【注意】

TVシリーズ『BJ21』の最終回を補完妄想。ちょっぴりネタバレあり。
一応、元ネタを知らなくても大丈夫だと思います。
 
 
 
 

 
 
【 Afterwards (2) 】
 
 
 
 

 
意外な人物の登場に言葉を失ったBJは呆けたように目の前の男を凝視して立ちすくんでいた。
ドクター・クーマが何かを言って出て行ったのもなんとなく知覚しただけだった。
彼と入れ替えに男が部屋の中に入ると、その背後で扉が閉まった。
すぐ目の前に、ほんの至近距離に立つ男はしばらく黙っていたが、BJの様子に少し呆れたように片唇をあげ、「ブラック・ジャック」と名前を呼んだ。
聞きなれた低い声。
ハッと目に焦点が合ったのを確認したキリコはBJの体を思いっきり抱きしめた。
「なっ!?」
突然の抱擁に驚きみじろぐが絡みつく腕は離れない。
それどころか後ろ髪を乱暴に引っ張られ、上向いた顔にキリコの顔が近づく。
あっという間だった。
避けるとか、どうしようとか思考するよりも早く強引に唇が奪われた。
上向かされ薄く開いた唇の中に、当たり前のように太い男の舌が差し入れられる。
体も頭も強い力でがっしりと固定され、逃げることも抵抗することもできない。
キリコの舌は口蓋を舐め歯列をなぞり散々好き放題に口内を蠢いたあと、奥に逃げていた舌に絡みついた。
「んっ・・うぅン」
流し込まる唾液がBJの唾液と混ざり合い、唇の端から流れ落ちていく。
激しく深い口付けから受ける快感にもがくように続いていたBJの抵抗がやみ体の力が抜けたあと、ようやくふたつの唇が離れた。

「なんで・・・お前がここに」
支えを失って床に崩れたBJは、片膝を床につき目の前に立つ男をみあげた。
荒い息を吐きながらの問いかけにキリコはニヤリと笑った。
「フェニックス病対策の精鋭だとドクター・クーマが言っていただろう?」
「・・・ふざけるな」
「ふざけちゃいねぇよ」
キリコはBJの腕を掴み引き起こしたあと、部屋の真ん中に置かれたソファーに近づきドサリと座った。
「俺の父親が誰だか忘れちゃいないだろ」
ノワールプロジェクトの一員であったドクター・ジョルジュ。
フェニックス病を発病させて死んだが、全ての発端であるBOPウイルスの発見者だった男だ。
「お前さんがどう思ってるか知らないが俺だって簡単に安楽死を施すわけじゃない。
あの病状の原因を調べるため親父の部屋にあった研究資料はすべて目を通してた。
それこそ何度も何度も、どこに何が書いてあるか覚えちまうくらいな」
キリコは煙草を取り出すと咥えて火をつけた。
「俺にもくれ」
BJがキリコの前のソファーに座ると、煙草の箱が手元に飛んでくる。
1本取り出し咥えた煙草の先に、体を乗り出してきたキリコの煙草が押し付けられる。
火が移るまでの間、息がかかるくらいの距離でお互いをみつめあう。
キリコが離れてソファーに凭れるのを視線で追ったあと、BJは白い煙を思いっきり肺から吐き出した。
「お前さんと別れたあと、ま、俺もなんだか気になってな。自分なりに色々と調べてみてたのさ」
そしたら数日前。
キリコの前にアメリカ政府関係者が訪れてきた。
どう探りだしたのかわからないが、さすが政府機関といったところか。
『ドクターキリコ。貴方の知識をお借りしたい。協力をお願いします』
そう言われても別に心を動かされることもなく、無下に断ろうとしたのだが。
スカイホスピタルの中で起きている出来事、それにBJが関わっていること。
それどころか発病した彼らがあとどれだけ持つかわからず、全力で対策にあたっていることを聞かされて愕然としてしまった。
断れなかった。いや、BJの命が関わっているのだ、断るどころか『何をノロノロやっている。とっとと連れて行け』とつい怒鳴ってしまった。
「今回の件でちょっと齧った程度の医者と比べれば、精鋭だろうよ」
クククッとキリコは喉の奥で笑った。
BJに渡されたあの膨大な量の情報。あれでも必要と思われる情報だけを厳選したものだ。
その分類を行ったのがドクター・クーマとキリコだった。
厳選することは出来ても、その情報から治療法を見つけ出すことは彼らにも難しかった。
タイムリミットは迫るのに解決の糸口はみつからない。
あの21時間はキリコにとっても、気が狂わんばかりの焦燥に満ちた時間だった。
決して諦めない、助けてやる。そう思ってはいたが、心の奥ではもう無理だと感じていた。
もしキリコたちが治療薬を開発できたとしても、それをBJの元に送り届けることは難しい状況だったからだ。
結局は命の危機にあった張本人であるBJが治療薬を作り出すことに成功したのだが、それを知ったときの安堵はなんとも表現しようがないものだった。
諦めていたものが戻ってきた。
死という誰もが平等に与えられる終末からBJは逃れて、今回は命を永らえることができたのだ。
失うはずだった魂。
消え去るはずだった体。
それを再びこの腕で抱きしめることができる。
もう離さない。誰がなんと言っても絶対に失うことはできない。
まだ、治療が完全ではないというのなら今度は自らの手で治療にあたってやる。
いつも死を紡ぐこの手を使って確かな生をBJに与えたい。
そう思って、BJの担当医師に立候補した。
だが、キリコはそれをBJには語らない。教える必要はないし、知られたいとも思わないからだ。

BJもキリコが今回の事件に関わったことについて、深くは追求しなかった。
聞かずともわかる。自分の存在ががその原因の何割かを占めているであろうことをBJは知っていた。
自惚れではないことは今ここにキリコがいること、そして先ほどのキスで証明されている。
「俺はお前さんのことを思い出しもしなかった」
それだけ必死だったのだ。
生と死の狭間で命を救うことだけに必死だった。己のことは省みていなかった。
「ま、そうだろうな。お前さんらしいよ」
キリコが煙を吐きながら苦笑した。
「だが気を失ったとき夢にはみたぞ」
「夢?」
「ああ、死神らしく、本間先生や俺の両親・・・亡くなった人たちに紛れてたよ」
「なんだ、そりゃ」
報われないなぁ、そう呟いてキリコはクククと笑った。
別にそれが哀しいとか酷いとか思わない。
なんと言ってもBJらしいし、夢の中で思い出して貰えただけでも深層に存在があったということだろう。
それで十分だ。
「だが・・・」
「なんだ?」
「すべてが終わった後になら思い出した」
「え?」
「また、お前さんに会えると・・・思ったよ」
いつもなら決して言わないだろう言葉を受けてキリコはひとつだけの目を大きく見開いた。
BJは目を反らすでなく、呟くでなく。はっきりとキリコの目をみてそう言ったのだ。
キリコの目は細められ表情が緩んだ。
「それで十分だ」
短くなった煙草を灰皿に押し付け火を消し、同じくBJの手に残る煙草をとりあげ灰皿に押し付ける。
軽く腰をあげ体を浮かして、テーブル越しにBJの唇に唇を重ねた。
すぐに反応して積極的に差し出される舌。
それを甘噛みすると、BJは微かに呻いて両手をキリコの首に回した。
今度は一方的ではなく、お互い求め合い貪るようなキスを交わす。

「・・・はぁ」
長いキスを終えたBJの唇から甘い吐息が洩れた。
「ベットに・・・移るか?」
「ば、馬鹿いうな」
BJはキリコから体を引き剥がしながら慌てたように言った。
「なんでだよ」
「できるか、こんなところで」
「いいじゃないか、生の悦びを分かちあおうぜ」
「お前が言うと『生』が違うセイに聞こえるっ」
BJは仰け反るように体を引いてキリコの手から完全に逃れると、ソファーから立ち上りそのまま背を向けて扉へと向かった。
「どこに行くんだ?」
「ピノコの様子をみてくる」
キスの余韻を残した潤んだ目でキリコを睨みつけてから、BJは部屋を出て行った。
そう簡単に誘いに応じるとは思っていなかったが、想像してた通りの反応にキリコはクククと喉の奥で笑った。
「遅かれ早かれ同じことなのになぁ・・・馬鹿な奴だ」
なんといってもキリコはBJの担当医。
これから始終ベッタリとしていても誰からも文句は言われないし訝しがる者もいないだろう。
情を交わすチャンスはきっと数え切れないほどある。

キリコの焦燥感は完全に払拭されたわけではなかった。
BJがなんと言おうと、どんなに拒否しようと。
生きて今存在することを全身を持って確認しないとキリコは安心できない。
「ま、今夜までは待ってやるさ」
キリコは立ち上がると、そう呟いて主のいなくなった部屋を後にした。


その夜はキリコの希望通りになった。
しかし、ピノコや隣の部屋に陣取る白拍子の存在のせいでキリコの予想はあっさりと裏切られ。
結局、その後は悶々とした日々を過ごすことを2週間強いられたのだった。
 
 
 
 
 

    
 
 
   
 ■あとがき■
ということで。
BJ21最終回、勝手に補完妄想デシタ。
いやぁ、このくらいキリコには影で活躍して欲しかったなぁと。(笑)

BJのために頑張るキリコ。
でも本人には多く語らず・・・
ってのは男らしくって萌えるんですがどうでしょう?<聞くな

言葉に出さなくってもお互い理解しあってる
ってのが私の理想のキリジャなんですよね。
文章力なくってうまく表現できてませんが(^^;) 
 
 
 

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