引き立てるもの

 
「なんだよ、この寒さはよ」
突然の寒波に冬支度が間に合わなかったシンタローはぶるりと震えた。
空気が刺すように冷たい。
吐く息が白い。
こんなときは、暖かいものが恋しくなる。
そう思ったのを察したように人肌で温めようとした不埒な男をふっとばしながら、そういえば、とシンタローは思い出した。

あの島は年中常夏で寒さを感じることはなかった。
24回目のこの寒さをいつもよりも寒いと感じるのは、たった1年ほどしかいなかったあの島での生活のせいだ。
「人間、楽な方に慣れるっていうからなぁ」
照りつける強い太陽の日差しは汗ばむほどだった。
タンクトップ1枚ですら暑いと感じることもあったのだ。
だが。
「・・・そうじゃねぇ」
そこにあるから登るといった登山家のように、あの子供はしょっちゅうシンタローを登った。
飛びついてくることもあるし、足元から登りはじめるときもある。
背中だの、肩だの、頭だの、そのときの気分なのか、ちょうどいい場所を探し出してはしがみついてきた。
もちろん子供が登れば犬も登る。
暑かったはずだ。
体温の高い子供と毛皮に包まれた動物がくっついているのだ。
暑かったはずなのだが。
そう思った記憶はどうしても自分の脳内から探しだせなかった。
可愛げのない子供のその行動は、妙に子供らしく感じられた。
甘えることがヘタな子供の精一杯の甘えのような気がした。

だから。
暑くはなかった。
ただ、暖かかった。

寒さが一層、あの南国の島を思い出させる。
あの暖かさが心に蘇ってくる。
それはシンタローの涙腺を緩ませようとしていた。
「くそっ」
潤みそうな目を腕でグイと擦る。
「ホントに、なんだよ、この寒さはよ」
そう言いながら、シンタローは小さく笑った。

 
 
 
 

 
■あとがき■
シンタロー&パプワコンビが好きv
・・・マジシンよりもv<オイ





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