暗闇の中は濃厚な空気で満たされている。
五右エ門が目をあけると、視界に入ったのは天井ではなく見慣れた男の顔。
汗を流しながら前後運動をガツガツと繰り返している。
ガンと突き上げが来るたびに、体を縦に衝撃が走る。
荒い息を繰り返すために開いた唇から、つい喘ぎが漏れ出てしまう。
今更だというのに、闇に響いた己の声に羞恥が湧き上がる。
それを隠そうと五右エ門は息を整えてから口を開いた。
「まるで喰われているみたいだ」
それは嘘でも揶揄でもはない。
いつも思っていたことだ。
この男は自分を抱くときはいつも貪るように激しく長い時間をかける。
他の者に対するときはどうなのか知らないが、少なくとも五右エ門に対してはそうだ。
ぐにゅぐにゅりと体内をかき回され息を飲むが、今度は喘ぎは抑えられた。
「・・・日頃は・・・猿みたいなのにな」
そう言うと、ルパンは目を丸くして声をあげて笑った。
笑うような場面ではないのだが、その大きな笑いは結合部分を通して五右エ門の体内にまで響く。
「サルかよ」
答えながらも動きは止めない。大きく円を描くように腰を回し、体内をかき回す。
「愛嬌もよく頭もいいが・・・意外と、凶暴」
ぐっと体に力を入れて湧き上がる快感を散らしながらそう言い返すとルパンの動きが止まった。
サルに例えられて怒ったのかとも思ったが、そうではないらしい。
じっと五右エ門をみつめてから、目を細めニヤリといやらしい笑いを浮かべた。
なぜか「しまった!」という感情が湧き上がってくるが今更どうすることもできない。
「知ってるか?」
優しい声色でそう問いかけながらルパンは再び前後に動き出す。
「うあっ」
ズルリと先端近くまで抜いてはズンと一気に根元まで突きこむ動きを繰り返されて、堪らす五右エ門は仰け反って声をあげた。
「いい声だな」
含み笑いでそう言われて、五右エ門はギッと自分の上で動く男を睨みつける。
なかなか陥落しない、強い抵抗を続ける態度がルパンを煽り、行為が際限なく激しくなるのだと五右エ門は気がついていない。
「猿ってのはな、一度自慰を覚えると死ぬまでヤり続けるんだぜ?」
女の柔らかい足とは違う、筋肉に包まれた細いが堅い足を抱え直しながらルパンは歌うように言う。
行為の最中でも常とあまり変わらない、余裕の態度に五右エ門は悔しさを感じる。
「まるで・・・今のおぬしだな」
脳天まで突き上げられる衝撃をどうにか耐えながら、その悔しさを憎まれ口に変えた。
普段白い肌は朱色に染まり、強い眼光も欲情の色に変わっているのに、まだそんな口をきく五右エ門をルパンは愉しげに眺めた。
「じゃあ、お前は自慰、つまり快感の元ってことだな」
意味がわからなかったのか一瞬呆けたが、すぐにムッとした表情を浮かべる。
だが、それは間違いではない。
包み込む熱さや締まり具合はかなり上等の部類に入るし、最初の抵抗を組み伏せて快楽に落としていくプロセスもやりがいがあって愉しい。
女相手とは違う、喰いがいのある最高の相手なのだ、五右エ門は。
でも、こんな口をきくということはまだまだ余裕がある証拠だ。
ルパンはふたりの腹の間で揉みくちゃにされている五右エ門のモノを握りこむ。
「うあっ!!」
体の中と外を同時に刺激され、五右エ門が大きく仰け反った。
「複上死とか憧れるな〜」
くちゅくちゅと音をたてて握りこんだ手を上下に動かすと、手の中のモノはグンと益々大きくなり、先端から先走りが溢れだす。
「ば、か・・もの」
もう喘ぎをとめることもできず、五右エ門が弱々しい声で答えた。
キュウウと締め付けてくる内壁は、五右エ門が強い快楽を感じている証でもある。
それを自分自身で確認しながら、ルパンは腰の動きをますます複雑に、そして激しくした。
「あっ、ぁ」
快楽を散らすように頭が振られパサパサと長い黒髪がシーツの上で跳ねる。
「お前にも天国をみせてやるよ」
そういうと、ルパンは抱えた足を屈伸させるように縮ませ、上から覆いかぶさり喘ぎ続ける唇に噛み付くようにキスをした。
下位の獣が上位の獣に勝てないのと同じ。
五右エ門はルパンを拒むことも抵抗することもできず、ただ与えられる快楽に身を捩り、飽くことなく続けられる行為に吐精を繰り返す。
まるで獣の交尾のようなそれは、喰われるのと同意だ。
身も心も捕らわれて五右エ門はルパンから、もう離れることはできない。
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