他愛もない話をしながらダラダラと街並みを歩いていると「お」と小さい声をあげてルパンが足を止めた。
その視線の先をヒョイと覗き込んでみると、小さいアンティークショップ。
小さい硝子窓の向こう側には骨董品が所狭しと置かれているが、次元の目から見てもたいした品はない。
目利きなルパンの興味を惹くようなものはなさそうなのに何に反応したのか。
そんな次元の疑問に気がついたのか、ルパンが笑いながら「これこれ」と指差した。
窓辺に幾つかの品物が飾られている。その端にひっそりと扇子が置かれていた。
日本から遠く離れたこんな所にあるのが不似合いなそれは、たったひとつだけだ。
他に日本の品は見当たらない。
店の主が偶然手にいれて珍しさから飾ったといったところか。
「あいつ元気にしてっかな」
ヨーロッパの片隅でひっそりと置かれているたったひとつの異端。
連想するのはただひとりだ。
「気になるなら、そろそろ呼び戻せばいいだろ」
大きな仕事が終わった直後に修行だと言って日本に戻って随分経つ。
五右エ門も気が済んだ頃だろう。
ふたりでもそれなりに仕事をしていたが、そろそろ五右エ門の力が必要になるほどの大きなヤマを踏みたいというのが本音だ。
難攻不落。命がけ。スリル。
それらの単語を一度体験すると、病み付きになる。
「ま、そろそろな」
ルパンはニヤリと笑って「そういえば」と言葉を続けた。
「五右エ門って扇子より扇って感じしねぇ?」
コンと窓ガラスを叩いたルパンの台詞は、前後で話題が繋がっていないが気にしてたらきりがない。
確かにこの古い品を見て、ふたり同時に五右エ門をイメージしたのは間違いない。
だが。
「扇子と扇ってどう違うんだ?」
日常品ではないし、自分が使ったことないからわからない。
「さあ?」
頭を悩ませて問うた返事がこれである。付き合っていられない。
口をへの字に曲げて無言で歩き出した次元の後を笑いならがルパンが追いかけていく。
この地でルパンファミリーが揃うまであと少し。
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