BONDS


(皆、持ち場についたか?)

異口同音に返ってくる、しっかりとした返答。
それで安心し、009も自分も持ち場へついた。

(よし、そのままで向こうが動き出すまで待機だ)

スーパーガンを手に待機状態に入ったとき。ふと、こんな場所で以前にも同じことをしたような…そんな気がした。

(いや、そんなはずは…)

いつだったか、どこでだったか。
まったく同じ経験をしたことのあるような既視感。


こんな風に一人ずつ、敵陣をとりかこむように待機して、相手の動きを監視して…


そうだ、思い出した。
あのときだ。

もう遠い遠い、昔の失敗談。
あれは……まだ若かったせいだな。

蘇った記憶につい苦笑いしてしまった。すると、

(何笑ってんだ?余裕だな009)

どうやら向かい側で待機していた007に見られてしまったらしい。即座に通信で指摘されてしまった。

(余裕なんじゃないよ…昔、似たような状況であったことを思い出して)
(なんだ?昔のことって)
(覚えてないかい?僕と002が焦りすぎて、さ)
(……そんなことがあったか?いろんなことがあったから、すぐには思い出せないな)
(え、それは…)
(物忘れがひどくなったって言いたいのか、お前)
(いえいえ、とんでもない)
(そう言っててお前、顔が笑ってんだよ!こんな状況じゃなかったら一発はたいてるとこだぞ)
(よかったよ、この配置で)

互いの姿は見えても、手は届かない配置。
さすがに手を「伸ばして」はたく状況ではない。007は(覚えてろ)という通信を最後に、もとの持ち場へと戻った。
そんな二人の会話が聞こえたらしく、ニヤリと笑ってきた002の姿を確認し、009も口元だけで笑い返した。

(002、君も思い出したのか?)
(ああ。あの失敗は繰り返さないでいこう、またどつかれるのはご免だしな)
(そうだね)

(おい、お前ら。余裕なのはいいが、ちゃんと見はってろよ)
004からのキツい指摘が入る。

(了解)

肩をすくめながら、009はふたたび自分の待機場所から敵があらわれるだろう方向に目をやる。

ずっとずっと昔。まだ、彼らと出会ったばかりの頃。
ブラックゴーストの基地だったあの島から脱走して、追手を倒すことで精一杯だった日々。

そんな頃のことを今更思い出すなんて。
闘い慣れした余裕なのか?


…確かに、いろいろなことを経験して慣れはあるのかもしれない。

自分の持ち場で身動き一つせず、「敵」があらわれるのを待ちうける。
そんなことは思い返せば何度でもあった。

今回で言うと、本当は本拠地をたたくのがベストだが、多数の無関係な民間人を巻き込むわけにはいかない。
だから、やつらが「新製品」を山間部を通るこの裏のルートで運び出すそのときに、あらたな事業開拓のチャンスをつぶす。

だがあの兵器開発に関わっている大多数は、お金を貰えるから働いているだけの従業員だ。
あの企業に関わるのは、ろくなことにならないのを思い知らせるだけでいい。
けして殺すな。死なせてしまって下手な恨みを買うのは、僕達の側にとってダメージにしかならない。
それが作戦をたてた001の指示。

視界がさえぎられる密林のようなこんな山道では、襲撃される側も相当な警戒をしているだろう。
一気にかたをつけないと。



(あ、下を見て!)
それまで探索を続けていた003からの通信が入る。
皆即時に顔が引き締まった。

とうとう敵が動き出した。

(見えたわ。もうじきくる5台のうち、真中の車がそう。後はダミー。護衛は1台に4人づつ)
(わかった!003、そのまま探索を続けてくれ)

動き出そうとした009に003からの報告が続く。

(待って009。もっと後ろからもなにか来るわ。…ただのトラックに見せかけてるけど、あれも新型兵器。あっちには10人)
(確認した。確かにあれはやっかいだな…よし、そっちは僕が行く)
(おい!あれはお前一人じゃヤバイぞ。俺も行く)
(…そうだな。一人よりは、二人でいったほうがいいか。皆、作戦を少し変える。僕と002が後ろを攻撃にまわる、あとは打ち合わせ通りだ。積荷を破壊することを第一に考えてくれ。ただ今回の最大の目的は、誰も死なせないこと)

(了解)

(002の持ち場は僕がフォローするよ)
(頼む、008)


002は音も無く009の近くへと移動してきた。
(行くか)
さらにこの位置から二人で移動して、背後から敵の裏をかかなくてはならない。

(あとは頼む、皆)

動き出そうとした009に007からの通信が入る。

(ここから無事帰れたら、さっきのお前らの思い出話ってやつにとことん付き合ってやるよ)
(007、その約束忘れないでくれよ。008が付けてくれたオチまで思い出させてあげるよ)

自分の名前が出たことに008が反応するが、002と009の二人はにやり、と笑いかけるだけにとどめてその場を立ち去った。

(あの様子じゃ008も忘れてるな)
(そりゃそうだろう。何年まえのことだと思ってる)

何のことだ?と問う008を、007はあとであいつらから直接聞いてくれ、と流した。
(今それどこじゃないしな)
008は腑に落ちないという表情を浮かべながらも、刻々と近づいてくる作戦開始のタイミングに意識を集中させる。

(004、あの位置だと…まずは君がターゲットの積荷を攻撃して、僕達が周りを攻めたほうが良さそうだな)
(了解だ008。あいつら見た目は大したことなさそうだがな)
(実際はどうか…ってことだな。とにかく気づかれる前に先手を打って確実につぶさないと)

(皆、気をつけろ。敵の動きが変わった)

常に冷静な005が皆の注意をうながす。
それを合図に、006が作戦通り地下へもぐって敵の車の前に移動をはじめた。相手の動きをみながら003は方向を指示する。

さらに幾手にもわかれて行動を開始した敵の動きを、003は的確に他の仲間に伝えようとする。

(待って007!今はまだ動かないで)

(003!僕の方向はどうだ?今動いて大丈夫か)
(そっちは今すぐ動いた方が良さそうよ、008)
(了解した003!行動開始する)


002と009は別動隊に近づいていく。まだ向こうはこちら側に気づいた気配はない。



次第に「敵」が近づいてくる。
それぞれが、迫りつつある闘いに全身を緊張させている。


落ちついてタイミングを計れ。
「向こう側」と同時に奇襲攻撃をしかけなければ。
最大のチャンスは、一度きり。それを逃すと後はやっかいになるだけだ。
相手に反撃の隙を与えてはならない。

焦るな。



(どうだ、003)
(まだ待って)
(…)

ほんの数秒、それが異常に長く感じる。

(今よ!)
(よし、皆行くぞ!)


それぞれが、作戦どおり一斉に動き出した。



こちらの動きに全く気づいていなかったらしい敵が、突然の襲撃に即座に対応しようとする。
しかし、そのときにはもう目的であったものの破壊はほぼ終わっていた。

2ヶ所からくぐもった爆発音が響き渡る。

反撃に出ようとする護衛達は次々昏倒させ、まだぶすぶすとくすぶり続けている「新製品」をネジ1本単位まで破壊する。さらに森に延焼しないよう処置をした。

(よし、こっちは終わった。そちらはどうだ?)
(こちらも終わったぞ)
(よし、任務終了!退避だ)



良かった、今回も誰も欠けることなく終わって。
009は横を走る仲間達を見て、いつものように思う。



彼らとの、あの島での出会いはもう遠い昔のこと。
拉致された挙句、実験体としてこんな身体に改造され。BGの研究者達に「仲間」に引き合わされ。そして訳もわからないまま彼らとあの島を脱出し。

今にして思えば、そんな不可思議な縁で出会った人達。
長い年月の間にさらに不思議な絆が生まれ。それは次第により強くなっていった。
出会ってからの年月で培われたその信頼は今も揺らぐことはない。


しかし。
9人が揃うときは、ほとんどの場合闘わざるを得ないとき、でもある。
こんな絆でつながっていることは、良いのか、悪いのか。

だから…もう、全員が揃わないで済む、そんな日がくることを願うほうが良いのかもしれない。


だけど。





全力で走るうちにようやく森を抜けた。

「ドルフィン号はあの影だ」

「早く全員乗り込め、追っ手がくる前にさっさと逃げるぞ」


全員がコクピットへ入ると、ゆりかごの中の001が出迎えた。
(コノジカンデ モドッテキタッテコトハ ソウトウ すむーず ニ シンコウシタンダネ)
「ああ、君の作戦のおかげだよ」
「そうそう、001様々」
(ホントニソウ オモッテル?)
「思ってるに決まっているじゃない」
003が001をゆりかごから抱き上げて胸に抱く。
思いもよらず強く抱きしめられて001はもがいたが、003は意に介さず自分のシートへつく。
(…003、キンチョウガ トケタセイカナ。マアイイヤ、スキニサセトコウ)

「皆シートについたか?発進するぞ!」
009が叫び、ドルフィン号が緊急発進した。
上空へ舞いあがった機体が安定飛行に入ると、ようやく皆の緊張もとけ、しだいに空気もリラックスしたものになっていった。
特に今回は、敵を死なせないことが重要目的だったこともあって、いつもより任務終了後の後味の悪さはない。

「そうだ002。さっき007と話してた昔のことって?僕なにかしたっけ」
008が002に問いかける。
「あ?ああ、あれか。009の話のことだろう。おい、009!ここで話すか?」
「え…研究所に帰ってからにしてくれよ」
009は振りかえって、苦笑いしながら言う。
「恥ずかしいしさ」
「何だよ、俺何があったか本当に思い出せないぞ?」
「日本につくまで時間があるし、じっくり考えてみたら?」
笑いながら003が言う。
「何だ、003は知ってるのか?」
「いいえ、わからないわ」
「001、お前はわかるだろう?」
「ボクガオシエタラ ツマンナイジャナイカ」
「んん…昔の失敗談アルか?自分のならいくらでも思い出せるヨ」


おい、お前達リラックスし過ぎなんじゃないか?

そんな憮然とした顔をして仲間を見ている004が目に入り、009は思わず笑ってしまう。
「お前も余裕あるな」
「もう追っ手を心配しなくていい距離を飛んだし。ま、いいんじゃない」
「それも…そうだな」

ふ、と004は口元だけで笑って、声をひそめて言った。
「おい009。さっきの話、俺は覚えてるんだからな」
009は首をすくめる。
「君は忘れていてくれたほうがうれしかったんだけどな」
「そうは問屋がおろさなかったってことさ」

ま、日本につくまでは黙っててやるさ。
ニヤリ、と笑いかけられ、009もひきつった笑みを浮かべた。

操縦席の背後では、すでに発端の009のことをよそに、思い出話で盛り上がり始めている。
そんな仲間達の姿を見て、009は思う。

思いもかけない運命から出会った9人。
長い年月を共に闘う事で絆を深めていき、今もそのためにここにいる。
それは悲しむべきことなのかもしれない。

だけど、変わらずかけがえのない仲間。

言葉に出して言うことは無いかもしれない。だけど心から思う。



君たちに会えて、良かった。

<FIN>


2004年7月19日、009連載開始40年記念の日。というわけで…こんなものを書いてみました。
記念ならもっと明るいものを書けば良いのに。とは自分でも思います。
でも「オールキャラ物を書く!」という当初の目標は達成できたので、あとはもっと思うとおりに書けるようになりたい…


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