総帥服に身を包んだシンタローは大きく伸びをした。
たまりにたまっていたデスクワークをようやくこなし終えたのだ。
戦闘のように体を使ったことを得意とするシンタローにとって、デスクワークは苦手であった。
だが総帥となった今は好き嫌いを言うことはできない。総帥という仕事は統べることであるから、仕方がないといえば仕方ないのだが、本当に辟易するものなのだ。
一段落ついたシンタローは立ち上がると軽くストレッチをして、デスクワークで縮みこんでいた体を解す。
「さーて、今夜は久々にゆっくり眠れるぜ」
声に出して言うと、最近の睡眠不足で疲れている体の状態が自覚された。
珍しく早く帰れる今日は、明日の仕事の心配もない。
じっくりコタローを見舞って、がっつり夕食を食べて、ゆっくりと風呂に浸かり、ぐっすりと眠る。
それを想像すると、シンタローはそんな当たり前のことが楽しみで仕方なくなった。
普通なら仕事を終えて一杯ひっかけに行こうか、という気になるだろうが、今のシンタローはその選択肢が思いつかないほど、実は疲れきっていたのだ。
「あとは我々の仕事ですのでお任せください」
「明日の午前は特に予定は入っていませんので、出社はごゆっくりどうぞ」
秘書たちの言葉に少し目を見開いたシンタローだったが、彼らが労わってくれていることが伝わってくる。
せっかくだから言葉に甘えることにする。最近、かなり頑張ったのだから少しくらい許されるだろう。
「ああ。あとは頼んだぜ」
シンタローはニカリと笑い、総帥室をあとにした。
シンタローが自宅のドアをあけるとマジックが嬉しそうに近づいてきた。
「久しぶりだね」
両手を広げてを抱き込もうとするのを、シンタローは後ろに飛びのいて避ける。
「なにすんだよっ」
「なにするって・・・久しぶりなんだからいいじゃないか」
マジックは広げた両手をおろし拗ねたように口を尖らせた。
「なにが久しぶりだ!ちゃんと毎日、顔合わせてるじゃないか」
憮然と言い放つが、チラリと焦ったような表情をシンタローは浮かべた。
そんなシンタローの様子をじっとみつめ、ふっと笑ったあと、突然マジックの雰囲気が変わった。
「大丈夫、心配しなくていいよ」
いつもの親馬鹿丸出しの陽気な声でなく、久々に聞くトーンの低い響く声。
それを聞いて、シンタローの背筋にゾクゾクとした感覚が駆け上がった。
マジックは微笑を浮かべてゆっくりとシンタローに近づいていく。
「今日は誰もいないんだよ。ここには私とお前、ふたりっきりだ。安心しなさい」
マジックの両手がふたたび広がりシンタローを包み込んだが、今度はシンタローは逃げなかった。
「ふたりきりなんて久しぶりだね」
腕の中に収まったシンタローの髪をかきあげながら耳元で小さく囁く。
くすぐったいのか少し身じろぐがシンタローは大人しくしている。
言葉による返事はないが抱かれたままであることが返事したも同然だった。
どんなときにも素直にならないいじっぱりな子がとても可愛い。
幾つになっても、自分と同じくらいまで体が成長しても、マジックにとってシンタローは愛しくて、愛さずにはいられない存在だった。
久しぶりに全身で感じるシンタローの体と匂いに、マジックは堪らなくなる。
もともとその気ではあったがそれは最後のお楽しみで、今からは親子としてのスキンシップを楽しむつもりでいたのだが、現実的なシンタローの存在はそんな予定をあっという間に吹っ飛ばしてしまった。
「ひさしぶりに・・・キスしていいかい?」
「は?」
久々のマジックの温もりにうっとりしかけていたシンタローだったが、耳元で囁かれた言葉にいきなり現実に引き戻された。
「随分ご無沙汰だから、お前の味を思い出させてくれ」
否定するどころか反応する間もなく、目の前にはマジックのドアップで次の瞬間には唇が塞がれてしまった。
「んっ!?」
プロセスを楽しむつもりも余裕もない、性急な口付け。
あっという間に舌が絡み容赦なく吸い上げてくる。
息もつかせぬほどのそれは、空腹に満ちた肉食獣がようやく獲物を喰らうときのように激しい。
口内を舐め上げられ、舌を甘噛みされ、唾液すら啜られると、ゾクゾクとした快楽が下半身から湧き上がり背筋をかけあがる。
シンタローは与えられる快感に抗うこともできずにマジックにしがみついた。
背中に回された手が服を強く握り、同時に膝から力が抜けたように腕の中の重さが増したことに気がついて、マジックが薄く目をあけると、瞼をを閉じ応えるように一生懸命口を大きくあけたシンタローがみえた。
すっかりと口付けの快感に酔っているその表情に、マジックの股間がドクンと反応する。
『本当に堪らない顔をするね、この子は』
無意識に煽ってくるシンタローに心の中で苦笑する。
だが、耐えるつもりはない。煽られるままに煽られるつもりだ。
その証というかのように、マジックはシンタローの背を抱きしめていた腕を徐々に下げ、掌で臀部を撫で上げた。
口付けに翻弄されているシンタローはそれに気がつかない。
それを良いことにマジックの手は大胆に動き、引き締まった尻肉を強く揉み上げた。
露骨な刺激に、ようやく気がついたシンタローは頭を振り口付けから逃れると、両手を突っぱねてマジックの体を自分から引き剥がそうとした。
「なっ、なにを!」
真っ赤になって叫ぶが、マジックは悪びれもなくニコリと笑う。
乱暴な動きで逃げようとしているのに、まるで吸い付いたようにマジックの掌はシンタローの尻に張り付いたままだ。
それどころか
「こっちの口の味も思い出したくてね」
という台詞と共にスラックスの縫い目を指が滑り、ある一点で止まるとぐりぐりと押した。
「っ!」
スラックスの上からだというのにピンポイントでその場所を刺激され、シンタローの腰は反射的に指から逃れようと前へ動いた。
だがその動きは股間をマジックに押し付けることとなり、シンタローの状態を教えてしまう結果になった。
「ココも欲しいっていってるね。シンちゃんはおねだり上手だなぁ」
クスクスと笑いながらマジックは自分の太腿をシンタローの股間に押し付けて小刻みに動かした。
動きに合わせて、半立ちになっていたものがどんどん硬くなっていく。
「ちょっと、まてっ」
顔を真っ赤にし往生際悪くまだ逃れようとするシンタローの腕を掴むと、脇にあるソファーへ引き摺っていく。
「待たない」
引き摺られてよろめく体をそのままソファーにうつ伏せに押し倒す。
「なっ」
軽いパニックに陥っているシンタローに抵抗する間も与えず、スラックスを下着ごと遠慮なく膝まで引き下げ、腹の下に大きなクッションをさしいれて腰を突き出した体制をとらせた。
「あっ!?」
後門を撫でられシンタローの体が仰け反った。
指先に感じる柔らかさに、マジックはほぐす必要はないと判断し、ぐいっと中指を突き刺した。
蕾んでいる門は柔らかくほどけ、抵抗することもなくグングンと指を飲み込んでいく。
「ひっ、や、やめろっ」
逃げようと振られる腰を上から押さえ込み、根元まで差し入れた指をかきまわすように動かす。
シンタロー自身は逃れようとしているのに、反対に体内は悦びマジックの指を抜かせまいとするかのように締め付けてくる。
「すごく柔らかいよ。シンちゃん、自分でシテた?それとも・・・キスしただけでこうなったのかな」
指を増やしピストン運動させながら、マジックが耳元でいやらしく囁く。
「まさか、他の誰かに挿れて貰ってたんじゃないだろうね」
「!?」
言われた内容にシンタローの頭は一瞬真っ白になる。
こんな淫乱な体にした張本人がよりにもよって何を言うのか。
恥ずかしさと怒りで、シンタローは後ろを振り向き無言でマジックを睨みつけた。
挿入された指と背中を押さえつけてくる力に体が動かせないのがじれったい。
もし動いたら遠慮なく殴りつけてやるのに。
怒れるシンタローの目を見て、マジックがゆるりと表情を崩した。
黒い瞳に浮かぶのは怒りだけでなく、微かに哀しみの色が混じっていたからだ。
好きな子ほど苛めたい。
まるで小学生みたいなことをしていると自覚しているが、こんなときのシンタローは堪らなくマジックを煽るのだ。
「ごめんね。そんなこと思ってないよ。ここはパパ用の性器だよね」
ニッコリと笑って指を引き抜くと代わりに、すでに引き出し先走りを塗り広げていたモノを宛がい、そのまま一気にシンタローを貫く。
「うっあぁぁっ!!」
いきなりの挿入にシンタローは叫びながら大きく仰け反った。
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