仲間に加わって、もうそろそろ2年が経とうという男の背中を見送って、ルパンはウーンと唸った。
五右エ門があるひとつの行動をとるようになってから1年近くなる。
最初は気のせいかな、と思った。
次に自分たちに慣れて馴染んで来て我を出すようになったのかな、と思った。
でも我が強いのも我侭なのも最初からだったし、その行動自体になにやら違和感があるのだ。
漠然としない何か。嫌な予感といってもいいもの。
その行動とは。
五右エ門が、次の仕事まで間がないというときでも、数日間姿を眩ますのだ。
それが3日や1日といった、日単位であるときは、元々徒党を組まずマイペースなイメージのある男だったから、四六時中一緒にいるのが息苦しく、一人になる時間が欲しいのだろうと考えていた。
だが、それが一晩という短い時間ともなるとちょっとおかしい。
一晩どころか数時間であることすらある。
そんな短い時間だけひとりっきりになったとして、どんな意味がある?
女と逢引か?とも考えたが、時間も場所も一定ではないし、戻ってきた五右エ門に色っぽい気配はまったく残っていないから、十中八九違うだろう。
それならなんだ?五右エ門の行動にどういう意味がある?
何気ない態度をとっていたがいつもと同じくちょっとした違和感を発しながら、五右エ門はまた外出した。
「どこに行くんだ?たまには俺もついて行っちゃおうかなー」
冗談めかして言ったルパンの言葉に、五右エ門は眉間に皺を寄せた。
チラリと次元を横目で伺ったあと「何を言っておる」と言ってさっさと出て行った。
あの視線の意味はなんなのだろう、とルパンは考える。
五右エ門はある意味正直な男だ。
隠していることに気がついていないときならまだしも、なにかあるという目で観察すれば所々でボロが出る。
五右エ門がいなくなるのは、仕事の合間。
というよりも、四六時中3人で行動したあとだ。
そして残されるのはいつもルパンと次元。どちらか片方ということはない。
つまりこれはどういうことだ?
ついて行くとルパンが言ったとき、一瞬でも次元を気にしたのはなぜだ?
まるで次元に気を使っているかのように。
まるでルパンと次元をふたりっきりにしようとしているかのように。
「え?」
そこまで考えて、ルパンはピキリと固まった。
ふたりきり?俺と次元を?
でも確かにそう考えれば辻褄があう。
五右エ門はふたりっきりの時間を作ってくれようとしているのか?それが数時間という僅かな時間でも?
五右エ門がひとりになりたいのではなく、ふたりに気を使って場を外してくれているということなら、それはどういう意味を持つ?
「ま、まさか・・・」
男同士、相棒同士、仲間同士、そんな括りならそんな気使いはいらない。
もしいるとすればそれは、恋人同士・・・とか?
その結論に辿り着いた途端、今まで「ん?」と思うことがあった、五右エ門のアレヤコレヤの言動がすべて説明ついてしまった。
「ぐわーーー、なんでぇーーー!?!?」
突然の叫びに次元がビクと驚いたのが、目の片隅に映った。
なんで、これと。
この髭面の男とこの女好きを豪語する俺が恋人同士なんていう誤解が生まれるというんだ。
それにふたりきりにして、その間にくんずほぐれつエロエロ・・・じゃなかった色々してると五右エ門は今までずっと思っていたというのか。
いつも斜め上を行く奴だと思っていたけど、まさかこれは予想してなかった。
「ちょっと待ってくれよ、五右エ門ちゃん・・・」
ルパンはかなり大きなダメージを受けた。
ここまで凄いのは久しぶり、というかはじめてかもしれない。
ちょっとやそっとでは立ち直れそうにない。
ガックリと肩を落としたルパンは、この事態をどうしたらよいのかと頭を抱え込んだ。
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