■晴れの七夕■

 
 
 
 
 

毎日毎日続く雨は絶え間ない。
薄曇りになっても太陽を拝めることはなく、すぐにまた雨。
梅雨とはいえ、毎日良く続くものだとある意味感心する。
どこからその水分持ってきたのか聞いてみたい程だ。

昨夜も変わらず雨が降った。
いつも以上の雨脚で、風と雷まで伴った大雨だった。
今朝は幾分落ち着いていたが、やはり雨は降り続けていて、窓の外を眺めていた五右エ門は小さく溜息をついた。
偶然にもその様子を見てしまった次元は、こっそりと苦笑する。

去年の七夕にも雨が降っていた。
五右エ門は今日と同じように溜息をついていた。
別に子供みたいに七夕を楽しみにしているわけではないが、七夕の日は毎年雨で少し残念に思うと五右エ門は言った。
可愛いもんだ、と次元は思う。
痘痕も笑窪、惚れた弱み、なんとでもいえるが、可愛いと思うのだから仕方がない。

だが、何日も降り続いていた雨は午後に近づくにつれ徐々に弱まり、昼を過ぎた頃には完全にやんだ。
いつもならどんよりとした雲に覆われているはずの空はなんの気まぐれか、雨雲は風に吹かれて消え去った。
空は青空、久しぶりに太陽が顔を覗かせ、地上の気温はあっという間に上昇した。
暑い日差しに、雨に浸った地上から水分がいっきに蒸発し、湿気の多い、蒸し暑い午後となった。

エアコンを効かせた室内で快適に過ごした次元は、夕方になってようやく重い腰をあげた。
窓から外を伺っても五右エ門が戻ってくる気配はない。
久々の晴天に嬉々として出かけて行ったから、修行と称してどこかでなんかやっているのだろう。
朝と違って嬉しそうだった五右エ門の表情が忘れられない。
あれは絶対にただ『久々に』晴れたから嬉しいのではない。『七夕に』晴れたから嬉しいのだ。
次元にはそれがよくわかった。
伊達に恋人なんていうポジションにいる訳ではない。
去年の七夕は雨を残念がる五右エ門を、その雨を口実にベッドに引き摺り込んだ。
最終的には五右エ門も愉しんでいが、次元には充分過ぎるほど愉しく充実した夜だった。
だから、今年の七夕は五右エ門に付き合ってやろうと考えたのだ。

玄関をあけると、ムッとした空気が次元を包み込む。
「日本ってのはなんでここまで湿気があるんだ」
額に汗を滲ませながら次元はぼやく。
暑いのは別にいい。だが、湿気はどうもいただけない。
涼しい室内に慣れた身には、陽が沈み幾分かマシになったとはいえ、やぱり蒸し暑い。
「ま、仕方ねぇか。五右エ門が帰って来る前に準備しとかなくちゃなんねぇしな」

五右エ門好みの吟醸酒を用意して、冷やしておくのだ。
風呂からあがりすっきりした五右エ門を誘って、星見酒と洒落込めば、きっと楽しい時間を過ごせるはず。
去年同様ベッドに引き摺り込んでもいいが、ほろ酔い気分で上機嫌な五右エ門を酒の肴に飲んだあと、そのまま一緒にゴロ寝するだけでも楽しそうだ。

次元はクイッと帽子のツバをさげ、緩んだ顔を隠して歩き出した。
行先は愛する五右エ門の愛する日本酒が売られている近所の酒屋だ。
数歩進んだところで、顔をあげ空を見上げる。

雲一つない空は、今夜の美しい星々を完全に保障してくれていた。

 
 
 
 
 

■HARE NO TANABATA■

 
 
 
■あとがき■

6周年御礼SS。
去年の5周年御礼SS(七夕の雨)の1年後のお話です(^^)
 
甘々次元。

今年の七夕は珍しく晴れましたね。
話の中の天候は7日の天気そのままの描写です(笑)
  

 

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