首筋を滑り落ちた汗が鎖骨に溜まる。
一滴二滴と流れ落ち、小さな汗溜りを作っていく。
ゆらっと揺れて端から毀れそうになるものの、反対にゆらっと揺り返しが来てどうにか元の位置に留まった。
そうしているうちにも、汗は流れ落ちてくる。
鎖骨が留められる限界の量に達した瞬間、すべてがひとつの筋を作って胸元へ流れ落ちていった。
「あっ」
ついあがった次元の声に五右エ門が怪訝そうな目を向けた。
「なんだ?」
綺麗に浮き出た鎖骨のうえにはもう何も溜まっていない。
ゆらゆら不安定に揺れる汗溜まりに目を奪われていたが、それがなぜなのか次元自身にもよくわからない。
「いや、なんでもねぇよ」
次元がポイッと放ったタオルを受け取って、五右エ門は自らの体の表面を塗らす汗を拭い取る。
「まだ、続けるのか?」
「無論」
ほんの少しの休憩のあと、五右エ門はふたたび剣を振い始める。
次元といえばさっきまでと同じく、アジトの小さな庭で黙々と修行を続ける男を見つめていた。
|