【 舐める 】
 
 
 
 

 
原因はなんだったのかよく覚えていない。
俺のちょっとした言葉だったような気がする。
ブラック・ジャックはこう見えて意外と喧嘩っぱやいことは既に知っていたのに油断した。
口喧嘩からはじまって、先に手を出したのはこいつの方だった。
俺だって伊達に戦歴があるわけではない。
それなりに鍛えてあるし、そう簡単に負ける気はないのだが、こいつはどんな修羅場をくぐってきたのか、妙に腕が立つのだ。
殴り合いに発展したものの、お互い相手の攻撃を避けつつ拳を繰り出す、ということを繰り返した。
結果、髪はクシャクシャ、周りの物もなぎ倒されることになり、お互い数発ずつだが攻撃がヒットした。
ハアハアと荒い息を吐きながら、一定の距離をとり睨みあう。
かなり疲れてきたし、相手に隙がないから、次の手が繰り出せない。
息が落ち着いてくると共に、頭に昇った血もおりてきて精神的にも感情的にも落ち着いてきた。
ブラック・ジャックも同じなのだろう、立ちのぼっていた殺気が薄れた。
だが、相変わらず真赤に染まった目はギラギラと光って俺の視線を捉えたままだ。
口内に鉄の味が広がっていることを今更ながら自覚した。
こいつに殴られたとき唇の端を切ったのだろう、チリチリと痛み、血が伝い落ちていくのを感じる。
目の前のブラック・ジャックの顔も同じようなもので、左目の下は少し腫れあがっているし、左頬にも大きな傷がつき血が滴り落ちている。
怒りに任せていたとはいえ俺も随分なことをしてしまったものだ、と思ったとき。
ふいにブラック・ジャックの右手があがり、俺を殴ったために血が滲んだ手をペロリと舐めた。
赤い舌が妙に鮮明に視界に飛び込んでくる。
ボサボサになった髪、腫れて傷を作った顔、凝視する強い視線。
すべて男男しているのに、なぜか妙に色気を感じる。
そう思ったとき、俺は喧嘩の原因になった台詞を思い出した。
唇を薄く開き切れた端を舌先でペロリと舐めながら、ブラック・ジャックをみつめる。
ホラ、どうだ。おまえさんもそう思わないのか?
俺が言ったことは別に怒るようなことじゃない。
女扱いされたと勘違いして激怒したんだろうが、どうだ、男にも使えるだろうが『色気』という言葉は。
ブラック・ジャックの目が今までと違う意味を乗せてギラギラと燃えだす。
もちろん俺も同じ目をしているのだろう、自覚はある。


さて、ブラック・ジャック。
第二ラウンドをはじめようか。
俺はニヤリと笑ってブラック・ジャックに向かって手を伸ばした。
 
 
 
 
 

    
 
 
   
 ■あとがき■
romiさまのイラストがあまりにも萌えだったので
つい勝手に書いてしまったSS。
イメージ台無しにしてすみません(平伏)
でもつい妄想しちゃったんだよーー!
そのくらい喧嘩BJツボだったんだよーー!
と言い訳してみる(反省の色なし)


 
 
 

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