「ふざけんなよ、ルパン、どんだけ苦労したと思ってんだ」
「泥棒の風上にもおけんな」
「だってさぁ」
眉を八の字にしたルパンを相棒ふたりは責め立てる。
怒り2割、残りの8割は呆れだ。
「女にうつつをぬかしてるからだ」
「だらけた顔は見るに耐えん」
「すっげえ美人だったろ?男なら誰だって」
ギロリと二対の眼で睨みつけられて、言葉は尻蕾みになる。
「盗んでこい」
「正直に名乗り出た方が早いのではないか?」
「えー」
ふいと同じ方向に向けられた三対の視線の先にはちいさな交番。
落し物を届けた人の良さそうなおばあさんと机を挟んで書類をつくっている警官がひとり。
奥にはこんな交番に勿体無いほどの屈強な体格をした警官がまたひとり。
「とにかくおめぇの責任だからな、俺は知らねぇ」
「時間があまりないぞ、ルパン」
大事な大事なお宝に繋がるヒントが隠された品。
それをナンパで失敗し美人に張られた弾みで落としちゃいました、なんて泥棒の恥。
挙句に落し物として交番に届けられちゃいました、なんてのはどんなジョークだ。
「メシでも喰いにいくか、五右エ門」
「うむ」
ルパンに背を向けて仲良く去っていく、薄情な相棒達に「ベー」と舌を出し。
「さーて、どうしようかねぇ」
ぽりりとルパンは頭をかいたのだった。
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