■省エネルギーの日■
 
 

冬は日が暮れるのが早い。
2月になれば少しは日が長くなるが夕方6時を過ぎれば真っ暗になる。
挙句に寒い。
暖房器具をつけるか風呂に浸かるかしなければ寒さを凌ぐのは厳しい。
修行と質素を愛する五右エ門にとればとるに足らぬことだが、次元はそうはいかない。
仕事中ならまだしも日常生活を送るうえで無駄な寒さや暗さは御免こうむりたい。
それなのに。
早い夕食をとりさっさと風呂に入ったこの日の次元は文明の利器を自ら放棄した。
照明を落とした部屋は窓から差し込む外部の明かりを頼りにしなければならない程の薄暗さ。
暖房を切った部屋はじりじりと溜め込まれた暖かさを散らしはじめ徐々に温度は下がっていく。
宵っ張りで寒がりな次元の行動とは思えないと、ソファーで胡坐をかいていた五右エ門は驚きに瞠目した。
「どうした次元」
目の前に立った男を見あげ問うと、無言で手首を引かれた。
思わずソファーから立ち上がった五右エ門を次元はぐいぐいと引きずっていく。
冷え切った部屋に連れ込んで、冷えた寝具に五右エ門を押し倒し、ようやく次元は口を開いた。
「今日は省エネの日なんだと」
「省エネ?」
「そ。だから今夜は暗闇の中で自力で暖まるんだよ」
覆いかぶさった男の顔は陰になってよく見えないが、口元が笑いに歪んだのだけはわかった。
「そうか」
「そうだ」
五右エ門も同じく笑みを浮かべ、宵っ張りで寒がりな恋人の体を引き寄せた。

 
 
■2月1日■
 

 
 
 

   
■頭痛の日■
 
 

もともとあまり仲は良くなかった。
仕事仲間だ。仲良し仲間じゃないから、仕事上の信頼関係があればそれでいいとも思う。
だがやっぱり毎日顔を突き合わせて、下手すりゃ数か月単位で一緒に暮らすこともある。
仲が良けりゃぁ、それにこしたことはない。
信頼や阿吽の呼吸なんかは、嫌い同志の間じゃなかなか望めないし。
まあ、馴れ合いは駄目だけどな。
俺を挟んで対極に位置にいたふたりは、最初はお互いにあんまり興味を持ってなかった。
だけど時間を重ね仕事を重ね、徐々に少しずつ距離を詰めていって、今じゃもう俺を含めて目配せひとつで意思の疎通なんかやっちゃう間柄だ。
俺の目に狂いはなかった。
あいつらは最高の仲間だ、最高の相棒達だ。
だが・・・いくら俺でもこんな事態は予想してなかった。
公私混同はしない。俺の目の前でそんな雰囲気を醸し出すこともない。
たまーに、たまーに、私情混じってない?ってことはあるにはあるが、目を瞑ってやれる範疇だ。
それに、俺は数日留守にするって言っちまったし。
戻ってくるのは明後日だって言っちまってたし。
だからこれは不測の事態ということで、あいつらにはなんの罪はない。
でも俺にだって罪はないんだ。
天才的早業でチャチャチャーとお仕事を早く終わらせちまっただけで。
褒められやすれど責められる理由はない。
んだけど。
「頭痛てぇ」
久々にふたりっきりで気が弛んだのか、盛り上がり過ぎたのか。
ギシギシと軋むベッドの音と荒い息使いと微かな喘ぎが聞こえる扉の前で、俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
仲良すぎるのも問題だろ!!ま、知ってたけどな!!!

 
 
■2月2日■
 

 
 
 

   
■西の日■
 
 

「幸せになりたい」
地面にへたり込み弱弱しい声で呟いたルパンを次元は冷ややかな目で見た。
ルパンの手に握られているのはお約束通り裏切りのアクセサリーをひけらかし去っていった女の置手紙だ。
苦労して手に入れたお宝はひとつも残っていない。
いつものこととはいえ、連続で掠め取られればさすがに怒りは収まらない。
そんな相棒の心境を察知したルパンは落ち込むことによって、自分も被害者であることを強調しようとしているのだ。
「なら西に行けよ」
次元の言葉にルパンが「え?」という表情を浮かべ顔をあげる。
「2月4日は西の日なんだとよ。今日西の方へ向かうと幸運に巡会えるってさ。幸せになれるぜ」
煙草の煙をふうっと吐き出し次元を顎で西の方角をしゃくった。
「そ、そうか、西か」
次元の態度から怒りが収まったと思ったのか、ルパンはヘラリと笑った。
「ああ、西だ。幸せになりたきゃ西へ行け」
「よし!」
ガバリと立ち上がり西を向いたルパンに背を向け次元は歩きだす。
「おい、次元」
「俺は東へ行く。俺の幸せは東にあるからな」
極東の祖国には、前回の仕事で早々にルパンに見切りをつけた男がいる。
修行三昧の日々を過ごしていて、そろそろひと段落ついた頃だろう。
「邪魔すんなよ。つうか、当分お前のツラは見たかねぇ」
肩越しにルパンを睨みつけながらケッと煙草を吹き出す。
東で幸せになった次元が怒りを収めるのを待つしかないかと、ルパンはガクリと肩を落とした。

 
 
■2月4日■
  

 
 
 

   
■海苔の日■
 
 

酔っぱらってた。もの凄く酔っぱらっていた。
買い込んだ酒類を広げ、ツマミやデリを広げて呑みに呑んだ。
日本酒や日本食材をようやく見つけて手に入れた五右エ門もご機嫌だ。
みんな上機嫌で楽しく呑んでいた。
つまらないことに爆笑して盛り上がるだけ盛り上がったところで。
酔いに酔いまくったルパンが「暑い!」と叫んだかと思うと衣服を脱ぎ捨て、裸踊りを始めた。
馬鹿か、んなモン見せるな、なんだそれは踊りじゃなくタコだろ、タコ。
男三人なら無礼講だ。気にする目もなくシモネタにも簡単に走る。
腹を抱えて笑いながら次元は手元にあったもので踊るルパンの股間を前張りした。
粗末なモン見せるんじゃねぇ!
そんなもんで俺様のモノが隠れるか!!
部屋に響き渡るギャハハハという笑い声が突然やむ。
酔いも吹き飛ぶ冷気がルパンと次元の背後から叩きつけられたのだ。
刺すような怒りは侍が発しているものだ。
だがなぜ?
たった今まで共に笑い声をあげていたというのに。
ハッとふたりが視線を落とす。
ルパンの股間を隠していたものの正体は、黒い黒い真っ黒い海苔。
「おぬしら・・・ようやく拙者が手に入れたものを!!」
チャキッと鯉口を切る音と同時に、ルパンと次元は一目散に逃げ出した。

 
 
■2月6日■
 

 
 
 

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