ワイルドタイガーが性的なことを自覚させ隊(3.5)


「なんでこうなったーーーーーーーーーーーっ!!!」
叫ぶだけ叫ぶと虎徹は糸が切れたようにソファーに倒れこんだ。
ボスンと倒れこむ衝撃と共にバーナビーは反射的に立ち上がる。
股間が突っ張っているから少々前屈みになっている自分の体勢に絶望感が湧き上がるが、幸か不幸か虎徹はバーナビーが色々な意味でタチあがっていることに気がついていない。
二者択一。
どういう行動をとるか悩みに悩んでいたが、気づかれていないのならこのまま気づかれない方がいいかもしれない。
バーナビーはソロリソロリとその場から離れていく。
虎徹に気づかれないように。それ以上に突っ張った股間が進路を阻むから、ゆっくりと歩かざる得ないのだが。
顔を両手で覆い、体を丸め、悶絶している虎徹が視界の端に映る。
己をモデルにしたゲイアダルト、それも相棒に無理矢理犯される内容。
そんなものを鑑賞してしまった彼の頭の中はどうなっているのかとても興味をそそられるが、バーナビーも今は余裕がない。
虎徹の呻き声を背中で聞きながら、気配を消し足音を立てず、亀のようにそろそろ歩きどうにかトイレに辿りついた。
ノブをゆっくり回し引き寄せ、自分の幅だけ隙間をあけてスルリと滑り込む。音を立てないようにドアを閉めて鍵をかけてから、ようやくバーナビーは溜息と一緒に体の力を抜いた。
こんなに細心を払い緊張しながらトイレに駆け込んだことなど過去にない。
それどころか、今から人様宅のトイレで自慰行為を始めるのだ、虎徹はいい意味でも悪い意味でも意識的にも無意識的にもバーナビーを振り回し、新たな経験をさせてくれる。
まあ、出来ることならこんな経験は絶対したくはなかったのだが。
ひとりになって安心したのか、股間の息子が自己主張を始めた。布地を下からぐいぐい押し上げ、みっともなくもテントが張っている。
あまりの突き上げに押さえ込まれている息子に痛みを感じるくらいだ。
「はぁ」
諦めの溜息をついて、バーナビーはバックルを外して前を緩め性器を取り出した。
ぎゅっぎゅと布地に押さえ込まれていた性器は嬉しそうに元気よくぴょんと飛び出す。腹につきそうな程の反り返り具合だ。
この状態なら痛かったはずだ、と思うものの、ゲイアダルトでここまで反応してしまった自分が情けない。
だが、この調子ならすぐにいけそうだ。
あまりトイレに篭るのはいただけないし、時間が経てば経つほど虎徹が正気に戻ってしまう可能性が高いから、さっさと処理してしまうに限る。
バーナビーは目を瞑り、そっと自分の性器を握り込んだ。
理性に反して本能が、体がずっと待ち望んでいた快感が、ぞくぞくと腰から背筋をかけあがる。
「・・・ッ」
零れそうな声をかみ殺し、先走りでトロトロに濡れた性器を扱きはじめる。
気持ちいい。すごくすごく気持ちいい。
我慢していた時間が長かった分、ようやく与えられた快感は信じられないほど善かった。
溜まったものを抜く作業的な自慰はたまにするが、そのときと全然違う。
初めての感覚にバーナビーの理性は小さく縮み、代わりに雄の本能が頭を擡げる。
どんどん溢れる先走りがぬちゃぬちゃと掌と性器の間で音を立てる。
ぬるぬる滑る感触が気持ち良くって仕方がない。
そんなバーナビーの脳内に虎徹の顔が浮かび上がった。虎徹、というか、さっき観た映像の中の彼の姿だ。

足を大きく広がされ露にされた尻穴に性器を捻りこまれて、喘ぎ、啼いている淫らな姿。
最初は苦痛の色を表情に乗せ嫌がっていたはずなのに、回数をこなすうちに快楽に乱れ甘く喘ぎだした。
男に犯されるための躯。男を誘う躯。男に抱かれるための躯。
そんな風に言われ、唯一動く頭を左右に振って否定するのに、躯は快楽に引き込まれ何度も何度も吐精した。
同じ男の性器を尻に咥え込み、勃起した性器を擦られて、激しく突き上げられ体を揺さぶられながら、声が枯れるまで喘いで啼く姿は堪らないものがあった。
映像の中の男が、似ているAV男優などではなく、いつの間にか虎徹にすげ替えられていたから尚更だ。

今、瞼の裏で喘ぐ男はやはり虎徹自身だ。
バーナビーの手が無意識に動き、己の性器を両手で包み込んだ。
そしてそれを扱くのではなく、両手で作った輪を犯すように腰を振り出す。
突き上げる度に虎徹の泣き声が耳元で再生される。
そして瞼の裏に浮びあがるのは啼き喘ぐ虎徹と、その尻穴を水音を立てながら出入りする己の性器。
『バニー』
縋るように吐精を強請るように虎徹が名前を呼びながら、動かないはずの手を差し伸べてくる。
「・・・虎徹、さんっ」
応えて名前を呼び返した瞬間、ゾクゾクと脳天まで快感が走り、絶頂感がバーナビーに襲い掛かった。
「ぅ・・・っ」
手の中の性器がビクビクと震え吐き出そうとしたとき、微かに理性が戻ってきた。
このままイクわけにはいかない。ふらりと1歩踏み出し、どうにか先端を便器の中央に向けた。
と同時に、その先端から溜まっていた精液が噴出し、ぼたぼたと音を立てて便器の中に落ちていった。



全身を満たしていた快楽が吐精と共に霧散し、荒い息が整っていき、バーナビーは我に返った。
「〜〜〜〜!!!!」
よりにもよって虎徹で抜いてしまった。
ゲイアダルトを鑑賞して勃起したあげく、自慰のおかずは虎徹だったなんてどうしていいのかわからない。
『・・・死にたい』
今夜、何度そう思ったことだろう。
手を濡らす精液をトイレットペーパーで拭い取り、トイレのレバーをあげると白濁とした液を浮かべた水がペーパーと一緒に吸い込まれていく。
衣服を整え、冷たい水で手を洗い流し、ついでに顔も軽く洗う。
ひんやりとした感触がバーナビーを正気に引き戻してくれる。
『とにかく平常心で!虎徹さんに気づかれるわけにはいかない!死ぬのはいつでも出来るんだから!!』
ヒーローらしからぬ、どうしても死が脳内から離れていかないところがまだ混乱をしている証なのだが、残念ながらバーナビーは気が付かない。
とにかく知らぬ存ぜぬを貫いて、この淫魔の館から脱出するのが先決なのだ。
このままここに留まっていてはどうなるのか自分でも予想できないバーナビーだった。


*


衝撃の映像に、顔を両手で覆い体を丸め、虎徹は悶絶していた。
『なんだあれ、なんだあれ、なんだあれ』
あまりのショックで体が動かない。ぷるぷる震えて己を守るようにまるまるのが精一杯だ。
『いったいどういうことだよ、あれ!』
ギュッと瞑る眼の裏に浮かぶのは、さっきのゲイアダルトのレイプシーンの数々だ。

自分によく似た男が、バーナビーによく似た男に犯されていた。
よく似ているというか、タイガー&バーナビーをモデルに創られているのだから似ているのは当然なのだが。
自由を奪われて。
ハンドレットパワーも役に立たず。
衣服を破られ剥かれ、犯されていた。
啼いてわめいて嫌がっていたはずなのに、徐々に喘いで鳴き声をあげていた男。
あれが俺だなんて!いや、俺じゃないけど、俺のつもりで創られていたものであって!
あんなあんな・・・ハードな男同士のセックス!!
うわぁぁぁぁぁぁぁ!!
助けてヒーロー!助けてレジェンド!!助けて相棒!!バニーちゃん!!!

ぐるぐるする思考のなか、半分パニックな虎徹はつい助けを求めてしまった。
だがすぐに、自分を犯していたのが助けを求めた相手、バーナビーであることに思い至る。
いやいや、違う、バニーちゃんじゃないし!あれはバニ・ビック・Jrであって!!
あ、そういえば、以前ロッカールームでちょいと観察したことがあるバニーのJrはビックだった・・・ビック・Jrはあながち間違ってないかも。
あのビックジュニアが俺の中に・・・・
って、違ーーう!!俺じゃないし、バニーちゃんじゃないし!
あれは訴えて勝てるレベルのゲイアダルトの内容で!!!

「っっ!!だぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!」

現実と仮想が入り混じり思考はとんでもない方向に行っては戻り、そして虎徹を益々悶絶させる。
自分が叫んでいる声が遠くで聞こえてくる。もうどうしていいのかわからない。
そんなとき。

「ひゃっ!!」

額に当てられた冷たさに思わず声が出た。
驚いて跳ねながら目をあけると、水の入ったペットボトルが揺れている。
火照った手や頬や額をピタピタと軽く叩かれ、その刺激と冷たさに正気が戻ってくる。
「水をどうぞ」
見上げると、行儀悪くも立ったままペットボトルの水を飲むバーナビーがいた。虎徹にも水を差し出ている。
冷静な声色、落ち着いた様子。そんなバーナビーにつられた虎徹は顔を覆っていた手をどけ、ゆったりと起き上った。
「サ、サンキュ」
どもりつつ、ひったくるようにペットボトルを受け取り、一気に呷った。
冷たい水が、口内に満ち、咽を通り、食道を通過して、胃袋へ流れ混んでいく。
火照った体がじわりじわりと冷えていく。
「・・・はぁ」
全部飲み干した虎徹はようやく落ちつくことができた。
あっちこっちへと飛んでいた思考も正常に戻りつつある。
「落ち着きましたか?」
「うん・・・ごめんな?」
同じゲイアダルトを鑑賞して、同じくモデルにされて、よりによって男を犯す役をふられたバーナビーは意外と冷静だ。
ちらりと視線を送るとなぜがぐっと詰まったような表情を浮かべたが、すぐにコホンと咳払いしていつものバーナビーに戻った。
「いえ、気持ちはわかりますから」
「そうだよな」
「でもこれでファイヤーエンブレムさんたちが言われていたことがわかったでしょう?」
「・・・・・・」
わかった、ような気はするがあまり認めたくない。
こんなゲイアダルトが発売され、世の中にそんな目で自分を見ている男がいるなんて知りたくなかった。
「・・・返事は?」
「は?」
「虎徹さん、返事は?」
苛ついた口調にハッとバーナビーを見ると、眉間に皺を寄せ虎徹を睨んでいる。
美形がこんな顔をすると妙に迫力があって・・・怖い。
「今夜のこと、僕は巻き込まれた感がもの凄くあるのですが。なんで僕までこんな目に合わなくてはいけなかったのか理解しているのですか?」
「え、えっと」
「これでファイヤーエンブレムさんたちが言われていたことがわかりましたね?」
にっこり口元だけで微笑まれ、有無を言わさない冷たい目で睨まれて、わからないと答えることが出来る人がこの世にいるかと問われれば、答えは当然NOである。
バーナビーが今ここにいるのは、ファイヤーエンブレムに『相棒でしょう!?』とお目付け役を言いつかったからだ。虎徹に自覚を促すためにこれを観ろと押し付けられたからだ。
もしも虎徹が今までの忠告を素直に受け入れていたとしたら?
もちろんこんな映像を鑑賞させられることになっていないだろうし、こんなものがあるなんて知らずにいられたはずだ。
犯され役の虎徹もショックだが、一回り上の男を犯す役のバーナビーも堪ったものじゃないだろう、怒るのも当然といえる。
まあ、一番問題なのはよりにもよってバディーゲイアダルトをチョイスして、それをふたりに鑑賞させた奴なのだが、今それを言ってもなにも解決しない。
「わ、わかった、わかりました。・・・バニーちゃんにはマジで悪かったと思ってるよ」
しょんぼり肩を落とす虎徹の頭上で小さな溜息が聞こえた。
「わかっていただけたのなら、僕の今夜の苦行も報われます」
苦行って・・・と突っ込みたかったが迂闊に突っ込めば何倍にもなって返って来そうだし、よく考えれば間違いでもないので、虎徹は黙っていた。
その目の前でバーナビーは淡々と動き始めた。
ペットボトルをテーブルの上におき、TVの前に屈むとデッキから記録媒体を抜き取り、ケースに収める。
ちょっと嫌そうに指先で摘まんでいるのが少し可笑しかった。気持ちはよくわかるが。
「じゃあ、僕は帰りますので」
袋に入れた記録媒体を持ち、バーナビーが玄関へ向かう。
「え?!」
「僕の役目は終わりましたので」
虎徹はソファーから立ち上がり、バーナビーを追いかける。
玄関をあけたバーナビーの背中に虎徹はもう一度謝った。
「ごめんな」
嫌な思いをさせて。あんな映像を観させて。
「いえ。まあ、あなただけが悪いわけじゃないですから」
肩越しに困ったように笑ったバーナビーを見て、虎徹は安堵した。
「気を付けて帰れよ」
「ええ。おやすみなさい」
「おやすみ」
パタン、と閉まったドアを見つめて虎徹は小さく息をついた。
「頼りになるね、バニーちゃん」
ずっと年下のはずなのに半分パニックを起こした虎徹と違って冷静だった。
彼の動揺がなくいつも通りの言動をみて、虎徹は落ち着きを取り戻せた。本当に頼りになる相棒だ。
一緒に鑑賞させられたバーナビーには悪かったが、一緒に観たのがバーナビーでよかった。
ひとりだったらいつまでたってもショックが抜けきれなかっただろう。
「よし!酒飲んでさっさと寝るぞ!」
今は落ち着いているが、いつどんなタイミングで思い出してしまうかわからない。
下手すると夢に見そうな気もするから、酒でぐでんぐでんに酔って何も考えられない状態で寝てしまうのが一番だ。
「おっと、その前にションベン、ションベン」
トコトコとトイレに向かい、ドアを開けた途端に虎徹は硬直し、そしてすぐに脱力してその場にヘタリ込んだ。
「・・・バニー・・・ちゃん」
芳香剤に混じって微かに香るのは雄臭く、イカ臭に似ている生臭さ。
男なら誰でも知っている、身に覚えのある匂いだ。
ナニがここで行われていたのか、想像するのは容易い。
冷静に見えていた相棒は、よりにもよって処理を必要とするほど反応し、籠った匂いの対処を忘れるほど動揺していたようだ。

「なんでこうなったーーーーーーーーーーーっ!!!」

虎徹は再び頭を抱え、その場で悶絶するはめに陥ったのだった。
 

 
  

 

 




■あとがき

前回の行間部分を補足(笑)





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