父子の事情

 
「なにが不満なの?」
パプワ島から戻って数ヶ月。
グンマが不思議そうな顔をして、今は『従兄弟』から『弟』になったシンタローに問いかけた。
「・・・なんのことだよ」
「おじ・・・お父様のことだよ」
そういった瞬間、シンタローの顔が不快気に歪む。
マジックのことを話題にするとシンタローは途端に不機嫌になる。
だから話題にあげることを避けていたのだが、たった今、目の前で眼魔砲で吹き飛ばされて遠くの空に消えた父がさすがに気の毒に思えて、グンマは前々から聞きたかったことを聞いてみることにしたのだ。

確かにマジックのシンタローに対する愛情の度合いは普通ではない。
『溺愛』の二文字で表現する以外に方法がない。
実の息子のグンマや眠るコタローに対してマジックは確かに愛情をみせる。
でもそれは一般的な息子に対する愛情で、シンタローに向けるそれとは異なる。
だが、そのことに対してグンマに不満があるわけではない。
シンタローへの溺愛は昔からのことだし、血が繋がっていないとわかった今ではその愛情こそがシンタローを青の一族に繋ぎとめる糸、いや、縄の一本だと思っているからだ。

シンタローに血縁関係がないとわかっても、マジックの息子ラブは健在で、未だにマジックの部屋はシンタローグッツで埋まっているし、手作りシンちゃん人形も携えている。
シンタローもまたマジックを『父』と思っていることはグンマも知っていた。
それなのに、シンタローのマジックへの態度は昔よりも酷い。
24にもなって父親にハグされるのは確かに嫌に違いないが、眼魔砲を撃つまではないではないかと思うのだ。
たぶんマジックも密かに血が繋がってないことを気にしていて、愛情を見える形で表現しようとしているに違いないのに。

「じゃ、おまえ、あいつに抱きつかれてみろ」
「僕はいいよ、もうそんな年じゃないし」
「俺だって、そんな年じゃねぇっての!!」
怒った様子のシンタローにグンマはため息を吐いた。
「んだよ」
「いいじゃない、ハグくらい。お父様なりのシンちゃんへの愛情表現でしょ」
「だから、そんな表現いらねぇって」
「第一少しはよくなったじゃない。最近は鼻血も垂らさなくなったし」
ピクリとシンタローの肩が震える。
シンちゃん人形を縫いながら、シンタローに抱きつきながら、よくあの父は鼻血を垂らしていた。
まさに自分に対する高松と同じ状態である。
鼻血は服につくとなかなか落ちないし、目の当たりにされれば気分的にちょっと引く。
だから、あれがなくなっただけでも良しとしなくっちゃ。
そう言いたかったのだが、シンタローは顔を赤くしたあとすぐに青くして、ぷるぷると震え始めた。
どうみてもなにかを思い出して怒っている。
どうしてか、これは地雷だったらしい。
さすがのグンマもシンタローから立ち上り始めた怒りオーラを感じて、一歩引いた。
「じゃ、シンちゃん、ぼ、僕、用があるから!」
触らぬ神に祟りなし。
シンタローがなにか言う前にグンマは速攻で逃げ出した。


「シーンちゃんvv」
いつのまに復活したのか、マジックがシンタローを後ろから抱きしめた。
「なっ!?」
なにも知らないグンマの能天気な言葉に対する怒りでいっぱいだったシンタローは隙をつかれた。
両腕ごと思いっきり抱きしめられて、というか締め上げるように抱きつかれてシンタローは慌てた。
首筋にマジックの顔が埋められる。
「シンちゃん、いい匂いv」
「やめろっ、気持ちわりい!」
身をよじろうともマジックの力は強く、体どころが両手も動かすこともできない。
後頭部で頭突きか蹴りか。
どちらを繰り出すべきかタイミングをはかっているうちに、足の間にマジックの片足が割り込んできて蹴りを封じる。
じゃあ頭突きだ、と思ったがマジックの顔はシンタローの首筋に埋められていてぶつけることが出来ない。
背後から締め上げるように抱き締めてくるマジックにシンタローは舌打ちをした。
「シンタロー」
首筋をネロリと舐め上げられて、シンタローは声にならない声をあげた。
自分の顔が真っ赤になっていくのがわかる。
なにが親愛の情だ、なにが愛情表現だ。これをセクハラといわずしてなんというのだ。
「最近パパ、鼻血出さないんだって?」
マジックがクスクスと耳元で笑う。
その度に吐息が首筋を嬲って、シンタローはゾクゾクとした感覚が背筋をかけあがるのを感じる。
「・・・いい加減にしろよ」
「なにが?シンちゃんv」
「この変態!んなもんおしつけんな!!」
唯一自由を許された足をあげ、マジックの爪先を思いっきり踏みつける。
「っ!!!!」
マジックが痛みに息を呑み、拘束する力が緩んだ。
それを逃すシンタローではなく、一瞬の間にマジックの腕から逃れ1メートルの距離をとった。
「・・・痛いよ、シンちゃん」
眦に少し涙が浮かんでいるのをみて少し溜飲がさがる。
爪先というのは鍛えられるものでもなく、そこを攻撃されれば勿論かなりの痛みを受ける。
「あんたが悪いんだろうがっ!」
シンタローが真っ赤に顔を染めて怒鳴る。
「だってシンちゃんに抱きついたら普通こうなるでしょ?」
「普通は息子に抱きついてもそんな風にならねぇんだよ、普通のチチオヤは!!」
「仕方ないだろ、血ぃ繋がってないんだもん」
プンとマジックがすね気味に顔を背けた。
「なっ」
「前は血が繋がってると思ってたから無意識に我慢してたんだろうね、だから鼻血がかわりに出てたんだけどね」
お前は息子だ、と言いながら血が繋がってないと言い放つ、この無神経さにシンタローはムカつく。
「でも今は遠慮なく海綿体に血液を送れるからね、鼻血はもう出ないよv」
「かっ、海綿体とかいうなーーーーーーーーーー!!!!」
シンタローの右手から放たれた眼魔砲が、マジックの体を遠くの空へとまたもや吹き飛ばした。


鼻血を出さなくなったかわりにとんでもないところに血を集中させるようになったマジックに、貞操の危険を感じるシンタローの苦悩は誰にも伝えることができないのだった。
 
 
 
 

 
■あとがき■
『南国』から帰って来たあとの話。
一応、マジシンのつもりなのです(笑)
でもまだヤってない設定♪






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