよ・・。」 流石にそういう仲でも洗ってもらうのは恥ずかしいから断った。 だが、クレプスリーはもうマントの紐をしゅるり、とはずして僕を洗う気満々だった。 「さあ、いくぞ、ダレン。」 クレプスリーはそう言うと、さっき脱いだマントを僕の体に巻きつけて、僕を軽々と抱き上げた。しかも、横抱き。 「ちょっと、クレプスリー、降ろしてヨッ!!」 つい先程まで泣いていた人とは思えないほど元気いっぱい叫ぶ。 「だめだ。我輩いがきれいにしてやるから乗ってろ。」 クレプスリーも先程まで泣いてた人とは思えないほど元気よく答える。 これ以上反論しても無駄だ・・・。 そう思った僕は仕方なくクレプスリーに横抱きにされたままになる。 クレプスリーは僕を抱き上げたまますたすたとテントの外に向かって歩いていく。 ばさっ、っとテントの入り口を出ると、夜空一面にきれいな星がピカピカと光っていた。 シルク・ド・フリークの夜はこれからだ。 +コメント+ なんと心の広いダレン君!! 犯した張本人のせいではないと!! 私もダレン君みたいな性格になりたいものです。 戻る |
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