■駅弁の日■
 
 

ソファーの上でダラケテいる相棒がひとり。
いるはずのもうひとり相棒の姿はない。
不二子を交えて次の計画内容の説明をする予定であることは伝えていたのだが。
「五右エ門は?」
「さっき不二子と駅弁大会に行ったぜ」
「不二子ちゃん、もう来たのか?ってか、えきべんたいかい!?」
「・・・そこのデパートでや」
「デパートで!?それって公開プレイ?!五右エ門め!俺を差し置いて不二子ちゃんと!?」
「オイ」
「わーってるって。全国美味いもの駅弁大会だろ」
日本のデパートではよくある催しだ。
遠出しなくても各地方の名物弁当が手に入るということで人気が高い。
五右エ門は喜びそうだし、なんだかんだ言って不二子も女だ。こういうものを好みそうである。
ふたり仲良く出かけたことは微笑ましくもあり、ちょっと悔しくもある。
「そういやおまえ、ヤったことある?」
「・・・なにをだ」
唇を尖らし拗ねた様子を見せていたのが一転、満面の笑みを浮かべたルパンはどうせ碌なことを言い出さない。
次元は少し警戒しつつも一応返事してやる。
「五右エ門と駅弁」
やっぱり下世話だった。
次元は無視を決め込もうと、ソファーに深く沈みこもうとしたのだが。
「やっぱヤったことないかー。あの体位って腕力も体力いるもんな。次元にゃムリか」
聞き捨てならない。
「ムリじゃねぇよ」
「あの筋肉質の60キロの身体を抱えて腰振るんだぜー?できんの?」
出来んの?と聞かれて次元は想像する。

全裸でもいいが、着衣が乱れている状態でもいい。
細いが筋肉質の足を広げて両手で抱えあげる。
落とされまいと五右エ門は必死になって抱きついてくるだろう。
先端を宛がい腕をゆっくり下ろせば、じりじりと埋まっていくはずだ。
奥の奥までずっくり挿入すれば、串刺しなり逃げらない五右エ門は仰け反り喘ぐだろう。
その身体を乱暴に揺さぶって、同時に思いっきり突き上げて。
好きなように蹂躙する。

ゴクリ。
次元の喉がなった。
駅弁の体勢をとるくらいはわけないが、持続して責め立てるにはそれなりの体力がいる。
「・・・腕力と下半身を重点的に鍛えるか」
色欲に取り付かれた様子の相棒を呆れたように見て、ルパンは「ま、頑張れよ」とエールを送ってやり、心の中で『ごめん、五右エ門』と謝った。
あまり悪いとは思ってないが、まあ一応。

 
 
■4月10日■
 

 
 
 

   
■決闘の日■
 
 

決闘、果し合い、真剣勝負。
表現は色々あれど、生きるか死ぬかの勝負を次元は幾度も乗り越えて来た。
今ここに在るのはその勝負に勝って来たからだ。
楽勝なときもあれば、瀕死の重体を負ってようやく手にした勝利のときもある。
極僅かであるが引き分けだったことも。
楽しかったことはない、嬉しかったこともない。
命がけの勝負に気分が高揚しスリルに興奮したことはあるがそれは本能的なもので、終わってみれば虚しさが身を包む。
だが、今夜の勝負は今までとは根本的に違う。
命の駆け引きそこないが、プライドがかかっているのだ、絶対負ける訳にはいかない。
負ければ望まぬ未来が待っている。
勝てば心底望んでいる薔薇色の未来だ。
期待に心が震え、興奮が身を包む。
ようやく此処まで辿りつけて、身も心も歓びに満ち溢れている。
だが、その前に男同士の真剣勝負。
ある意味『決闘』と言ってもいい。雌雄を決するときが来たのだ。
絶対に負ける訳にはいかない。

ドアの前で次元は咽を鳴らして唾液を飲み込む。
乱れそうになる心をどうにか落ち着かせ、軽くドアを叩いた。
「・・・はいれ」
少しの間を置いて返事をしたのは、愛しい侍だ。
やっと手に入れた恋人との初夜。
だが相手が男、五右エ門というところで、抱き合う前に一戦が必要になる。
それはまさに字の如く『雌雄』を決するためだ。
絶対に負けない、五右エ門を丸めこんでみせる。抱くのは俺だ。
次元はそう意気込んで、甘い夜へと続くドアを開け、五右エ門の待つ部屋へ足を踏み入れた。

 
 
■4月13日■
 

 
 
 

   
■よい子の日■
 
 

次元はとことん落ち込んでいた。
足元が土であれば深く掘って埋まってしまいたい程だ。
わかっている。あのときはどうしようもなかった。あの状況ではあれがベストだった。
理性では理解していても、感情は別だ。
ソファーに座り込み頭を抱えた体勢で次元はじっと動かない。
後悔の波が押し寄せる。感情が負の方向へと流れていくのが止められない。
慰めはいらない。誰も近寄ってくれるな。
ヘタに言葉をかけられたら声を荒げて八つ当たりしてしまいそうだ。
放っておいてくれ。ひとりにしてくれ。
全身でそう訴える。
ちいさな溜息と共に気配が動く。
今回ばかりは次元の意に沿うことにしたのか、ドアが開いてルパンの気配が消える。
続くように、布の摺れる音。
だがそれはすぐにドアには向かわず、次元の前で立ち止まった。
声をかけるな、さっさといけ。
心の中でそう毒を吐き、全身で対話を拒絶する。
頭上から慣れ親しんだ軽い重みが消え、なにかが直接頭を撫でた。
優しい動きで一往復する。
ドアが閉じる音で我に返った次元が顔をあげると、もうそこには誰もいない。
頭上には慣れ親しんだ軽い重み。
だが、その隙間には温かい手の感触が残っていて。
「〜〜〜〜ッ」
何をされたのか気がついた次元は再び頭を抱えこんだ。
こっぱずかしさが体の奥底から湧き上がってくる。
次元はとことん落ち込んでいた。
放っておいて欲しかった、ひとりになりたかった。
だが、今は別の意味でひとりでよかったと、周りに誰もいなくてよかったと心底思った。

 
 
■4月15日■
  

 
 
 

   
■地図の日■
 
 

お宝の眠る秘境へ通じる道。
一見穏やかに見えるものの、実際に辿ってみるとゴツゴツとした凹凸が続く。
湧き出る水滴が溜まる窪み。一定の量を超えると流れ落ちていく。
ゆるやかな丘を超える途中にある小さな頂で一休み。
休みがてらじっくりと観賞し、触れてその存在を確認する。
思ったより夢中になって時間をかけすぎてしまったのに気がつき、進み始める。
なだらかで長い傾斜を下ると一層深い穴がみつかる。
奥に何か隠されていないか周りを探索するも、目的の場所ではないことはわかっている。
名残を惜しみつつ下り続けると、草原に出た。
さわさわと揺れる感触が気持ちいい。
草原の先には今までになかった山がそびえている。
手前に高い山がひとつ。
その先には、その両脇を固めるように低い山がふたつ。
高めの山は頂から湧き水が溢れだし、流れ落ちている。
湧き水で喉を潤し、隅々まで探検する。
知らぬ所はないと思えるまで探索を続け、満足して初めて先に目をやる。
この山の先、低め山の根元をもっと深く下ると目的の場所があるのだ。
期待で心臓が高鳴る。喜びと興奮で息が荒くなる。
早くたどり着きたい、でももう少しこの興奮を楽しみたい。
真逆な心理に揺れるが、結局お宝を手にする欲望は抑えきれない。
ゆっくり進むと小さなふたつの丘の先に、パックリと割れたクレバスが現れた。
あの奥だ。今は見えないクレバスの奥に欲して止まない狭き門がある。
その狭き門こそ、お宝である。
滅多に目にすることが出来ない、誰も手に入れられない、特定の人間にした晒されることのない場所。
その狭き門を通り抜け洞窟の奥底へ侵入すれば、この世の春かと思えるほどの快楽を得ることが出来る。

次元だけが知っている、次元だけの地図。
それを使って今宵も狭き門まで旅をする。
五右エ門の首筋から後門までの、長く短い旅を。
そして快楽という最高の宝も今夜も手に入れるのだ。

 
 
■4月19日■
  

 
 
 

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