■注射とサムライ■

 
 
 
 
 

五右エ門は現代を生きているとは思えないほど、古風な人間である。
古風といえば言葉はいいが、悪く言えば古臭い、箱入り、非常識である。
しかし、それが育ちのせいということは、すぐに見当がついた。
修行と称して山奥に篭らされた狭い世界で、それも古臭い戒律や大人に交じって生きてきたのだ、五右エ門自身のせいではない。
怪我をしたり、熱を出したり、寝込んだり。
そんなときに五右エ門が持ってくるのは、正体不明の軟膏や、どろどろに煎じた薬草、あげくに蚯蚓汁だので、現代医療を受けたことがないのは想像に易い。
だから仕方ないことはわかっているのだが、成人した男が注射を恐れるのはどういうことだと、次元は心の中で突っ込みをいれた。
珍しく高熱を出して寝込んだ五右エ門は初めて見る抗生物質をいやがり、特効薬だという蚯蚓汁を望んだが、誰がそんなものを作るというのだ、とんでもない。
朦朧としながらも薬を飲むことを拒否し、ガンとして口を開かない男への治療は注射となった。
だが注射器を近づけると、得体のしれない得物に見えるのか、少し怯えた目をして体を捩って抵抗した。
暴れる体に注射器を近づけるくらい危険なことはない。
結局、五右エ門をうつ伏せに引っくり返し押さえ込み、尻に打つことにした。
尻に注射を打つなんて幼児くらいなものだ。
普通の大人なら恥ずかしいと思うだろうが、そんな知識がない五右エ門は恥じることはない。
近づいてくる注射器が見えないためか、次元が上半身を押さえつけているためか、抵抗はすっかり弱まっている。
もともと高熱で朦朧としていたのだ、抵抗に次ぐ抵抗で五右エ門の体力はすっかり消耗してしまっている。
ヤルなら今だ。
布団をまくり、夜着の裾をめくり、五右エ門の尻を露にすると、ルパンは伸ばされた五右エ門の足の上に座りこみ、注射器を手に取った。
上半身は次元が。下半身はルパンが。
大の男ふたりに押さえつけられて観念したのか、五右エ門はシーツをギュウウと握り締めた。
五右エ門が履いているのは褌だ。下着をずらす必要はない。
最初から露になっている白く、筋肉質で小振りな尻に、ルパンは戸惑うことなく注射針を突き刺した。
「うっ」
小さい呻きに、次元が顔を覗き込めば、五右エ門は目をギュッと瞑り眉間に皺を寄せ痛みに耐えている。
いつもは白い顔が熱のせいで赤く染まっているためか、その表情はひどく淫靡に見えた。
苦痛と快楽は紙一重、浮かべる表情も似ているものだ。
間近でみる五右エ門の耐える表情に次元は思いっきり煽られた。
ゾクンと背筋を何かが駆け上がる。体温が上昇し血流が良くなりそうな感覚に、次元はパッと顔を背けた。
時間にしてほんの数秒。
「はい、終わり!」
ルパンの明るい声と共にハアと体の力を抜いた五右エ門の動きにつられ、次元はつい顔を元の位置に戻した。
目に入ったのは、抑えつけている自分の腕の中で、目尻に薄く涙を浮かべ小さく吐息をついている五右エ門の姿。
ドクンッ。
大きく鳴ったのは心臓と、信じられないことに下半身の一部。
パッと次元は飛びのいて、五右エ門から離れた。
熱い体から体温が移ったのか、次元自身も熱くて仕方がない。
気のせいだ、気のせいだと自分に言い聞かせ続ける次元は、なんと言って部屋を出たのか覚えていなかった。
 
 
 
 
 

■CYUSYA TO SAMURAI■

 
 
 
■あとがき■

夏に未依さんに送りつけたお見舞いSSです(^^)
入院中の人にナニ送ってんだかという感じですが
お見舞いに行ける距離でもないし、
自分に出来ることなんかこんなことしかないじゃないですかー(笑)
優しい未依さんはちゃんと受け取ってくださいましたヨ。ありがとう♪

テーマは「病気とふんど尻」でしたv

 

 

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