■催眠術の日■
 
 

あの瞬間まで俺はなんともなかった。なにも思ってなかったはずなんだ。
それなのに突然衝動がこみ上げてきたんだ。
まるで光に集まる羽虫みたいに。
まるで蜜に引き寄せられる蜂みたいに。
抗いようのない何かに惹き寄せられた。
抵抗なんて出来なかったんだ。
体が熱くなって頭がクラクラして息が苦しくなって眩暈までした。
無意識に手が伸びて気がついたら引き寄せてた。
俺の意思はあまり動いてなかった。
すべてが夢の中の出来事みたいで自分が自分じゃないみたいでさ。
そうだ、まるで催眠術にでもかかったみたいだったんだ。
どうしようもなかった。
俺の意思ではもうどうしようもなかったんだよ!

「それは溜まってただけの、ただの欲求不満だろ」

天の岩戸ごとく、完全に閉ざされた五右エ門の部屋の前。
燦燦と朝陽が差す廊下に全裸で追い出さた次元が延々と言い訳をするのを、ルパンは一言で斬って捨てた。

 
 
■3月21日■
 


 
 

   
■さくらの日■
 
 

桜の木の下には死体が埋まっているから、桜は美しく咲き誇る。
だから、桜がどんなに美しくとも不安を覚える必要はない。
桜が美しいのは下に死体が埋まっているから。
ちゃんとした理由があるのだから。

「それが・・・なんだというのだ」
大きく仰け反り唇を震わせながら、五右エ門が息も絶え絶えの様子で問うた。
「お前さんが教えてくれたことだぜ」
ぐんと突き上げると、白い肢体が風に戦ぐ柳のようにゆらゆらと頼りなく揺れる。
同時にアァと喉の奥から甘い喘ぎが漏れた。
それに羞恥を覚えるのだろう、五右エ門は唇を噛み締めて声を殺した。
「声、出せよ」
次元の腰を跨いで座らせられた五右エ門の胎内には硬い楔が深々と突き刺さっている。
自重のためにいつもより奥の奥まで拓かれ貫かれた体に与えられているのは痛みよりも強い快楽。
逃れたくても腰にも足にも力入らず、次元のなすがままだ。
女のように男に貫かれ、女のように感じ、女のように喘ぐ。
それが五右エ門は許せないし、耐えられないらしい。
だが、次元にとってはそれらの要素はすべて嬉しいだけだ。
汗に濡れた肢体があやかしくくねる様も。
快楽に悶え乱れる様も。
突き上げと共にあがるいやらしい声も。
耐える姿もいいが、そんな姿の方がもっといい。
自分の与える快楽に乱れる姿をみて興奮しない恋人はいない。
「お前がこんなになるのは」
腰を支えていた両手を伸ばして尖る乳首を捏ね上げると、白い体は大きく跳ね上がり、嬌声があがった。
「俺がお前の中に埋まっていて」
五右エ門の軽くはない重さで動きにくいが、それでも最大限の力を持って突き上げる。
根元までずっくり埋め込まれた楔が反応した胎内にキュキュッと締め付けられ、次元も思わず快感に呻いた。
「俺がお前に惚れていて、お前が俺に惚れているからだ」
だから恥じ入る必要はない。
いやらしい痴態を思う存分見せてくれ。
無言の要求をつきつけて、次元は腹筋の力で起き上がり、そのまま五右エ門を組み敷いた。
あとは思う存分に胎内を擦りあげ、立ち上がり揺れる勃起を愛撫して。
ちゃんとした理由のもとに、ふたり一緒に喘ぎいやらしく乱れるのだ。

 
 
■3月27日■
 

 
 
 

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