ワイルドタイガーが性的なことを自覚させ隊(1)


完全に巻き込まれた。
バーナビーは誰にも気がつかれないように、こっそりと溜息をついた。
なんで、僕が。
なんで、僕まで。
心底そう思う。それに凄く嫌な予感がする。
自分の知らなかった感情が暴かれてしまいそうな、気がつかないでいようとしていた事実を目の前に突きつけられることになりそうな。
一歩間違えれば、取り返しがつかない、元に戻れなくなりそうな、そんな予感。

虎徹がヒーローの古参仲間から、散々警告を受けていたことをバーナビーは知っていた。
酒の席で、トレーニングルームの他愛無い会話の中で、混ぜ込むように、何気なさを装って何度も同じような言葉をバーナビーは小耳に挟んでいた。
中心はファイヤーエンブレム。
相槌担当ロックバイソン。
対象はワイルドタイガー。
最初の頃は何を言っているんだと思っていたが、バディとして共に行動するうちに信頼感や密接度が高まるうちにそれが杞憂でないことを理解した。


警告内容は「もう少し他人に対して警戒しろ」。
理由は「男に性的な眼で見られている」。


虎徹本人はまったく本気にせず、笑い飛ばしている。
若い頃ならまだ信憑性はあるだろうが、今更こんなおじさんに何が起こるというんだ。実際この年になるまでで何もなかったんだし、百歩どころか万歩譲って、もし何かあったとしても伊達にヒーローはしていない。能力を使わなくっても負けるつもりはない。
それが虎徹の主張なのだが。
バーナビーはヒーロー古参組の言っていることに間違いはないと思っている。
実際、ネット上で「ワイルドタイガー」で検索をかけるといかがわしいコラージュ画像や卑猥な発言で盛り上がっている掲示板などが簡単にヒットするのだ。

元々、古き良きヒーローを体現しているワイルドタイガーのファンは年齢層が高い。
見た目の派手さや格好良さに惹かれる子供や若者は頻繁に発言したりカードやグッツを購入するから、ファンに若年層が多いヒーローは人気があるように見え、反対にワイルドタイガーは不人気に見える。
しかし、確実にコアなファンもいる。それも意外と多い。
最近はファン層も広がり、同時にマニアックなファンも増え始めた。ここで言うマニアックとは、彼を性的に見るファンのことである。
確かに旧スーツはボディラインをしっかり強調している作りだった。細い腰も長い足も今まで人の眼に晒され続けてきていた。
だが、ワイルドタイガーは他のヒーローと同じく、ヒーロースーツ以外でメディアに出ることはほどんどなかったし、なんといってもTVで放映される姿は飛んで走って跳び込んで、一時もじっとしてないから抜群のスタイルを披露することは少なく、そのうえ能力発動時は筋肉が膨張するようにみえるスーツを着用していたから一見マッチョに見えていた。
だからワイルドタイガーは一部のコアファン以外に外見の良さを評価されることがほとんどなかったのだ。
では、なせ最近になってそんな不埒なファンが増えてきたかといえば、バーナビーとバディを組んだことが一番の原因だった。

顔出しヒーローのバーナビーのメディア露出度の高さにつられて、ワイルドタイガーの露出も大幅に増えた。
それもバーナビーとのバランスを考慮され、ヒーロースーツではなく素の姿を晒すことになったのだ。
洋服姿だとスタイルの良さが引き立つ。周りに比較対象がいるから尚更だ。
アイパッチで顔を半分隠しているとはえいえ、整っているのは一目瞭然。
スっと伸びた鼻梁、少しぽってとした唇、すっきりとした輪郭。
年齢を不詳にする、洒落っ気のある服装や髪型。身に着けた装飾品。
バーナビーと並んでも見劣りしない姿の良さが昔のヒーロースーツ姿と相まって、一部のファンに、それも同性である男に性的な感情を湧き上がらせてしまったのだ。
その不埒な輪や視線は徐々に広がりを見せ、とうとう古参組に心配され忠告を受けるレベルに達してしまった。

だが、虎徹は歯牙にもかけない。
バーナビーでさえ気がつき、時にはハラハラすることさえあるのに、虎徹はそういった方面には無知で無防備すぎた。
なにかあってからでは遅すぎる。
虎徹はヒーローであることに自信も誇りもあるから、一般人にどうこうされることはないと考えているのかもしれないが、犯罪者や強姦魔に常識は通じない。
もし能力が切れた直後を狙われたら?相手がNEXTだったら?複数で襲いかかられたら?
もっと簡単なのは薬を使うことだ。睡眠薬や弛緩剤、催淫剤。
薬によって体の自由を奪われたら、いくらハンドレットパワーといえど役になど立たない。
あっという間に変態の餌食だ。
そのことを虎徹はまったくわかっていない、理解しようともしていない。

馬耳東風な態度に、とうとうネイサンが怒った。
虎徹が男の性欲対象であることを、そしてどんな危険があるのかということを、みっちりと教え込むことになった。
あまりの迫力に虎徹は拒否することも出来ず、ただ頷くしかなかった。
そしてバーナビーも。
バディとして、ネイサンの警告に賛同するものとして、最期まで虎徹に付き合う役目を押しつけられた。
いくら虎徹のためとはいえ、バーナビーは遠慮したかった。
本来は知らなくっていい扉をあけるかもしれない行為は出来ればしたくはなかったのに。

「バディでしょ?ちゃんと最期まで責任とるのよ」

にっこり笑いながらも凄んだ声で「逃げるなよ」と付け加えたネイサンが差し出した品を、バーナビーは諦めと共に受け取った。
 
 
 
  

 

 




■あとがき

おじさんは性的だと私は思っております(^ー^)





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